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黄金の檻 〜全てを捧げる最強魔導師の極上愛に溺れて幸せです〜  作者: 雪白めると
【第四部 一幕 檻の中の春、戦火の報せ】
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6_出征前夜の甘い夜


 子どもたちが寝静まった後の主寝室は、しんと静まり返っていました。

 明日には、レインハルト様が過酷な戦場へと旅立ってしまいます。


 わたしは決して泣かずに笑顔でお見送りしようと心に決めていたのですが、薄い寝衣に着替えて彼の広い胸に抱き寄せられると、どうしても鼻の奥がツンとしてしまいました。


「泣き虫な僕の可愛いシャル」


 レインハルト様は優しく微笑むと、わたしの目尻に滲んだ涙を指先でそっと拭い取ってくれます。


「泣いてなどおりませんわ。わたしはあなたの帰還を信じて待つだけですもの。……お待ちしておりますから。……ずっと。……ずっとです」

「ふふっ。そんなに可愛らしい言葉を言ってくれるのなら、たまの出征も悪くはないな」


 強がって顔を伏せるわたしを、彼はひどく愛おしそうにきつく抱きしめました。

 彼の深い愛と魔力の匂いに包まれていると、このまま時間が止まってしまえばいいのにと本気で願ってしまいます。


 ふと視線を床に落とすと、分厚い絨毯の一部が微かに青白い光を放っているのに気がつきました。

よく見れば、それは寝室の床の一部に刻まれた複雑な魔法陣です。


「レインハルト様、あの魔法陣は……?」


 わたしが不思議に思って尋ねると、彼は魔法陣を一瞥してから、わたしの髪に深く口づけました。


「ああ、あれは転移門の魔法陣だよ」

「転移門、ですか」

「僕がいつ帰れるか分からないからね。万が一想定よりも遅くなってしまったら、戦況が落ち着くのを見計らい、前線から術式を繋いで最短でこの部屋へ帰還するためのものさ」


 彼はまるで仕事の合間に少し寄り道をして帰るような、ごく自然な口調でそう言いました。

 長距離の空間転移は途方もない魔力を消費するため、王国最強の魔導師である彼にしか到底成し得ない業です。

 それに、彼にとって法や常識よりも、わたしのもとへ早く帰ることの方がずっと重要なのだと分かりました。


「だから、どうか安心しておくれ」

「……はい。お待ちしておりますわ」


 彼の言葉に安堵したわたしは、自ら彼の首に腕を回し、その薄い唇にそっと口づけました。

 途端に、彼を取り巻く空気が甘く、そして酷く官能的なものへと変わっていく。


「シャル……僕の愛しいシャルロット」


 甘く掠れた声で囁きながら、彼はわたしの寝衣の胸元に手をかけました。

 素肌が外気に触れて微かに震えると、すぐに彼の熱い唇と舌が這い、震えを甘い熱へと変えていきます。


「あっ……レインハルト様……っ」


 彼が注ぎ込んでくれた精気と魔力によって作り変えられたこの身体は、彼に触れられるだけで思考が溶け、快楽の波に呑み込まれてしまいそうになります。

 彼は真珠のように発光するわたしの肌を隅々まで愛おしむように撫で回し、やがてその大きな手が下腹部へと滑り落ちました。


 そこに刻まれているのは、淡く光る避妊の魔術紋です。

 それは、三女のイリスを出産した後、主治医のシュルツ先生に『母体の安全のため、最低でも二、三年の間隔を空けるように』と厳しく釘を刺され、彼がしぶしぶ施したものでした。

 彼の指先が、魔術紋の形をなぞるようにゆっくりと動きます。


「もう少しで解除しようと思っていたのだけど」


 ふいに、彼がひどく名残惜しそうにひとりごちました。

 その黄金の瞳には、わたしに対する底知れぬ独占欲と、新たな子どもを望む暗い情念が渦巻いています。


「あなた……」

「帰ってきたら、すぐにこれを消してしまおう。そして、また僕と君の可愛い子どもをつくろうね」


 甘い毒のような囁きと共に、彼の手がわたしの髪を絡めとり、耳下にキスを落とします。

 明日からの長くて寂しい不在を埋めるように、彼はいつにも増して執拗に、そして深くわたしを求めていました。


 逃げ場のない執着という愛に絡め取られながら、わたしは抗うことなど忘れて、ただ愛しい夫の腕の中で甘く退廃的な喜悦に身を委ねるのでした。





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冷淡ヒーローの“我慢”が限界に近づいていく、 すれ違いから始まる異世界執着愛。
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