レベル7魔界森林
照りつける太陽の砂漠を抜け、私とリリーメルはうっそうとした木々が生い茂る『魔界森林』へと足を踏み入れていた。
「シールド! アキニャンニャンちゃん、右の茂みから来るわ!」
「おおっ! はぁっ!!」
リリーメルの的確なサポート魔法を受けながら、私は飛びかかってくる凶暴なウルフの魔物を斬り捨てた。
しかし、森林エリアは敵が強いだけでなく、地面には木の根が這い回り、茨が群生するという最悪の足場だった。
「ふぅ……倒したけど、最悪だ……」
激しい戦闘と悪路のせいで、私の履いていたズボンは見るも無惨な姿になっていた。
裾は木の枝に引っかかって千切れ、膝はすりむけてボロボロ。中途半端に布がまとわりついて、絶望的に動きづらい。
「こんなボロ布引っ掛けてたら、次の戦闘で足がもつれて命取りになるな。ええい、邪魔くさい!」
私はズボンのボタンを外し、その場でバサッと脱ぎ捨てた。
上半身は少し大きめのチュニックシャツ。そして下半身は……当然、下着一丁である。少し長めのシャツの裾から、先日リリーメルに見立てられた布面積の少ない可愛い下着がチラチラと自己主張している状態になった。
「よし、これで身軽になった! 風通しもいいし最高だな! さあリリー、このまま一気に奥に進もうぜ!」
大剣を肩に担ぎ、まるで歴戦の戦士のようにズンズンと歩き出そうとした私の背中に――
「スットォォォォォォップ!!!!」
魔界の木々を揺らすほどの、リリーメルの悲鳴のような怒号が響き渡った。
振り返ると、顔を真っ赤にしてワナワナと震えるリリーメルが立っていた。
「あ、あなたねぇ……っ! いくらなんでも、その下半身パンツ丸出しの『彼シャツ』みたいな状態で、魔界を練り歩くつもり!?」
「パンツって言うな! これはあれだ、機動力を極限まで高めるための軽装アーマーだ! ほら、男の戦士だって、よく腰布一丁の蛮族スタイルで戦ってるだろ!?」
「あなたは女の子でしょうが!!」
リリーメルは私の肩をガシッと掴み、ガックンガックンと激しく揺さぶった。
「いい!? 女の子の防御力ゼロと、脳筋男の防御力ゼロは意味が違うの! そんな生足を出してたら、木の枝や毒虫で足が傷だらけになるでしょ! それに……モンスター相手だろうと、そんな無防備な姿を晒すなんてハレンチすぎます!」
「ハ、ハレンチって……相手は魔物だぞ? ゴブリンにパンツ見られたところで、別に減るもんじゃ……」
「私の精神(MP)がゴリゴリ減ってるのよ!! 大好きなアキラが見たら泣くわよ!!」
(いや、そのアキラ本人がやってるんだけどな……!)
と喉まで出かかったが、それを言えば『光り輝くマッチョな魂』が口から飛び出して大惨事になるため、ぐっと飲み込むしかない。
「もう! 動きやすいのがいいなら、せめてこれを履きなさい!」
リリーメルが魔法のポーチから引っ張り出してきたのは、ピタッとした黒い『レギンス』と、それを隠すための『ショートパンツ』だった。
「ほら、これなら伸縮性抜群で足も動かしやすいし、露出も防げるでしょ! いい? 下着が見えないように工夫する『重ね着』は、女の子のおしゃれと身嗜みの基本の『キ』よ! さあ、今すぐそこで履く!」
「う、うす……」
結局、私はうっそうとした魔界の森の中で、賢者様に説教されながら見慣れないレギンスを引っ張り上げるハメになった。
「(くっ……下半身がピチピチして絶妙に落ち着かない……! でも確かに、これなら茨に引っかかっても痛くないな……)」
下着の付け方から始まり、生理の乗り越え方、メイクの基礎、そしてレイヤード(重ね着)の概念まで。
魔界の奥地へ進むにつれ、最強の勇者はどんどん「正しい女の子の冒険者」へと強制的にレベルアップさせられていくのだった。




