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レベル6魔界オアシス

挿絵(By みてみん)

照りつける魔界砂漠の太陽の下、汗と砂埃にまみれながらも、アキニャンニャンは迫り来るサンドワームを叩き斬っていた。


「ふぅ……! さすがに砂漠での戦闘は体力がゴリゴリ削られるな……」

「アキニャンニャンちゃん、見て! あそこにオアシスがあるわ!」


リリーメルが指差した先には、枯れた大地には似つかわしくない、透き通った泉と青々とした木々のオアシスが広がっていた。


「助かった……! 砂埃で全身ベタベタだし、少し休憩して水浴びしようぜ!」

「そうね。魔物が来ないか見張りながら、交代で入りましょうか。アキニャンニャンちゃん、先に入っていいわよ」

「よっしゃ! 行ってくる!」


私は装備を乱暴に脱ぎ捨てると、一直線に冷たい泉へと飛び込んだ。


(くぅ〜っ! ヒンヤリして最高に気持ちいい! 男だった頃は、討伐の後はこうやって水浴びで汗を流すのが最高だったんだよな!)

「ザバーッ! ゴシゴシゴシ! プハァッ! よしっ、終わった!」


私は頭から豪快に水をかぶり、顔と脇を適当に擦って、ものの30秒で岸へ上がった。


「おーいリリー! 終わったぞ! 次、どうぞ!」

「……え?」


見張り台の岩場にいたリリーメルが、信じられないものを見るような顔でフリーズした。


「……早すぎない!? カラスの行水以下よ!?」

「え? だって汗流したし、スッキリしたぞ?」

「バカ言わないで! 髪はキシキシに絡まってるし、背中にまだ砂がついてるじゃない! ちょっと待ちなさい、もう見てられないわ!」


怒り心頭のリリーメルは、ズンズンとこちらへ歩いてくると、なんとその場で自分のローブを脱ぎ始めた。


「えっ!? ちょっ、リリー!? なんで脱いで……」

「一緒に戻りなさい! 私が洗い方を一から教えてあげるから!」


(なっ……!?)


本来なら、ここで『謎の光』や『都合の良い湯けむり』が発動してすべてを隠蔽してくれるはずなのだが――残念ながらここは無法地帯・魔界。そんなお行儀の良い自主規制システムは一切導入されていなかった。


愛しの彼女のパーフェクトな素肌が、魔界の淀んだ太陽の下で容赦なく私の視界に飛び込んでくる。


(ヤバいヤバいヤバい!! 男のすべてを譲ったとはいえ、元・男としての理性が死に絶えたわけじゃないんだぞ!?)


顔から火が出るほどパニックになる私をよそに、リリーメルは私の腕を引っ張って強引に泉の浅瀬に座らせた。


「いい!? 髪っていうのはね、ただ濡らすだけじゃダメなの! まずはしっかり水で予洗いをしてから、シャンプーをしっかり泡立てて、指の腹で『頭皮』をマッサージするように洗うの!」

「ひゃんっ!? あ、ちょ、くすぐった……!」

「声が変よ! ほら、次はトリートメント! 根本にはつけず、毛先を中心にしっかり揉み込んで、数分放置! その間に身体を洗うわよ!」


リリーメルは魔法のポーチから『もこもこ泡立てネット』を取り出すと、尋常ではない速度でホイップクリームのような濃密な泡を作り出した。


「男の人みたいに、ゴシゴシ手で擦ったら肌が傷むでしょ! 身体は『泡』で撫でるように優しく洗うの! ほら、腕を上げて!」

「あ、あの、リリーさん……背中とかはありがたいけど、その、前の方は自分で……」

「ダメ! さっき適当に済ませてたでしょ! 特に胸の下や首筋とかは、汗や砂が溜まりやすいんだから、もっと丁寧に……って、ちょっとアキニャンニャンちゃん、なんで顔が真っ赤なの? ここ冷たい泉なのに……まさか砂漠の熱で日射病!?」


(日射病じゃねえよ! 自分が女の身体になってるってのに、大好きな彼女に全身を隅々まで泡まみれで洗われてるんだぞ!? 熱くもなるわ! これ以上ない究極の拷問だよ!!)


「そ、そこはマジで自分で洗うから! 洗い方わかったから! 頼むからやめてぇぇぇ!!」


「暴れないの! ほら、耳の後ろも! 足の指の間も!」


強敵ひしめく魔界のオアシスに、謎の光に守られることもなく、元最強勇者の情けない悲鳴が響き渡った。

魔王討伐への道は険しい。だが、女の子としての「水浴びの作法(と理性の維持)」は、それ以上に過酷な試練だった。


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