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第337話 【帝都フリムでの朝】




「…」


 ハクアがベッドの上で目を覚ますと、目の前には咲楽の寝顔がありました。


(まさか話の途中で寝てしまうなんて…)


 体を起こしてからハクアは己の不覚に頭を抱えます。

 昨日の仕事をすっぽかした件についても負い目を感じていたのに、咲楽と再会してから気が緩んで気持ちが制御できないのです。どうしても懐かしくも心地よい気分に抗うことが出来ません。


「サクラ」


「…」


 声をかけても咲楽はまだ起きません。

 まだ薄暗い時間なので無理もないでしょう。


「サクラー」


「…」


 耳元で囁いても頬をつねっても起きません。このまま目を覚ますまで眺めているのも一興ですが、皇帝がゆっくりできる時間は限られています。


(今のうちに執務室に戻って仕事を片付けよう。最短で終わらせれば、サクラに会える時間を作れる)


 もはや帝都を立て直す目標はおまけ。

 大切なのは一秒でも長く仲間たちとの時間を作ることです。


「…いってくる」


 そう呟いてハクアは熟睡している咲楽の頬を手で撫でます。





 貴族街のホワイトロス邸で一夜を明かした咲楽と仲間たち。


 今回は屋敷にメイドや使用人が一人もいないので、何もかも自分たちでやらなければなりません。といっても異世界生活の長い咲楽たちには決まった習慣が身についています。

 環境が変わっても朝のルーティンは変わりません。


「朝ごはんができましたよ~」


「運んじゃいますね~」


 食事担当の咲楽とアクリは仲間たちに料理を振舞います。本日の朝食の献立はパンと牛挽肉を使ったオムレツにコンソメスープとサラダです。


「さて、今日は何をするか」

「僕は部屋でゆっくりしたい」

「もぐもぐ」


 ナキ、キユハ、ルルメメは普段通りまったり朝食を味わいます。


「ハクアは砦に戻ったようだな」


 食卓にはオーガルも加わっていました。


「オーガルさんはこの後どうします?」


「我もひとまず砦に戻るつもりだ。少しはハクアの仕事を減らして、自由にできる時間を増やしてやらねば」


「良いお父さんですね」


「ふっ」


 皇帝の引き継ぎが終わっても、親子の関係はずっと続いているのでしょう。二人の関係は咲楽や仲間たちとはまた違ったものに見えます。


「ふぁ~」


 すると葵は眠そうな欠伸をしていました。


「葵ちゃん、夜更かしでもしたんですか?」


「実は寝てないんだぁ…ごはん食べたら仮眠させてもらうよ」


「もしかして前に頼んだ国おこし企画で徹夜を?」


「まあね」


「そんなに根詰めなくても…」


「いや~昨日は話が盛り上がっちゃってね」


「?」


 因みに咲楽はアネモネがこちらに訪問して来たことを知りません。


「そうだ、寝ている間に咲楽ちゃんも目を通しておいてよ」


 そう言って葵は二冊のノートを咲楽に渡します。


「例の国おこし企画ですね?」


「ん」


「わぁ、内容がびっしり!」


 一般的な学生用のノートですが、二冊とも隙間なく文字で埋め尽くされています。全てに目を通すだけでも半日は掛かるでしょう。


(お姫さまが協力してくれたおかげで、夢のような計画が現実味を帯びてきた。後はいい感じにアネモネ姫を活躍させてあげればいいんだけど)


 葵はノートの他にも企んでいることがあるようです。


「それより咲楽ちゃん、昨夜は王子様とお楽しみでしたねぇ」


「ええ、気付いたら寝落ちしてましたよ~」


「まぁ…いつも通りで安心したよ」


 お気楽な咲楽の様子を見て、葵は呆れたように苦笑いを浮かべるのでした。

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