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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉


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第8話 イエス以外言えねえ……


 勝訴!


 と、言っていいかは分からんが、少なくともすぐに願いを無理やりでもいいから叶えろと言われはしないようだ。


「ひとまずはデメリットが何かを探る方向で行く事になった。だから108番は出来る限り人に会って、願いを叶えられそうなら叶えてもらう事になる」


 しかし何もしなくていいわけではなく、こんなふざけた事を言われたが。


「オレは人の願いを叶えるのは嫌いだが?」

「そうか。願いを叶えられる人物のサンプルが集まらないなら、リスク覚悟で使(・)う(・)しかないか」

「やらないとは言ってない」


 卑怯じゃね?

 そんな風に言われたらイエス以外言えねえじゃねえか。


 というわけでここ数日、施設内から老若男女実験体問わず、オレの部屋に訪れている。

 様々な人間と接触し、願いを叶えられる人物はいないか確認させられているのだ。


「「「……ちっ」」」


 むろんその中には過去、オレをイジメていた少女達もいた。

 まあイジメられていたと言っても、無視されたり物を隠されたり、せいぜい食事を奪われたりしたくらいなもので、そこまで酷いものでもなかったが。

 ……いや、食事を奪われたのはきつかったか。


「なんであんたはこんないい部屋で……」

「ホント生意気」

「あり得ないし」


 そばでオレの護衛兼監視をしている職員に聞かれない程度の小声でぶつくさ言うだけで、手出しはしてこないので問題はなかった。

 そんな少女達に対して、オレは彼女達が部屋を入ってから出て行くまでの間、仕返しをしようとは意外にも思わなかった。


 前世の記憶があり、成人男性として働いていたからか、その程度のイジメなど可愛いものだと思ったのだ。

 それに加え、精神が成人男性である身としては、中学生くらいの女の子達に仕返しをするというのはあまりにもみっともない。

 子供相手に本気になれないし、今いい暮らしをしているところを見せびらかして多少溜飲が下がったから、今後関わってこないならもうどうでもいいのだ。


 ……そう言えばあの頃、食事を奪われた際にたまに自分の食事を少しだけ分けてくれた女の子がいたな。

 あの子は今どうしてるだろうか?


 少し気になったが、こうして願いを叶えるために動いてればその内出会えるだろう。


「……うえっ」

「どうした?」

「何でもない」


 護衛が無機質な目で見てきたが、気にすんなとオレは返事をした際に軽く手を振った。


 やっぱり他人の願いを叶えるとか考えただけでも気分が悪くなっちまうが、己の身を守るためには仕方がない。

 せめてサンプルに1人は正当な方法で願いを叶えた人物がいないと、あっという間に壊されるまで使われることになってしまうのだから。


 もっとも[願望成就]の他人のデメリットを全てクリアできる人間がいるとは思えず、そんな奇特な人間がいたら奇跡という他ないのだが。

 ただの時間稼ぎにしかならないのかもしれないが、それをわざわざここの職員に伝えたりはしない。


 それがバレたらせっかく時間を稼いだにもかかわらず、すぐに代償覚悟で能力を使わされることになってしまうだろう。

 こうなったら少しでもいいから今の贅沢な暮らしを堪能してやる! うぅっ、泣きてえ!!


 読心系の異能者に考えを読まれる時が厄介だが、能力を使うのに直接触れなければいけないので、その時はデメリットの事を考え続ければ思考が読まれることはないから問題はない。こういう時は〝自身の制約2〟の【エーテルギフトで[願望成就]への干渉ができない】が役に立つな。


「それじゃあ例(・)の子供達のところに案内してくれ」

「分かった」


 数日前から一緒にいるこの護衛は、無駄なことは言わず淡々と自分の役目をこなすタイプの人間だな。

 こちらとしても無駄に仲良くなる気はないので、この程度の距離感で接してくれるのはありがたいが。


 早速オレは案内役を兼任する護衛に付き従いながら、道中で出会う職員と軽く話をしながら移動した。

 職員は[願望成就]を手に入れてすぐに願いを叶えられるかの確認のため、ほとんどの者と顔合わせしているが、もしかしたら条件が揃うようになって願いが叶えられる状態になってるかもしれないと言って、無駄に時間を使いながら移動している。

 むろん時間稼ぎですが何か?


 こうでもしないと、この研究所にいる人間全員との顔合わせがすぐに終わっちまうんだよ。


 いくら何百人といるとはいえ、一週間近くもこんなことをしていたら、もう残りは例の子供達しか顔を合わせていない者がいないのだから仕方ない。


 今回顔を合わせる例の子供達というのは移動が難しい子供達だ。

 会うだけならオレに出歩かせずとも、いじめっ子達のようにオレのいる部屋に子供達を連れて来させれば済むだけの話なので、当然と言えば当然だな。


 ちなみに自由に施設内を歩いて、願いを叶える人を探すという案は却下された。

 重要人物だし、そもそも実験体に施設内を気軽に歩かせられるわけがないと言われたら、そりゃそうだとしか言えないわ。


「着いたぞ。ここが実験によって行動させるのが困難になった、子供達の収容区画だ」


 実験によって悲惨な末路を辿った子供達がいる場所。

 まだ使えるかもしれないと考え生かされている、この研究所の闇が形になったものと言ってもいい存在達が収容されていた。


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