第45話 マジギレ
≪ナズナSIDE≫
※斗亜がさらわれた直後のこと。
「斗亜様!?」
「斗亜ちゃん!?」
本来の名前で呼ばない決まりでしたが、私も柚乃もそんな事が頭から抜け落ちるほどの出来事。
斗亜様が突然この場から姿を消してしまいました。
いえ、一瞬見えた何者かの姿。
どう考えてもさらわれたとしか思えない状況です。
「くっ、急いで探し出さないと……!」
「だけどどこに行ったの!?」
焦る私達でしたがそこに追い打ちをかける事態が起きます。
「「「はっ!」」」
先ほどの破落戸達と似たような恰好をした集団が私達を襲ってきました。
しかし身体能力も能力で向上しているのか、その動きは破落戸達とは比べ物にもなりませんね。ですが――
「「邪魔」」
[百人一色]を人前で使わないなどの枷を取っ払っている私達の敵ではありません。
ええ、当然です。
私達の最優先事項は斗亜様の身。
正体がバレるなど些事でしかないのですから。
十数人の襲撃者が私達に攻撃を仕掛けてきましたが、[百人一色]で数の利はこちらにあり、身体能力も主の危機である以上、[忠誠証明]が最大限の効力を発揮しているのか、今まで以上の力を振るえている実感があります。
ただそんな事はどうでもいいです。
「手加減してもらえると思うなーーー!!」
柚乃も私と同じ気持ちなのか、大量の血を操って襲撃者を津波のように血で飲み込み、地面に押しつぶしていました。
その結果襲撃者の手足は変な方向に曲がり、息をしているかも怪しいですがどうでもいいですね。
「これで終わり! 斗亜ちゃんはどこ!?」
最後の一人も容赦なく叩き潰し、無事な襲撃者は一人もいなくなりました。
さて――
「斗亜様をどこに連れて行ったんですか?」
「ぎゃあっ!?」
尋問の時間です。
手足の骨は折れていても意識のある人間を適当に選んで、折れてる箇所の足を踏みつけます。
「斗亜様はどこですか?」
「し、知らねえ……!」
――グリッ
「ひぎっ!?」
「嘘はよくないですね」
「ほ、本当だ! 本当に知らねえんだ! てめえらの仲間をさらった奴と俺達とでは部署が違う!
互いの拠点や素性はおろか、部署ごとの規模すら知らねえんだ」
「ちっ」
「ぐほっ!?」
ついイラついて腹を蹴り飛ばしてしまいました。
どうやらこいつらは使い捨ての部隊のようですね。
先程の破落戸と似た格好をしているのも、そいつらに斗亜様を攫った罪を被せるためでしょうか。
こいつらを尋問したところで時間の無駄でしょう。
「今の話は本当なの?」
「うっ……あ、ほ、本当だ……」
柚乃が私が尋問していた襲撃者とは別の者の顔を掴んで、無理やり目を合わせるようにして聞き出していました。
その襲撃者はどこか虚ろな目になって答えていますね。
「ナズナちゃん、どうやら本当みたい」
「今何をしたんですか?」
「[吸血鬼化]の能力で催眠状態にして聞き出したの」
「そんな事も出来たんですね」
万能すぎません?
その分デメリットが酷いとは思いますが。
「催眠状態にするって言っても、無抵抗の相手に軽い催眠をかけるくらいしかできないよ」
「では他の[吸血鬼化]の能力で斗亜様を探せませんか?」
「無数のコウモリになって周囲を索敵するくらいしかできないかな」
「十分です。こうなったら人海戦術で手当たり次第に探しましょう。私と分身達に1匹ずつつけてください。お互い、見つけたら知らせられるように」
「うん、分かったよ」
「他にも打てる手は打っておきますか」
そうして私達は公園を中心にビルの屋上や地上、柚乃に至っては隙間から建物内に入ってくまなく捜索。
その結果、割と近くの屋上にいた斗亜様を発見しました。
◆
≪斗亜SIDE≫
屋上のフェンスの上にナズナが立っていた。
「おい、そこを動くな! こいつがどうなっても――」
「死ね」
いつも丁寧な口調で喋るナズナがただ一言。
感情も何も込められていないその発言は、逆に恐怖を感じさせるほど冷たかった。
マジギレしてるじゃん……。
屋上の四方からナズナの分身が次々と現れ、A5が戦闘に適したエーテルギフトを持っていると言っていた人達と戦い始めた。
風の刃を放つ者、身体を異常なまでに硬化させる者、複数の武器を器用に同時に操る者など、様々な者達がいて、A5の言っていた通り戦闘する上で役に立つ能力を持っている者達ばかりだった。
「ぐあっ!?」
「がっ……! お、俺の防御力を貫通された?!」
「む、向こうの数が多すぎる!?」
だけどナズナに一方的に殴り倒されていた。
明らかに戦闘力が違う。
[忠誠証明]のバフが強すぎて、まるで相手になってないな。
「お、おい! こっちには人質がいるんだぞ! それ以上暴れるならこいつがどうなってもいいのか!」
「斗亜様に危害を加えられる前にあなたをぶちのめせば済む話です」
わぁ……。フィジカルで全て解決しようとするとか脳筋すぎる……。
でも今回はそれでいい。
どうせこいつはオレを多少傷つけることはできても、殺すことはおろか必要以上に傷つけることはできないのだから。
指の一本すらオレの能力の代償に使えるのだから、オレの能力を知っていることは間違いない雇い主なら、欠損させずに連れてくるように指示するはずだろう。
「ナズナ。オレの事は気にせず、こいつらを倒せ」
「かしこまりました」
「くそっ!」
ナズナは[忠誠証明]のデメリットでオレの命令には逆らえない。
A5が何を言おうともナズナは止まることはない。
これで助かるか?
「あと5秒だ!」
「「「わ、分かった!」」」
っ!?
マズイ。[転移無法]のインターバルが解ける!
「よし、間に合った!」
A5はそう叫ぶと、A5の近くにいた数人と共に転移していた。
「逃がすわけないでしょ?」




