第39話 警告
――ピンポンパンポーン
『笹崎斗亜さん、山本ナズナさんは至急、学園長室まで来てください。繰り返します。笹崎斗亜さん、山本ナズナさんは至急、学園長室まで来てください』
なんか急に呼び出されたな。
「一体何なんだ?」
「分かりませんが行ってみるしかないでしょう」
突然の呼び出しにオレ達は首を傾げるも、無視するわけにはいかないので学園長室へと移動した。
――コンコンコン
「どうぞ」
「失礼します」
学園長室のドアをノックすると、中から入室の許可が出たのでドアを開けて入ると、そこには黒瀬学園長と秘書の氷室がいた。
学園長室に呼ばれたのだから、当然この2人か。しかし何の用なんだろうか?
「で、なんで呼んだんだ?」
「入室時の礼儀正しさはどこにいったんだい?」
「あんな強引な捕まえ方してきたやつにそこまで礼儀を払う気にはなれん」
「まるで反抗期の娘を持ったような気分だよ」
「そう言いながらニコニコと笑うのは止めてくれないか」
なんか気持ち悪いし。
「申し訳ありません。学園長は基本的に子供が好きなので、どんな態度をとられても怒ることはほとんどありません」
「30代のおっさんが子供好きって、世間の目が厳しいことになりそうだな」
「世知辛い世の中だよね。私はただ純粋に子供が好きなだけなんだけどな。あと、私はもう55歳だよ」
「「は?」」
嘘だろ?
そんな30代にしか見えない見た目ですでに50超えてるとか、そんなのもう年齢詐称と言っていいレベルだろ。
「まあ私の年齢については別にいいでしょ。それよりも君達を呼んだ理由だけど……、心当たりがあるんじゃないかな?」
そう言われると心当たりしかないとしか言えない。
・夜の徘徊
・夏休みの時の発光現象
・柚乃を匿っている
……どれのこと言ってんのかねえ?
しかしここで自ら打ち明けて墓穴を掘る必要もない。
もし心あたりを口にして、黒瀬学園長がそれを把握していなかったら、そんなのただの自首にしかならないのだから。
「さあ?」
だからオレはふてぶてしくそう返答した。
「そんなにも堂々としらを切られるとこちらとしても苦笑いしかでないね。
じゃあ単刀直入に言うけど、斗亜君は願いを叶えるというエーテルギフト、[願望成就]を持っているね」
「「「っ!?」」」
黒瀬学園長がそれを口にした瞬間、ナズナと影に潜んでいる柚乃が動こうと――
「ああ、待ってほしい。別に危害を加えたり、利用したりするつもりで呼び出したわけではないから」
したが、黒瀬学園長があまりにも毒気の無い笑みを浮かべるだけだったので、2人は一旦動くのを止めたようだ。
「利用するつもりがないならなんで呼び出したんだよ……」
「なに、ただの警告だよ。君達は定期的に夜に出歩いているだろ?」
「……まあな」
尋ねるように聞いてきたが、明らかに向こうは確信をもって言っている以上、とぼけても無駄だろうから、ここは肯定しておく。
「別にその行動を止めるように諫める気はないよ? 君には必要なことだろうし」
「そうか」
どうやら黒瀬学園長はオレの[願望成就]による衝動だと感づいているようだな。
こっちとしては、〝自身の禁約1〟である【自身の禁約と契約以外の[願望成就]のデメリットの内容を人に伝えてはならない】せいで説明できなかったから、察してくれるのはありがたいところだ。
「ただ、その際もっと周囲を警戒した方がいいと伝えておきたかったから、今日君達を呼んだんだ」
「警戒?」
「そうだよ。そもそも君達は脇が甘すぎる。
あの研究所で斗亜君の[願望成就]について知っている人間は大勢いたはずなのに、なんの対処もしていないから、研究所にいた保護された子供達経由で下手すればそこら中に噂が広まっててもおかしくなかったんだよ?」
確かにそうだが、皆殺しにするわけにもいかなかったし、口止めする暇もなかったからどうしようもなかったんだよな。
「ですが安心してください。私のエーテルギフト、[契約遵守]で保護した子供達や研究員は[願望成就]について話せなくしていますから、願いを叶えるエーテルギフトがあるという噂はそこから流れることはないでしょう」
秘書の氷室がなんでもないことのように、淡々と対処したと話してくれた。
マジか。そんな事をしてくれてたなんて知らなかった。
「うん、だからそっちに関しては問題ないんだけど、問題があるとすればあの研究所と繋がりのある者達だ。
特に資金提供していた人間であれば、君の事は喉から手が出るほど欲しいだろうから、いずれ刺客を出してくるかもしれない。
この学園にいる間はそんな輩を入らせる事はないけど、ここから離れられたら守ってあげることはできないから、外に出る時は周辺の警戒を怠らないようにしてね」
「ああ、分かった」
「うん。それじゃあ話は以上だよ」
「……え、それだけのために呼んだのか?」
ただ警告するためだけに?
「そうだよ。だって君達は私の学園の生徒だからね。自分の学園の生徒のために動くのは当然のことだろ?」
「……そうか」
これが本心からなのか、いい人を装っていずれ利用する気なのかは知らないが、少なくとも今はこちらに危害を加える気は本当にないようだからいいか。
「警告はありがたく受け取っておく」
「うん。これからはもっと気をつけて行動してね」
黒瀬学園長の話はこれで終わりだったので、オレ達は学園長室をあとにした。




