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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉
1章

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第30話 陰陽師


「大丈夫ですか斗亜様?」

「ナズナがすぐに抑え込んでくれたから問題ない」


 襲いかかってきた少女をあっさりとナズナの分身が抑え込んでくれたので、オレは傷一つ負っていない。


「それにしても、なんでこいつ急に襲ってきたんだ?」

「斗亜様に対して不敬ですね。や(・)りますか?」

「やらんでいい」


 イントネーションがどう聞いても「殺」だったが気にしない。


「ち……」

「ん?」


 地面に押し倒されている少女が何か呟いたな。なんだ?


「血が……」

「はい?」


 意味が分からず、何を言いたいのか聞き返そうとしたその時だった。


「全員その場から動くんじゃないし」


 路地裏の入口からどこか聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あーしは異能犯罪対策課だし。あんた達は昨今噂されてる〝路地裏の女〟の疑いがあるんだわ。ちょい話を聞かせてもらうから」


 振り向くと指でお札のようなものを挟んでこちらに向けてくる人物がいた。

 クラスメイトの優木りこだった。


 これは意外だな。

 まさかギフターから街を守るための治安組織である異能犯罪対策課に彼女が入っているとは。


「ああ、ダメ……。血が、血が……」


 うーん、あっちを気にしていたら今度はこっちか。

 急に情報量が多くて困るな。


「(とりあえず逃げるか。ついでにその少女から話を聞きたいし連れて来て)」

「(かしこまりました)」


 すぐさまナズナはオレを抱えて地面を蹴ると、ビルの屋上へと飛び乗った。

 分身も数体で路地裏少女を抑え込みながら、同様について来た。


「あっ、待つし! 急急如律令!」


 下から聞こえてきたのは彼女のエーテルギフトの発動トリガー。


「逃がさないんだから!」


 式神を顕現するための呪文だった。


 ◆


 とある日の体育の授業。

 その日の授業は自身のエーテルギフトをメインに、〝ワービースト〟や暴漢と対峙した時に動けるように訓練するものだった。

 もちろんオレのように戦闘に向かないエーテルギフト持ちもいるので、そういう者達は警棒などの道具を使って自衛する訓練になったが。


 そういった内容の授業は学園に来て初めてだったため、色々なエーテルギフトを使う人達にも当然驚いたが、その時近くにいた優木には本当に驚かされたのだ。


「急急如律令!」


 優木が紙を手に持ってそう唱えると、軽トラ並みのサイズの鳥がボンッと現れたのだ。


「え、なんだそれ? 一体何のエーテル――いや、悪い」


 あまりにも驚いてエーテルギフトについて尋ねそうになったので、すぐに訂正して謝った。


 本来人のエーテルギフトやデメリットは尋ねないのがマナーだというのに、それを忘れるくらいの衝撃だったんだよ。

 ただ、当の本人はまるで気にしてなかったが。


「ん? あ~別にいいしー。あーしのエーテルギフトは[陰陽術・式神]つって、事前準備すればこうして一言呪文を唱えるだけで、式神を呼び出して操れちゃうんだわ」

「え、すご」


 まるで漫画やアニメみたいだな。


「いやいや! あーしなんか全然だし。[陰陽術]のギフターはそこそこいるけど、あーしは式神を出すしか出来ないし」

「ん? その言い方だと同じエーテルギフトを持つ人が何人もいることにならないか?」

「そうだよ? エーテルギフトの中でも[陰陽術]や[魔法]は次代に引き継げるから、そこそこ数がいるんだわ」

「え、マジで」


 じゃあ学園長が色々やってきたアレも[陰陽術]や[魔法]だったのかもしれないな。

 一々技名を宣言してたし、技名の前には呪文なのか「コールエフェクト」と口上が必ずあったから、それっぽいかも。呪文にしては無茶苦茶簡素だから違うかもしれんが。


「まあ、頭の固いジジイ共はエーテルギフトの一つだって認めなくて、平安時代から代々受け継がれたウチら独自のものだ、って言い出すんだけど」

「エーテルギフトって100年くらい前に現れたって話じゃなかった?」

「ずっと昔からあって秘匿してたみたいだけど、そのくらいから〝ワービースト〟やギフターが急増して隠しきれなくなったっぽい?」


 ◆


 後ろから追いかけてくる優木を見ながら、ふとあの時の事を思い出した。


「[陰陽術・式神]とはまた面倒なエーテルギフトだな」

「あんな大きな鳥を一言で呼び出せますからね」


 鳥の背に乗って真っ直ぐこっちに向かって来る優木に対し、オレ達は屋上を飛び移りながら逃げていた。

 時には再び路地裏に降りて姿を隠すも、どうやってるのか分からないが的確にこちらを認識して追ってくる。


 式神を召喚するだけと言っていたから、あの鳥の能力かそれとも……。


「逃げるんじゃないし!」

「しつこいですね」


 中々逃げきれそうにないな。

 思ったよりも厄介な相手だと思いながら、ふと先ほどのナズナの分身に連れて来られてる路地裏の少女と目が合った。


 ボソボソと何か呟いてる少女の黒かった目の虹彩が、月明りしかないにも関わらずハッキリ分かるほど紅く染まりだしたのが分かった。


「血が、欲しいの……。〔血をちょうだい〕!」


 ――カァッ


 へ? [願望成就]が反応した!?


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