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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉


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第2話 人の心とかないんか?


 実験によって強制的にエーテルギフトを植え付けられてから数日。


 割と穏やかな日々が過ごせていた。


 最初は女の身体になっていたことで、「オレの息子の霊圧が消えた……!」とかアホなこと言ったり、男と女の身体の違いに困惑しつつも意外とすぐに慣れた。


 植え付けられたエーテルギフトに関しては、今のところそこまで実感はない。

 だって使えないから。


 人に願われないとエーテルギフトの効果は発揮しないのに、どうやってこの力を発動させろと?

 しかも会う人間全員、願われる前からすでに【禁約3:他人へのデメリットを満たさない相手の願いを叶えてはいけない】でデメリットの条件を満たしていないと分かるせいで、[願望成就]の効果を発動させられないし。

 無理やり発動させることもできそうではあるが、そうやって願いを叶えたらオレも相手も何らかの代償を払うことになるというのに、誰がそんなもん発動させるというのか。


 そもそもの話、オレは人の願いが叶ったとかいうのを見たり聞いたりするのが好きじゃないし。

 我ながら歪んでいるというかクズい思考である。


 なのに【制約2:他人の願いを叶えたくなる衝動に駆られるようになる】はマジで酷い!

 身体検査を受ける際にこの研究所の人間に会ったが、その時無性に[願望成就]の力を使いたくなる気分に駆られて最悪だった。

 例えるなら蚊に刺されたところを引っ搔くのを我慢しているような気分である。


 前世の記憶が無かったら、会う人間に願い事を聞いて力を使いまくってたんじゃないだろうか?

 その代償がどれほどのものになるかは分からないが、それでも構わないと行動していた可能性がある。


 今は絶対に嫌だがな!!


「それにしても、以前とは生活の質が段違いだな」


 前なんて残飯みたいな飯だったのに、朝昼晩と豪華な食事が部屋に届けられている。


 もっとも、大した量は食べられないが。

 前世の記憶が戻る前はこの研究所にいる他の少女達からいじめを受けていたせいで、その残飯ですら満足な量を食べられなかったせいか、胃が小さいのだろう。

 そのせいで、今は少し食べただけでお腹がいっぱいになってしまう。


「美味しいご飯でも量が食べられないのは残念だな」


 そのせいか、13歳なのに身長が130センチほどしかないんだよな。

 さすがに低すぎだろ。

 食事の改善で少しは身長が伸びてくれると嬉しいんだが。


 TS転生してしまったが、それならせめてボンキュッボンな美女に成長したい。おっぱいがちっぱいだから今のところ厳しいが。

 TS転生したら美少女、美女になるのは鉄板だと思うんだ。容姿は整ってるし狙えると思う。

 しかしこのままではせいぜい美幼女である。130センチならギリ美少女と言っていいか?


 ――ガチャッ


「108番ちゃん、元気にしてるかしら? 何か不満や問題はない?」


 アホなこと考えながら部屋で適当にくつろいでいたら、この研究所の職員が部屋に入ってきた。


「部屋に軟禁状態になってる以外は問題ないが」

「あはは、それは我慢してほしいわね」


 笑いながらそう言ったのは白衣姿の黒髪ショートの眼鏡女性。胸はない。


「どこ見てるのかしら?」

「まな板」

「……ホントにどこ見てるのかしら?」


 額に青筋を立てながら言わないでほしい。普通に怖い。


「あなたが[願望成就]なんてエーテルギフトを持ってなかったらぶん殴ってたわ」

「正直が過ぎる」


 嘘が分かるエーテルギフトを持っているからといっても、自身は正直に言う必要はないのに何故言った?


 ここの職員の中で、この女性はエーテルギフトの力をオレ達のような実験体にも知られている人物だ。

 基本的にオレ達実験体と職員は明確な線引きがされ、必要最低限の関わりしか持っていないが、エーテルギフトの力を実験に使ったりする場合などで自然と知る機会はあるのだ。


 この人の場合はデメリットのせいで、何度も嘘だと告知しだすので分かってしまうのだが。


「それで、私に[願望成就]は使えそう?」

「無理だな」

「[願望成就]の内容に関わるせいか、嘘かどうかも分からないせいで何とも言えないわね」

「元から言う気はないが、[願望成就]はデメリットのせいでそれを口に出来ねえから、どうにもならんな。知ったところで[願望成就]が発動できる条件を全て満たすのは難しいが」

「それも嘘かどうかよく分からないわね。でも、相応に厳しい条件なのは間違いないんでしょうけど」


 ため息を吐きながらどうしようかしらと呟いているが、オレとしては知った事ではないな。


「でも、無理に[願望成就]を発動しようと思えばできるのよね?」

「デメリットを踏み倒すから、そのせいでどんな代償を負うか分からんのは他の職員にも言ってるぞ」


 下手に黙っていたら、間違いなく無理やり使わされるのは分かっていたことだから、そんな事させられないようにすぐに伝えたのだ。

 代償については明確には分からないが、感覚的に自分も相手も何かが起きることだけは確かなんだよな。


「それが108番ちゃんだけが負う代償なら使い倒してたでしょうね」

「人の心は?」

「こんな場所であるわけないでしょ」

「そりゃそうだ」


 人を実験体扱いしてるやべえ所なんだから、むしろある方が驚きである。

 今は軟禁状態ではあってもかなりまともな生活を送れているが、[願望成就]を得る前は刑務所での生活よりも酷いものだったのだ。

 刑務所での生活なんて詳しく知らんけど、規則正しい生活に実験が加わってるんだから、間違いなく酷いと言える。その上オレはイジメられてたしな。


「それにしても108番ちゃんは随分ふてぶてしくなったわね。前はおどおどしてたのに」

「それは実験のせいじゃね?」


 そのせいで前世の記憶が蘇ったのはほぼ間違いないだろう。


 それにしても、せっかく人生をもう一度歩み直せるチャンスを手に入れたというのに、このままでは籠の中の鳥のまま人生を終えてしまいそうだ。



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