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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉


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第1話 [願望成就]


 今生の記憶に混乱していると、壁に備え付けられていたスピーカーからザザッと砂嵐のような音が一瞬だけ響いてきた。


『108番、意識は明瞭か?』


 そしてそのすぐ後に男の声が聞こえてきた。


 108番とはオレのことである。実験体扱いされているのは分かっているとはいえ、番号呼びとかまともじゃねえな。


『おい、どうした。聞こえないのか?』

「はいはい、聞こえてるよ」

『むっ? 人格への影響が出てるのか?』


 前世の記憶を思い出すまでは、いつもおどおどして周囲の顔色を伺うような内気な13歳の少女だったのだから、その反応は分からなくもない。

 だが、憑依転生か輪廻転生かは分からないが、前世の人格に完全に上書きされてしまった以上、そんなおどおどする演技とかしてられない。どうせすぐにバレるしな。


『体調や精神面での不具合はあるか?』

「一応問題ないよ。精神面というか、性格が変わったと言われれば否定できないがな」

『そうか。今からそちらに向かうが、デメリットは問題ないか? こちらで何故か確認できなくてな』

「デメリット?」


 ……ああ。

 異能を得た事による代償のことか。


「分からん」

『何?』

「まだ確認してない。というか、どうやって確認すればいいのか分からんからデメリットが何なのかも分からない」


 オレはどうやら先ほど行われてたらしき実験で強制的に異能を植え付けられたようだが、その時の衝撃があまりにも酷いせいか異能も代償も認識できていないのだ。


『自身の内側に意識を向ければエーテルギフトとそのデメリットは自ずと分かるはずだ。その辺りの説明はあったはずだが』

「忘れた」

『………』


 どこか呆れた様な無言が返ってきたが、実験の影響のせいか、実験前の記憶はどうにも思い出せないのだから仕方ないだろ。

 それよりも異能とやらだ。


 この世界における異能はエーテルギフトと呼ばれており、超能力のような力だったり、魔法のような力、果ては異形化による獣人化などといった特殊な能力の事を意味する。

 そんな特別な力を得られるエーテルギフトだがいい面だけではない。

 デメリットがあり、エーテルギフトの強さに応じた代償が存在する。


 オレが知っているのは、[嘘が分かる]エーテルギフト持ちが、デメリットとして【嘘だと知ったらすぐに告知しないといけない】という制限がつくというものだ。

 もちろんこの研究所の職員であり、演技をする意味がないとすぐに諦めた理由である。


『108番、早く自分のエーテルギフトとデメリットを確認しろ。今のお前は何がトリガーになっているのか分からないのだから、下手すれば今すぐ死んでもおかしくないんだぞ』

「はいよ」


 デメリットの種類によっては勝手に行動を制限されるものもあれば、男が言うように禁止された行動をしたら罰を受けるというのもあるからな。

 もしそれが【人の命令に従ってはいけない】とかだったら、オレはこの時点でアウトになるのだが、さすがに確認しないわけにもいかない。


 さて、どんなエーテルギフトとデメリットだ?


 異能なんて特別な力がどんなものか、忘れていた中二の心が揺さぶられながらオレは自分の内側に意識を向ける。


 *******************************

 エーテルギフト:[願望成就] 他人の願いを叶えられる


 自身へのデメリット

 禁約1:自身の禁約と契約以外の[願望成就]のデメリットの内容を人に伝えてはならない

 禁約2:全てのデメリットの条件を満たす者に願われたら必ず叶えないといけない

 禁約3:他人へのデメリットを満たさない相手の願いを叶えてはいけない

 契約1:能力使用前に願いを相手から聞かないといけない

 契約2:能力使用後、体力の9割が消失する

 制約1:見返りを求められない

 制約2:他人の願いを叶えたくなる衝動に駆られるようになる


 他人へのデメリット

 禁約1:願いを叶えてもらった相手への恩義を生涯抱き続けなければならない

 禁約2:叶えてもらった願いを生涯否定してはならない

 契約1:[願望成就]によって1度だけしか願いを叶えてもらえない

 契約2:他者を害する願いであってはならない

 制約1:他人に[願望成就]のデメリットを伝えられなくなる

 制約2:エーテルギフトで[願望成就]への干渉ができない

 *******************************


 デメリット多くない!!?


 普通1つかせいぜい2つじゃないのか!?

 しかも自分だけでなく他人にも負荷を強いるとか、どんな異能だよ!?


「[願望成就]ってなんだよ……」

『[願望成就]だと? その言葉通りなら願いを叶える能力ということか!?』


 うっかり口にしてしまったが、どうせ研究所の人間が持つ異能でバレるだろうから問題はないだろ。

 というか、仮に研究所の人間が何の異能も持っていなかったとしても、どうせ拷問なりなんなりで喋らされたか、下手すればそんな不穏分子は処分されただろうから、黙っている意味はない。


 108番なんて呼ばれてる通り、100人以上の子供達がここで育てられて異能の実験に使われてるんだから、1人2人くらいなら簡単に処分させられてしまう。

 倫理? そこになければ無いですね。


『デメリットの方はどうだ? 我々が接触して問題はあるか?』

「接触する分には問題はないが、言えることと言えないことがある。っ!」


 今、体にピキッてきた。

 【禁約1:自身の禁約と契約以外の[願望成就]のデメリットの内容を人に伝えてはならない】のせいで、口にしようとしただけで警告のように体に違和感が起きかけた。

 トリガーを踏みそうになったら警告があるだけ、まだマシなのかね。


 それからスピーカー越しに男から色々質問された後、危険性のある異能でもなければうっかりトリガーを踏むようなデメリットでもないと判断され、オレは身体検査を行われてからこの実験室から出されることになった。



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