プロローグ
「なぁ、笹崎。明日からのGWって予定あるのか?」
「ある訳ねえだろ。高校の時の友人と遊ぶくらいだよ」
「相変わらず女っ気がねえな」
「うっせえ。いいんだよ別に。独り身の方が金もかかんねえし色々楽なんだから」
同僚にからかわれながら、オレは昼食の弁当を食べる。
『次のニュースです。○○選手が念願のメジャー契約を結び、年俸5億円で正式に合意しました』
食堂のテレビから誇らしげにそんなニュースが流れてきたのが聞こえ、オレは思わず目を細める。
「……つまんな」
「ん? なんか言ったか?」
「いや、なんでもねえよ」
人が夢を叶えた話ほどつまらないものはない。
逆に――
『次のニュースです。人気歌手○○さんが体調不良により初の武道館でのライブが取り止めとなり、復帰の目処は立っていないと所属事務所が明らかにしました』
「ふふっ」
こんな話を聞くと、思わず喜んでしまう。
武道館でのライブともなればほとんどの歌い手にとっては夢の場所だろうに、そこでのライブが出来なくなったなんて、夢が破れたと言っても過言ではない。
ああ、なんて可哀想な。
そう思いながらも喜んでしまうのだから、自分は本当に歪んでると思う。
まあ、少なくともそれをオープンにしたりはせず、意図的に人を貶めたりすることもないのだから、まだマシなんだろうが。
――キーンコーンカーンコーン
「うっし。昼休みも終わりだし、あと半日頑張りますかね」
「あとちょっとで長期連休だな」
「だからって気を抜いて仕事すんじゃねえぞ」
「分かってるよ」
流されるままに入った製造業の会社だから別にやる気は元からないのだが、給料をもらってる以上相応に働くさ。
オレは自分の担当職場であり金属加工で使う加工機の前に立つと、いつも通りの作業を行っていく。
そうして作業していくこと2時間。午後3時ともなれば少々疲労感が出てきた頃合いの時だった。
「あれ? 加工機が動かねえぞ?」
先ほどまで動いていたはずの機械がうんともすんとも言わなくなってしまったのだ。
「嘘だろ? 今日中にやりきらないといけない作業がまだ残ってるのに……!」
明日から連休のはずなのに、このままでは最悪休出しないといけなくなるじゃないか。
それに連休前でやる気も余計にないから定時で帰りたいのに、その定時まであと2時間しかない。
「くそっ。何でなんだ?」
オレは焦って思わず加工機の中に少しだけ頭を入れて覗き込んでしまった。
「おい、何をやってるんだ!?」
その言葉が聞こえた次の瞬間、何かの衝撃が頭を襲い――
◆
「痛っ!?」
突然全身に走った強烈な痛みに思わず飛び起きる。
「びっくりした。急に何なんだよ……?」
ん? なんか声がおかしいぞ。
というか、ここ、どこだ?
キョロキョロと周囲を見渡すと病院のような白い部屋だったが、自分が寝ていたのはベッドではなく手術室にあるような台の上だったので、少なくとも病室ではなさそうだ。
いや、マジでここどこ?
さっきまで仕事してたはずなのに、なんでこんな所にいるんだ?
そんな事を思っていると、徐々に変な記憶が頭に思い浮かんできた。
それはある少女の記憶。
閉鎖された無機質な施設の中で育てられたこと。
周囲よりも劣った存在として、他の子供達にイジメられてても無視され、ろくに扱われなかったこと。
ここが異能の研究を行う施設であり、物心ついた時から自分は他の子供達も含めて実験体としてここで育てられていた孤児であること。
「……なるほど」
どうやら自分は異能のある現代にTS転生したようだ。マジか。




