第27話 デメリットからは逃げられない
放課後になり部活に入っていないオレ達はすぐに寮へと戻ってきた。
部活とかって学校によっては必ずどこかに入るように言われたりもするが、エーテルギフトがあるこの世界だと、下手に強制するとデメリットの影響がある人もいるから、強制したりはしないのだろう。
「………」
「斗亜様、どうしましたか? もしかしてまた、でしょうか?」
ナズナがオレの様子を見て、察したのだろう。
まあこの数カ月で何度もあったことだから気づくか。
自分でも分かるくらいにそわそわして落ち着きがなくなってるし。
「はぁ……。ナズナの言う通りだ。何かオレに願い事はないか?」
普段なら絶対に言わない言葉。
だが、ハッキリ言って我慢できないくらい衝動が押し寄せて堪らないのだ。
人の願いを叶えたいという衝動に。
〝自身の制約2〟【他人の願いを叶えたくなる衝動に駆られるようになる】
なにもかもこの〝制約〟が悪い。
[願望成就]のデメリットの中で、よりにもよって強制力のある〝制約〟の内容がこれのせいで、自分でもどうしようもない感情にかき回されるのだ。更年期かよ。
研究所にいた時には渋々ではあったが、他人の願いを叶えるために動いていたためにこの衝動に翻弄されることはなかった。
だが、研究所を出てからは一切そういった行動をとらずに普通に生活していたのだが、ある日突然言い知れぬ不安感? 焦燥感? とにかくなんかこう色々とないまぜになった感情が溢れて仕方がなくなったのだ。
どうやらこの〝自身の制約2〟は時間が経つにつれて悪化していくようで、無理に我慢してもどんどん衝動が増すという鬼畜仕様だった。
なんとかそれを誤魔化すために、ナズナの願いを[願望成就]の力を使わずに叶えることでなんとか衝動を抑えられている。
〝他人の契約1〟に【[願望成就]によって1度だけしか願いを叶えてもらえない】とあるが〝[願望成就]によって〟という記述がなかったらほぼ詰んでたな。
このデメリットは〝自身の禁約1〟による【自身の禁約と契約以外の[願望成就]のデメリットの内容を人に伝えてはならない】のせいでナズナに伝えられていないが、ナズナに「オレができる範囲で何か願い事をしてほしい」と伝えただけで、詳しい事は何も聞かずにいてくれるから助かっている。
そのおかげで[願望成就]を使わずとも願いを叶えられれば衝動が抑えられるのは良かったが、最近は衝動に襲われる頻度が増しているんだよな。
病院に入院してから2カ月、1カ月と徐々に間隔が狭まっており、ついには週に一度は願いを叶えないといけなくなってしまった。ふざけんな。
「では今日一日、私に身を全てゆだねてください」
「うぅ……、いいだろう。その願い、気が乗らないが叶えてやる」
はー泣きてー!
以前は軽いお願い、それこそお風呂の介助をさせてほしい、とかそんな願いで良かったのに、今では単純な願いだと次の衝動が翌日にすぐ来るんだよ。
難しい願いであればあるほど衝動の間隔は空くのだが、オレが出来ることなど限られているから仕方がない。
そうしてオレは、右手も使えれば足も動かせるにもかかわらず、お風呂やトイレはおろか、着替えから歯磨きにいたる全てをナズナに任せることになった。ばぶー。
◆
「由々しき事態だ」
「どうされましたか?」
ベッドで一緒に寝ているナズナが尋ねてきた。
当たり前のように一緒に寝ているな。
いや、今はそれはいいか。
「同じ人間の願いを叶えているせいか、こういう機会がどんどん増えている」
「私は斗亜様のお世話を思う存分できるので大変嬉しいですよ」
「……ナズナはいいだろうが、このままじゃ日中にすらこういう事になりかねないんだよ」
さすがにナズナも周囲の目がある中では、願い事も今日のようなものではない願いをしてくれると思うが……してくれるよな? 「デメリットのせいで割と変な行動をする人間はいますから、周りも気にしないので大丈夫です」とか言って、学園でももはや羞恥プレイと言っても過言ではない事したりしないよな?
「だからナズナ以外の人間の願いもちょいちょい叶えて、この衝動が来ないようにしたいんだよ」
言ってて吐き気がしてくるが仕方ない。
他人の願いをなんでオレが叶えてやらないといけないんだ、という思いは大いにあるが、やらないと下手すれば[願望成就]の力を無理やり使って大惨事を引き起こしかねないし。
最初に願いを叶えてやった299番みたいに骨折するだけならいいが、次に願いを叶えてやったおっさんのように、いつどんな代償を払わされることになるか分からないのは怖いのだ。
あのおっさんに関しては無理やり[願望成就]を使わされたから、今どうなっていようと知った事ではないのだが、もしオレがついに衝動に負けて適当な人間に突撃して[願望成就]を使ってしまった場合、さすがにそれで代償を負わせるのは忍びなさすぎる。
オレ自身も腕を失ったりの代償を払うことになるので、できればそんな事態は避けたいのだ。
「できればオレの[願望成就]を知られずに、ちょいちょい人の願いを叶えられる状況にしたいんだが……」
言ってて思うが、さすがにそんな状況は都合が良すぎるだろ。
「では、そういう活動をするしかありませんね」
「活動?」
「はい。ボランティア部とかありましたし、そういう部活に入るのはどうでしょうか?
それなら自然と人の願いを叶えられるかと」
「悪くはないが、ボランティア部では無理だろうな……」
地域のゴミ掃除とかだと、誰かの願いを叶えるというものではないし。
「ではそういう部活がないか探してみましょう」
「そうだな。色々変な部活もあったはずだし、何かしらで当てはまるものがあるかもしれない」
明日、どんな部活があるか見て回る事にしよう。




