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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉
1章

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第25話 名前


 急に学園長が名前を決めろとか言ってきたが、そんなパッと浮かぶもんじゃねえぞ。


「君達は名乗りたい名前はないのかな?」

「無いな」

「77番でいいのでは?」

「………」


 オレ達がそれぞれそう言うと、学園長は何とも言えない表情を浮かべていた。


 まあ名乗りたい名前がないのもあれだが、77番というのはさすがに人に付ける名前じゃないからな。

 その辺の感覚は前世の記憶を持つオレなら分かるが、77番は研究所でそういうものだと育ったから学園長が何故そんな表情になっているか分からないだろう。


「それなら君達がお互いに名前を付け合ってみるといい。

 もちろん君達が望むのなら私が付けてもいいが」

「分かった。だがどんな名前にするか悩んだら、相談だけさせてもらう」

「私が108番様の名前を決めるのですか……?」


 今度は77番が何とも言えない表情になってしまった。なんでだ。


「どうした77番?」

「名前を付けるというのがあまりピンとこないのです。しかも主である108番様に私が名前を付けるなど畏れ多いです。

 それに――」

「それに?」

「私はあそこで108番様に呼ばれた77番という名前に思い入れがありますから」


 なるほどな。もう77番にとってはそれはただの記号ではなくなったのか。なら――


「ナズナでどうだ?」

「はい?」

「ななじゅうなな(77)だからその読み方をもじってナズナ。漢字はこれから考えるとして、安直かもしれないがこれならどうだ?」


 77の音に近いだけだが、人の名前として呼ぶならこれがマシだろう。


「ナズナ……」

「嫌か?」

「いえ、大変気に入りました。ありがとうございます」


 77番、いやナズナは嬉しそうに微笑んでおり、本心から気に入っているように見えた。

 ネーミングセンスに自信なかったから、嬉しいと思ってもらえてホント良かったわ。


「では108番様の名前ですね」

「思いつくか?」

「ひゃくはち、いちぜろはち、ひとまるはち……」


 ダメだ。このままじゃとんでもない名前になりそうだ。


「108にこだわるなら10と8で分けたりもできるね」

「じゅうとはち、とおとや、とおや……」


 学園長が軌道修正してくれたが男みたいな名前になったな。

 今は女だし、しかも見た目は自分で言うのもなんだが、可愛らしい容姿なのだ。

 男みたいな名前はさすがに合わないだろう。


「とおや、とーや、とや……とあ」

「ん?」

「トア、というのはどうでしょうか?」

「……悪くないな」


 ひゃくはちから始まったのに、思いのほかまともな名前が出てきて驚いた。


「よし、ならこれからオレの名前はトアだな」

「2人の名前がある程度決まったみたいだけど、漢字でどう書くんだい?」


 漢字か。

 トアを入力して変換すると斗亜とか叶愛になるか。

 さすがに叶える愛で叶愛は色々マズイのは分かるから、斗亜にしとくのが無難だろう。


「じゃあこれで」

「斗亜だね。ナズナ君の方はどうする?」

「そのままでいいかと」

「カタカナでナズナだね。それでいいのかい?」

「はい。これがいいんです」


 ナズナが強く頷いており、それ以外あり得ないと言っているかのようだった。

 漢字で表さず、そのままの名前がいいということか。


「そうか。あとは苗字だけど、希望がなければこちらで適当に付けるけどどうする?」

「じゃあ笹崎で」

「何か思い入れが?」

「いや、ふと頭に浮かんだだけだ」


 前世の苗字がそれだから、一番しっくりくるってだけだ。

 頭に浮かんだというのも、前世の事を思い出しての事だから嘘じゃないしな。


「分かった。ナズナ君もそれでいいかな?」

「いえ、さすがに斗亜様と同じ苗字というわけにはいきませんので、何か適当な苗字をいただければと」

「そうか。じゃあ苗字は名前に合うように無難なものにしておくよ。決まったら連絡をするからね」

「よろしくお願いします」


 こうしてオレ達の名前は正式に決まった。

 まあ決まったからって特になにか変わるわけでもないのだが。


 強いて言うなら、色々な手続きのためにその名前をひたすら書く事になったくらいか。

 戸籍がないせいで、そういうのを準備するために必要なんだよな。

 かなり面倒だった。


「ところで斗亜様。斗亜様は今後どうしようと考えていますか?」

「そうだな。やっぱりあの学園長の勧誘を受けるのが無難なところだろう」


 役所から教育ローンとか色々話があったが、無利子無催促で住処から学ぶ場所まで提供してくれる好条件以上のものはなかったからな。


「幸いにもどんなエーテルギフトの能力を持っているかは聞かれないし」

「何がデメリットに当てはまるか分からないためでしょうね。

 人としての常識として、他人のエーテルギフトについてはデメリットに関することも含めて本人から言わない限り聞かないのがマナーとなっているおかげで、不要な検索はされなくて済んでいます」


 もちろん、精神を操ったり転移したりなどの危険なエーテルギフトの能力でないかをイエスかノーかで問われたりする程度は行われたが、せいぜいそれくらいで詳しくは調べられなかった。


 オレの場合だと〝他人の制約2〟で【エーテルギフトで[願望成就]への干渉ができない】せいで、エーテルギフトの内容、つまり[願望成就]に関わる内容のため、イエスかノーか問われても向こうはそれが嘘かどうかの判別が出来なかったがな。

 ただしその場合、エーテルギフトで悪さをしたりする気がないか? とか、イエスかノーかで判別できる質問をされ、性格を調べ、悪さに使えるエーテルギフトかを判断されたが。

 そのせいでオレへの質問は長かった……。


「ナズナが研究所でオレの[願望成就]に関する情報を消しておいてくれたお陰だな」

「手あたり次第にパソコンを粉砕したりしただけです。研究所の人間は襲撃者に抵抗したために死んだ者も多いですが、中には捕まった者もいます。

 そちらから情報が漏れる恐れはありますね」

「そのせいで狙われることになったら、また逃げるだけだよ。少なくともここなら前よりは逃げやすい」


 今のところ特に何も無いから問題ないとは思うが、いざという時のことは考えておかないとな。

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