第20話 何をしているんですか!?
オレの負荷など気にせず逃げるよう指示すると、すぐに77番はオレを抱えたまま男から離れるようにダッシュで逃げる。
「ぐっ……!」
だがその加速が凄まじく、先程研究所から脱出した時並みのGがオレを襲う。
分かっていたこととはいえ、思ったより身体にくるな……!
あばら骨にひびが入ってるから、痛くて泣きそうだし!
「やれやれ、仕方ないな。コールエフェクト〈重枷〉」
呆れた様子の男が再び力を使い、先程と同じようにまるで空気が粘質な物に変わり、身体への負荷がさらに増した。
「はああっ!!」
ドンッと大きな音と共に衝撃が伝わってきた。
77番が思いっきり地面を蹴り込んだ反動だった。
それによって一瞬動きが遅くなったはずが、さらに加速し男から遠ざかることに成功していた。
その分かかる負荷が半端なくて、ジェットコースターとか目じゃないレベルでしんどいが。
「「「邪魔はさせません!」」」
それだけでなく、こちらを追って来させないよう分身達を男にけしかけている。
さすが77番。オレが指示しないでも行動が早いな。
「こっちは分身だよね? なら問題ないかな。コールエフェクト〈重圧葬〉」
「なっ!?」
男に差し向けられていた分身達が、地面に押さえつけられ動けなくされていた。
何体かの分身は足がおかしな方向に曲がっていたりしているので、相当な威力なのは想像に難くない。
「くっ、まだです!」
「へえ。こんなにも分身が出せるなんて凄いな。でも私に数でかかっても無意味だよ。コールエフェクト〈重圧葬〉」
77番の分身達が男を半包囲するように襲うも、男が範囲攻撃をするせいで攻撃が届く前に地面に叩きつけられていた。
「時間稼ぎにもならない……!」
77番は歯を噛みしめ悔しげな表情を浮かべながらも、分身を男にけしかけるのを止めない。
ほとんど一瞬でやられてしまうとはいえ、分身に多少でも気に取られてくれれば、その分逃げるチャンスも広がるからだろう。
「悪いけど施設の方も様子を見ないといけないから、あまり時間をかけるわけにはいかないんだ。コールエフェクト〈重変地異〉」
「「なっ!?」」
な、なんだこれ!?
身体が急に軽くなったと思った次の瞬間重くなり、また軽くなったと思ったら今度は重くなったりと、重力が無茶苦茶になった!?
「うわっ!?」
「108番様!?」
重力がおかしくなったせいで、77番が体勢を崩し、地面に放り投げられそうになった。
だが77番は両腕でオレをがっちり抱え、地面に倒れ込みながら分身を出してそれをクッション代わりにしてくれたお陰で、オレにあまり衝撃は来なかった。
「大丈夫ですか108番様!?」
「問題ない。それよりも動けるか?」
「……くっ、立つのもやっとですね」
何体もの分身を出し、それに支えられることで立ち上がることはできたものの、まともに動けそうにはなさそうだった。
「無理しない方がいいよ? どれだけ身体能力が高くても、地面を踏みしめるタイミングで重力が変化したら、まともに動くこともできないよね?」
男はそう平然と言いながら、自分は何ともないとでもいうようにこちらに歩いてくる。
ちっ。やっぱり自分は効果の対象外ってことかよ。
「だったら……!」
「おや?」
77番は進路上に分身を並べると、オレと77番を分身が掴んで次の分身へと手渡された。
まるでベルトコンベアーにでも乗ってるかのようだな。
「驚いたな。まさかそんな方法で〈重変地異〉を対処しようとするなんて。
でも、そろそろ終わりといこうか。コールエフェクト〈重圧葬〉」
「うわっ!?」
オレや本体の77番のいる位置ギリギリにいる進路上の分身が、軒並み押しつぶされてピクリとも動けなくされていた。
「まだ――」
「ダメだよ。コールエフェクト〈重圧葬〉」
77番が諦めずに分身を出した、次の瞬間には〈重圧葬〉とかいうので押しつぶされていた。
「いい加減諦めてくれないかな?」
「お断りします。私は108番様を守るために諦めるわけにはいきません!」
トゥンク。やだ、かっこいい――ってアホな事考えてる場合じゃねえ!?
だがこの状況どうする?
あの人間離れした力を持ち、本人と同じ性能の分身が出せる77番が無力化されてる今、ハッキリ言って詰んでる。
「ん~本当に悪いようにはしないんだけどなぁ」
「他人のそんな言葉が信じられるとでも?」
「108番様の言う通りです」
「君達の境遇は想像でしか分からないけど、ろくな大人が周囲にいなかっただろう事は分かるね」
さてさてどうしようかと言いながら、男はオレ達の傍まで近づきながらも特に拘束しようとしたりはしなかった。
まぁ、逃げられたところですぐに捕まえられる自信があるからなんだろうが。
「何をしているんですか学園長!?」
「おや?」
おかしな重力のせいで起き上がる事もできずに地面に横たわったままでいると、男の後方から女の声が聞こえてきた。
「こんな子供に力で無理やり抑えつけようだなんて大人げないと思わないんですか!」
「いや~こうでもしないと逃げられてしまうからね。手加減はちゃんとしてるよ?」
「そういう問題ではありません!」
なんか増えたし。




