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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉


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第19話 怪しいやつ


「よし、ここを出るぞ」

「かしこまりました」


 ドンッと大きな音が鳴った瞬間、身体に強いGがかかって驚いたが、すぐにそんな事どうでもよくなった。


 夜の空の下。

 今までの閉鎖された環境とは違い、布を揺らして伝わる風が心地よかった。


 そして落下し始める。


「申し訳ございません。思ったより力が入って飛び過ぎました」


 バンジージャンプかと言いたくなるくらい、地面から高さがあるな。大丈夫かこれ?


「着地は問題なさそう?」

「はい。すでに分身達を配置済みです」


 下をよく見ると何体もの77番が構えているのが見えた。


「私1人であれば問題ありませんでしたが、108番様にいらぬ衝撃まで伝わりそうなので、下で分身達に受け止めさせます」

「衝撃を覚悟すれば普通に着地できることに驚くわ」


 普通なら骨折で済むかも怪しい高さだぞ。


 ――ポスッ


「「「大丈夫ですか?」」」

「ああ、大丈夫だ。ありがとう」


 分身が上手くキャッチしてくれたお陰でほとんど衝撃は感じなかったな。

 骨折してるのに、アホみたいな高さから落ちたにもかかわらず痛くなかったとか、どんだけ繊細に受け止めてくれたのやら。


「これが初めての外か」


 物心ついた時から地下にある施設の中だったせいで、外なんて今生では初めてだから何か感慨深いものがあるかと思ったが、周囲が木ばかりだと特に思うことは無いな。


 そんな事よりも少しだけ肌寒い方が気になる。


「……結構冷えるな。1月だしこんなものか」

「施設を出る時に多少の物資を分身に持って来させていますので、何か羽織りましょう」


 77番はそう言うと、いつの間にかリュックを背負った分身が傍に来て、そのリュックからパーカーを取り出してオレに着せてくれた。

 77番自身も同様の格好をしているので、ちゃんと自分用の物も持って来てるようで一安心だ。

 今の77番はオレを優先しすぎて、自分の荷物を最低限にしててもおかしくないからな。


 さすがに自分だけ温かいとか罪悪感が湧いてしまうから、ちゃんと自身のことも考えていて良かった。

 まあ分身を99体出せるのだから、多少荷物が増えても持ち運べるのでそんな事にはならないか。


「それではこの後どうしましょう?」

「そうだな。とりあえずこの場からはすぐに離れるとして、行き先をどこにするかだ」


 肌寒いし南下するか?


 大した理由もなく行き先を決めかけたその時だった。


「行く当てがないのなら、私達の元に来ないかい?」

「誰だ!?」


 オレでも77番でもない声が周囲に響き、すぐさまその声がしたであろう方向に顔を向けるも、そこには誰もいなかった。

 慌てて周囲を見るも、いるはずの誰かの姿が見えなかった。


 夜中で月明かりしかないとはいえ、それらしき姿がないのはどういうことだ?


「どこにいる!」

「108番様、あそこです」


 77番が気づき指を差して場所を教えてくれた。

 その場所は最初にオレが確認した方向だったが、位置が違った。見る場所はその上だった。


「やあ。こんばんは」


 銀髪に近い淡い青髪を肩まで伸ばした男がそこにいた。

 ただしそいつは何故か宙(・)に(・)立(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)。


 落ちることなくその場で静止しており、そんな超常現象ができるのなんてエーテルギフトの力でまず間違いないだろう。イリュージョンでも似たようなことできるかもしれないが、そんなトリックを使ってまで宙に浮かんでいるように見せる意味はないので、それはないだろうし。


「ごめんね。驚かせてしまったかな?」

「……お前、何者だ?」

「うんうん。こんなろくでもない施設にいたんだから、まともな扱いを受けていなかっただろうし、人に対して警戒してしまうのは仕方がないね」


 男は黒と紺を基調とした上品なコートをたなびかせながら、ゆっくりと地面に降りてきた。


「私は黒瀬(くろせ)朔也(さくや)。とある学園で学園長をしている者だよ」


 そして地面に降り立つと、その場から近づかずに自己紹介をしてきた。

 おそらく下手に近づけばこちらを刺激すると思っているのか、相応に距離を置いてくれているようだ。


「学園長? 学園を運営しているような人間がどうしてこんな場所にいるんだ?」


 怪しいやつだ。

 普通、学園長がこんなマッドな研究所に来るはずがない。

 こいつ本当に学園長なのか?


「(108番様。逃げますか?)」

「(そうだな。変なのに捕まって、前と同じような状況になるのはごめんだ)」


 オレが目の前の黒瀬という男に質問しつつ、小声でこっそり77番にここから逃げるように指示をした。だが、それは叶わなかった。


「私がここにいるのは君達を――いや、この施設にいる子供達を保護するためだよ。だから逃げないでほしいな。コールエフェクト〈重枷〉」

「「っ!?」」


 空気が重くなった。

 それは比喩的なものではなく、文字通り空気が重(・)い(・)のだ。

 まるで水の中、しかも片栗粉でも混ざった水のように身体が動かしにくくなってしまった。


「私は君達を悪いようにはしないと約束しよう。どうか一緒に来てくれないかな?」


 だがそれもすぐに元に戻った。

 男がエーテルギフトの力を使うのをすぐに止めたのだろう。


「……いきなりこんな事をしてくる人と一緒に行け、と?」

「私から逃げるのは大変だよ、と教えるのには最適だったと思うけど?」


 今の訳の分からない力を使ってくると考えると確かに厳しそうだ。


「(どうだ77番?)」

「(確かに動き辛くはありますが、なんとか逃げられるかと。ただし、108番様の負荷が甚大ではないです)」


 あの状態の中で無理やり動くのだから、空気に押しつぶされることになるのは予想できるな。


「(構わない。こんな怪しい奴に捕まるよりマシだ。やれ)」

「(かしこまりました)」


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