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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉


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第18話 襲撃


「一体何の音だ……?」


 この施設は結構防音が整っているので、こんな轟音が響くような事はまずないはずなんだが?


「私が確認して来ます」

「あ、うん。お願い」


 77番はそう言って分身を何体も様子を見に行かせていた。もちろん本人はここに残っている。


 そうして待つ事しばらく。


「……なるほど」

「どうした?」

「どうやら襲撃のようです。何者かがこの施設を襲っており、被害はかなり大きいですね」

「分かるのか?」

「はい。分身は消える際に見知った情報を本体に送ることもできますから」


[百人一色]強すぎない?

 さすがは【寿命99年の先払い】なんてデメリットがあるだけあって、強力な能力だな。


「あ、その分身からさらに連絡が来ました。どうやらその襲撃によって天井に穴が開いており、そこから施設の外である地上に出れるそうです。どうしますか?」


 ふむ……。

 一体この施設を襲ったのは何者なのかと気になるところだが、それよりも今はこの千載一遇のチャンスをどうするかだ。


 今オレはとてもじゃないが動ける状況ではなく、この施設の外に出れば今まで得ていた衣食住を自力でどうにかしなければいけないことになる。


 だが、このままここにいる選択をすれば間違いなく、数年もせずに[願望成就]の代償を払わされまくって、ダルマどころか内臓の大半も失われることになるだろう。

 しかも今は何者かの襲撃を受けており、それが何の目的でここを襲っているのかは不明だが、それによる影響で今の生活が続くかどうかも怪しい。

 77番に頼ればこの施設の人間も襲撃者もどうにかでき、衣食住をここで賄えるかもしれないが、襲撃者はともかく施設の人間にいずれ77番の対応策を講じられる可能性が高い。

 それに逃げ出すなら、襲撃で混乱している今以上にベストなタイミングはない。


 この2つを比べた時、自ずと答えは見えていた。


「77番に苦労をかけることになるが構わないか?」

「無論です。私の全てはあなたのために」


 決まりだな。


「ここを出るぞ」

「かしこまりました」


 ここを出た後の衣食住に関しては後で考えるとして、今はこの施設を抜け出すことを優先しよう。

 あ、でも抜け出すだけだとマズいか。


「できればここを出る前に、分身でオレの[願望成就]の情報が他に伝わらないよう、極力消しておいてほしい」

「かしこまりました」


 ここにいる人間だけでなく、外の人間にもオレの情報が広く知れ渡ったらしつこく狙われかねないからな。


「それでは失礼します」


 77番はそう言ってオレを抱えてきた。


「少し揺れますが、舌を噛まないように気を付けてください」

「分かった」


 オレが頷いた直後、すぐに移動が開始された。


 オレと77番の周りには何体もの分身が現れ、オレ達を守るように取り囲みながら移動。


「なっ、こんな時に何をするんだ77番!」

「おい、部屋に戻っていろ!」

「ちっ、止まれ――ぐあっ!?」


 さらに何十体もの分身が先行して動いており、施設の人間を軒並み倒していた。

 オレ達が逃げ出してることを知られないためにも、進路上にいる人間は倒しておいた方がいいからな。


「えっ、子供?」

「こんな子達まで利用していたのか!?」

「やはり早急に動いて正解でしたね」


 襲撃者の人間らしき人物達もいて、格好が明らかにここの人間ではないのですぐに分かった。

 というか、どこかの学校の制服みたいな格好なんだが、何なんだこいつら?


「108番様、どうしますか?」

「ここの人間でないなら下手に手を出して敵対される方が厄介だ。向こうが襲って来ないなら放置で」

「かしこまりました」

「あっ、待って!」


 そいつらを素通りして出口へと向かう事にしたら、襲撃者の中の1人がこちらに声をかけてきた。


「当然無視だ」

「かしこまりました」


 生憎だがこちらとしては構ってる暇はない。

 それに今はまだ敵対していないだけで、こっちのエーテルギフトの力を知れば確保しようと襲ってくる危険もある。

 オレ達がこの施設からの脱出を目的として行動している以上、下手に関わって脱出の機会を失うわけにはいかないのだ。


「ちょっ、止まりなさい!」


 長めのポニーテールの少女がいくつもの鎖をどこからともなく出現させ、それを操ってこちらに放ってきた。

 エーテルギフト持ちか。


「77番」

「かしこまりました」


 オレが77番を呼ぶとそれだけでこちらの意図を理解したのか、呼び出した分身達を盾にして、放たれた鎖を全て防いでいた。

 もちろん反撃したりはしていない。


 向こうもこちらを傷つける意図はなかったようで、分身は鎖に拘束されただけのようだしな。


「「「ふんっ」」」


 ――バキンッ


「なっ、壊された!?」


 拘束された分身も、その鎖の拘束を力任せに破壊していたので思ったより大した事ないものだったか。


「それにしてもなんでわざわざ鎖を壊したんだ?」

「どの程度の強度か確認したかったので。あの程度であればたとえ捕まったとしても脱出は余裕ですね」


 分身を消せばいいだけだと思ったが、確かに確認できるなら確認しておいた方がいいよな。


「そんな!? あの鎖を生身で破壊できるはずがないのに……!」

「あの抱えられてる子の力じゃない? バフ系かも」


 なんか勝手に勘違いしているが、当たらずも遠からずだ。

 違うのはオレではないということ。77番が分身能力だけでなく、[忠誠証明]というバフも持っているということだが。


 驚いてる彼らは無視し、オレ達は出口へと向かう。

 強化されている77番に彼らでは追いつく事ができず、道中にいる施設の人間も全員叩き潰せているので、オレ達の邪魔を出来る者はいなかった。


「着きました」

「早かったね」


 77番の報告通り天井はぽっかりと大きな穴が開いており、分厚い土の穴の向こう側には星の明かりが散りばめられた夜空が見えた。


 これでこの施設とはおさらばだな。



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