第16話 [忠誠証明]と[百人一色]
「私のエーテルギフトは2つあることはご存知だと思います」
77番は微笑みを浮かべたまま話を続けたが、何故にエーテルギフトの話に?
「ああ、そうだな。デュアルギフターと呼ばれていたのを覚えてる」
確か、強力なエーテルギフトを2つ植え付けられたんだな。
そのせいで寿命が99年失われていたんだ。
「はい。私は2つのエーテルギフト、[忠誠証明]と[百人一色]を持っています。
まず[忠誠証明]から説明しますと、主と認識している相手への忠誠度によって肉体強度が増す、という能力になります」
「肉体強度?」
「簡単に言えば、力が強くなり、弾丸すら跳ね返す頑丈さを持つと思っていただければ構いません」
「なるほど。……跳ね返したのか、銃弾を?」
「はい。軽いデコピンを受けたような衝撃でした」
銃撃戦してる!?
しかも77番は絶対素手か、少なくともまともな武器は持ってなかっただろ!
「そして[百人一色]ですが、こちらは99人の分身を出せるというものですね。こちらのエーテルギフトのデメリットが〝契約〟で【寿命99年の先払い】だったせいで、私は死にかけていました」
死にかけていたとかさらっと重い事を言われたが、それよりも能力である。
「99人の分身って……[忠誠証明]使える?」
「使えます。オリジナルと全く同じ分身が出せるので」
弾丸すらデコピンレベルになる肉体強度を持つ人間100人が暴れるとか悪夢かな?
「この施設って、暴動対策に強力なエーテルギフトを持つ戦闘力の高い人間が何人もいなかったっけ?」
「もちろんいました。ですが分身が何体やられたところで、本体が無事なら何度でも分身は出せますから、向こうが倒れるまで攻撃し続ければいいだけでした」
1人人海戦術してやがる。
「あと――」
「あと?」
「何故か死ぬほどのダメージを負ってもすぐに回復するので、本体が弱点になりませんでした。
これ、108番様のお陰ですよね?」
ああ、それね。
[願望成就]を正当な方法で発動させたお陰か、その副次効果で77番に起った不思議現象が、願いが叶えられた影響であるのは分かっている。
「77番の〔生きたい〕という願い。それによってお前は寿命が99年分加算され、さらに寿命以外では死ななくなったからだな。ついでに健康で五体満足に生きられるように、どんな傷もすぐに治る」
「やはりですか」
「というか、死にかけるようなダメージを負ったのかよ」
「こういう場所に勤めている人間ですから、瞬時に本体を狙って躊躇なく攻撃されましたね。急所は外されましたが、相当な出血をしましたね」
「弾丸すら軽いデコピンになる77番を大怪我させるとか、やべえのがいるな」
「死なないと分かったら、すぐに何度も殺されましたよ」
「え?」
「はい?」
オレが77番の言葉が気になって77番を見るも、77番はどうしたのかという表情を浮かべるだけだった。
さっき死ぬほどのダメージとか言ってたけど、文字通りの意味かよ!?
なんで殺されたのに平然とその事を語ってるんですかね?
「ああ。安心してください。最終的に、回復系のエーテルギフトを使われても2、3日は起き上がれなくしておきましたから」
違う。その心配はしていない。
「……他にも厄介なのいたんじゃないのか?」
「はい。他のも同様の処置をしたので、108番様のお世話をする邪魔をされることはありません」
聞かなかったことにしよう。
「それにしても何で暴れてまでオレの傍に?」
「命を救われた――というのもありますが、自身の代償を顧みず私を救うために行動した、108番様の恩義に報いたいと心の底から思い、忠誠を誓ったためです」
「忠誠を誓ったからって、なにも暴れてまで傍にいなくてもいいんじゃないか?」
「忠誠を誓ったのに、その相手の傍にいないのはおかしくないですか?」
同じような質問が返ってきてしまった。
これ、オレがおかしいんだろうか?
「そこまでする必要があるとは思えないが……」
「忠誠を誓った方の命令にいつでも従えるよう、傍にいないといけませんから」
今度は断言されてしまった。
「安心してください。デメリットの影響が無かったとしても、どんな命令であれ私は従います」
「デメリット?」
何故に急にデメリットの話が?
「はい。[忠誠証明]のデメリットは、〝制約〟で【忠誠を誓った相手の命令は絶対になる】というものです」
「デメリットが重い」
銃弾すら弾く肉体になるのだから、相応のデメリットと言えばそうかもしれないが、どんな命令も〝制約〟のせいで強制的に聞くことになるとか、言い方は悪いけど奴隷になるようなものじゃないか。
「77番はオレに忠誠を誓ったから、オレの命令は絶対と」
「元からそのつもりです」
……デメリットとか関係なく重いなこの子!?
「とりあえず、変な命令だけはしないように気をつけることにするわ」
そう言った時、ふとトイレに行きたくなってきた。
ずっと寝てたからか、目を覚ましたら尿意が来たな。
「どうされましたか?」
もぞもぞと動いていたら、77番がどうしたのか尋ねてきたので、オレは思わず思っていたことをそのまま口にしてしまった。
「んっ、ちょっとトイレに行きたくて……」
「かしこまりました」
「へ?」
そう言って77番はオレを抱えると、トイレへと運びだした。
いや、ちょっと待て!?




