第15話 奇跡
≪108番SIDE≫
「私は……あなたに、忠誠を……捧げ、ます。
だから私の願いを叶えてください。私は、〔生きたい〕!」
77番の悲鳴にも似た懇願。
しかし感情がこもっているかどうかは関係ない。
願いが叶えられるかどうかは、[願望成就]の条件を達成している事が全て。そして今ここに、その全てが達成している者が現れた。
「……はぁ。やっぱり意識するかどうかは結構重要な事なんだな」
恩義を生涯感じ続けるなんて、意識していないと難しいだろう。
たとえ生き死にに関わる問題でも、時間が経てばふと忘れてしまう瞬間があってもおかしくないのだから当然か。
だが忠誠を誓うと言うのであればオレに付き従うということだから、オレのそばにいるのなら忘れることはない。
やはり[願望成就]でまともな方法で願いを叶えられる奴が現れるのは、奇跡のような確率だな。
「さて、そろそろやらないとマズいな」
先程から身体が熱くなってきたのは、〝自身の禁約2〟で【全てのデメリットの条件を満たす者に願われたら必ず叶えないといけない】に縛られているせいだろう。
願いを叶えなければオレはその代償を払うことになる以上、どうにもならない。ああ、ホント……嫌な能力だ。
「いいだろう。その願い、仕方がないから叶えてやる」
前に2回、[願望成就]を無理やり使った時とは違って身体に嫌な違和感は来ず、先程まで身体を駆け巡っていた熱が[願望成就]の核と思わしき場所へと集まっていく。
――パアッ
その熱が集まるにつれ、オレを中心に光の輪がいくつも広がるように現れ始めた。
「なっ、まさかこれは……!? [願望成就]が正規の発動をしているのか!」
護衛の男が驚いているがそっちはどうでもいいな。
それよりも目の前の77番だが、裏切られるのを恐れるように期待しつつも顔が強張っているのが見えた。
さっきは願いを叶えられないと言ったから、その気持ちは分からなくもないがな。
オレはその様子を見て思わずフッと笑ってしまう。
77番の様子がおかしかったからじゃない。
他人の願いを叶えるなんて嫌だと言いながら、77番の願いを今度は叶えられるから安心しろと思っている自分の滑稽さにだ。
これは〝自身の制約2〟による【他人の願いを叶えたくなる衝動に駆られるようになる】のせいなのか、それとも性格がひん曲がってるくせに意外と人の助けになることを嬉しいと感じているからなのか。
「どっちでもいいな」
なにせ結果は変わらない。
いくつもの光の環が重なり、体の中にあったはずの熱も徐々に失われてきた。
そろそろだな。
そう思った次の瞬間。
光の環が一気に弾けるように広がり、周囲は目が開けられないほどの強烈な光に包み込まれた。
そして――
「身体が……軽い!? 苦しくない!」
77番は勢いよく起き上がると自分の身体をペタペタと触っており、本当に願いが叶ったのか確かめているようだった。
「問題なく願いは叶った。失われた寿命は戻ったぞ」
まあそれだけじゃないようだが。
[願望成就]によって願いが叶えられた際、どのように願いが叶えられたか不思議と分かったんだよな。
これも[願望成就]の副次効果なんだろう。
「うっ……」
眩暈と同時に異常な眠気が襲ってきた。
そして身体の内側にあった熱がスッと失われていき、意識も一緒にそのまま失った。
◆
「ん、んんっ……」
また前と同じように丸一日眠っていたんだろうか?
寝すぎて眠いような感覚を感じながら、オレは唸りながら体を起こそうと――
「起きますか?」
スッと背中を何かで支えられる感覚がした。
「えっ、な゛に!?」
喉が渇いてるせいか、変な声が出てしまった。
いや、そんな事はどうでもいい。
それよりもいきなり現れた人物だ。
声が聞こえた方へと顔を向けると、そこにいたのは白髪ショートヘアーでオレと同じ病院着のような格好をしている者がいた。
77番だった。
「どうしましたか?」
何か問題でもあったのかと聞いているようだが、問題というか疑問しかない。
何故77番がオレの傍にいるんだ?
周囲を軽く見渡すと、間違いなく自分が[願望成就]を得てからあてがわれていた部屋である。
その部屋に77番がいる意味が分からない。
「はい、こちらお水です」
「あ、ありがと」
こっちが頭に疑問符を浮かべている間、77番はオレの上半身を起こすとコップに入れた水をオレの口元に持って来てくれた。
別にそこまでしなくてもと思い、最初は右手で受け取ろうとしたが、鈍い痛みを感じて止めた。
そう言えばバッキバキに折れてたな。
左腕もないし、受け取る事ができないので、そのまま77番にされるがまま水を飲ませてもらった。
「ふぅ。それで、なんで77番がここに?」
「それはもちろん、108番様のお世話をするためです」
「108番……様?」
何故に様付け?
「はい。私は108番様に忠誠を誓い、そして命を救われました。ですから、私は生涯をかけてあなた様に仕える所存です」
「いや、重いわ」
誰がそこまでしろと言った。
恩義を感じろと言ったが、尽くせとは言ってないんよ。
「というか、どうしてここにいられるんだ? この研究所の連中のことだから、オレを他の連中とは接触しないよう隔離しようとしてくるだろうに」
実際、[願望成就]を手に入れてから、オレだけで他の子供達と顔を合わせることはなかったし。
「もちろん実力行使です」
何でもないといった様子で物騒なこと言い始めたぞ。
明日から1話ずつになります




