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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉


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第12話 借り


 77番が弱々しい目でこちらを見てきたが、オレは構わず続けることにする。


「[願望成就]の自身のデメリットの1つ、【契約1:能力使用前に願いを相手から聞かないといけない】という条件がある。

 だが願いを聞いたところで、願いを叶えてもらう側が条件を満たしていないことには願いは叶えられないんだ。

 そしてそれはかなり厳しい条件で、オレはそれを伝えることができない。

 だから願いを叶えられるという奇跡には、相応の条件があると思って願うことだな」


 ――ピキッ


 条件の内容には触れず、かなりあいまいに厳しい条件だと伝えただけにもかかわらず、以前にもあったように[願望成就]から警告とでも言うかのように体にヒビでも入ったかのような錯覚を感じた。

 これ以上明確に伝えたら、〝自身の禁約1〟の【自身の禁約と契約以外の[願望成就]のデメリットの内容を人に伝えてはならない】を破ることになって、代償を払わされただろう。


 たったこれだけの事を伝えるのが精一杯な辺り、かなり意地悪な能力だ。

 そんな能力のせいで相手に押し付ける厳しい条件も、普通に考えて無理だと思う内容である。


 *******************************

 他人へのデメリット

 禁約1:願いを叶えてもらった相手への恩義を生涯抱き続けなければならない

 禁約2:叶えてもらった願いを生涯否定してはならない

 契約1:[願望成就]によって1度だけしか願いを叶えてもらえない

 契約2:他者を害する願いであってはならない

 制約1:他人に[願望成就]のデメリットを伝えられなくなる

 制約2:エーテルギフトで[願望成就]への干渉ができない

 *******************************


 条件はこの6つ。

 その内〝制約〟は行動を強制されるので問題はない。


 問題は〝禁約〟と〝契約〟だ。


 全ての人間がこの〝禁約〟と〝契約〟のふるいにかけられて条件を満たせなかった。

 それはそうだろう。


 〝契約2〟であれば願いの内容次第だが、〝願い〟が直(・)接(・)他者を害する内容でなければ問題はない。

 だが〝禁約1〟なんてどこの誰がこんな条件を満たせるというのだ。


 生涯ずっと恩義を抱くなんて、口にするのは簡単でも実際にそれが出来る者は少ないだろう。

 このたった1つの条件がほぼ全ての人間の願いを拒絶することになるのだ。


「……生き……たい。人並みに……生き……た、い……」


 生き死にがかかっている77番ですら、未来ではその条件を満たせていないのだから。


「残念ながら、その願いは叶えられない。77番は条件を1つ満たせていない」

「…………えっ?」


 ――ピシッ


 また警告が来た。

 満たせていない条件の数すら警告の対象なのだから勘弁してほしい。


「そうか。77番でも無理なら、この研究所では誰も[願望成就]を正当な方法で行使出来る者はいなかったということだな」


 残念そうに護衛の男が後ろでそんな事を言っているが、オレとしてもそれは同じだ。

 もちろん人の願いなんて叶えたくない。

 たとえ〝自身の制約2〟による【他人の願いを叶えたくなる衝動に駆られるようになる】で強制されていても、この心根だけは変わらない。


 だが、[願望成就]を使って願いを叶えられなければ、いよいよ代償を無視して無理やり能力を使わされる未来しか見えないのだ。

 ただの時間稼ぎにしかならないとしても、少しでも五体満足――はすでに無理でも体をこれ以上欠損せずに過ごせる期間を伸ばすためには、1人くらい正規の手段で[願望成就]を使えないといけない。


「……それに77番には借りもあるしな」

「何か言ったか?」


 オレは護衛の男が問いかけてくるのを無視して、かつてあった日々の事を思い出す。


 前世の記憶が戻る前。


 まだ私(・)だったあの頃、他の子達よりも頭は悪く、身体能力が劣っていたオレはよくいじめられた。

 特によくあったのがご飯を取られる事。

 唐揚げやハンバーグなど、子供に人気の食べ物が出た時なんかすぐに奪われた。


 そしてオレのトレーの上にはご飯、みそ汁、サラダだけが残る惨めな献立になってしまう。

 時にはご飯すら取られることもあって、よりみすぼらしくなったことすらあった。


「……グズッ」


 泣きたくて仕方なかったけど、引っ込み思案だったのと、ここの職員の人間に訴えたところで、取られた方が悪いと突っぱねられてしまうのはすでに分かっていたので、いつも泣き寝入りしていた。


「あげます」


 そんな時、たまにご飯を分けてくれたのが77番だった。

 普段は誰も寄せ付けず、常に優秀な成績を収める彼女が何故そんな事をしてくれるか分からなかった。


 お礼を言っても素っ気なくて、話しかけないでほしいと言ってるかのような態度をとられてしまう。

 何を考えてるのか分からなかった。でも――


「……美味しい」


 分けてくれたご飯に気持ちが救われたのは事実だ。


 毎回分けてもらえたわけでもないし、味なんてよく覚えてなければ、何を分けてもらったのかも忘れてしまった。

 だけど、惨めだったけど物凄く嬉しかったことだけはよく覚えていた。


「だから、その借りだけは返してやる」


 これは77番の願いを叶えるためじゃない。

 自分が貸し借り無しでスッキリしたいだけの、ただの自己満足だ。


 オレは77番の耳元にそっと口を近づけた。



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