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エーテルギフト~異能のデメリットに振り回されるオレ達~  作者: 甘井雨玉


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第11話 デュアルギフター


 連れて来られた場所は病室のような空間だった。


 真っ白な壁と簡素なベッドがあるだけで、飾り気は何もなかった。

 まあこの研究所は大抵の場所は飾り気はないので、これが普通と言えば普通なのだが。


 それよりも、他の収容区画にいた者達との唯一の違いは、この部屋の主と思われる人物に大人の身長の半分はありそうな大きな点滴バッグが繋がっており、まるで長時間放置しても生命維持できるように施された処置のように見えた。


「一応生かす気はあるのか?」

「この様子を見るに、自力で水分補給もできないくらいには衰弱しているようだな。

 普段であれば点滴も無しで放置するのだが、7(・)7(・)番(・)は特別だ」

「77番!?」

「どうした?」


 は? 嘘だろ!?


 護衛の男がオレに聞いてくるが、そんなの気にしてられない。

 すぐにオレはベッドで苦しげに横たわっている人物を見ると、かつて黒かった髪は真っ白になり、血色は悪くなり青白くなって頬がこけていたが、確かに77番の面影があった。


 そう。かつて食事を奪われた際にたまに自分の食事を少しだけ分けてくれた女の子。

 それが77番だ。


「99年分の寿命が無くなったせいでこうなったのか……」

「そうだな。108番と同じで13歳だから、実質今は112歳だ」


 そう聞くと、寿命幾ばくも無い状態というのが分かる。

 いくら平均寿命が伸びた現代でも、100歳を超えて生きられる人間はごく一部に過ぎないのだから。


「……それで、彼女はどうしてまだ生かされてるんだ?」


 この研究所であれば、実験体の子供など消耗品のように扱われるのだから、余命がわずかであれば適当に処分されてもおかしくはない。


 一応、物心ついた頃からここにいる者は成長過程を観察されているので、自然とエーテルギフトを得た場合にどんな状況や環境だったか、再現性はあるのかを調べられたりしているから、エーテルギフトを得るまではそう簡単に処分されない。

 だけど77番はすでにエーテルギフトを得てしまっているので、必要なデータがこれ以上取れないのなら、役割を終えた存在として扱われるはず。

 なのに、まだ延命措置されてるのは何でなんだ?


「さっきも言ったが77番は特別だ。彼女はデュアルギフター。強力なエーテルギフトを2つ得るように実験されたんだ」

「おい、正気かてめえら……!」


 エーテルギフトはその能力が強力であるほどデメリットが重くなる。

 だというのに、こいつらはこんな少女にそれも2つも植え付けやがっただと?!


「正気だろうが狂気だろうが結果が全てだ。進歩のための犠牲ならば仕方ないだろう」


 まともな返答は期待しちゃいなかったが、思った通りろくでなしの答えが返ってきやがったな。


「ちっ、相変わらずろくでもないやつらだ」


 オレがそう言って男を睨みつけるが、男は軽く肩をすくめるだけで意に介していないようだった。

 こいつを気にするだけ無駄だったな。

 それよりも77番だ。


「おい、大丈夫か?」

「…………んっ」


 オレは77番の寝ているベッドの傍に近づいて話しかけるが、77番は声も出すのもしんどいとでもいうかのように、目を瞑ったまま返事なのか息遣いなのか微妙なものが返ってきた。


 こんな状態の人間に果たして願い事を聞いていいのだろうか?

 どう見ても死にそうな人間に対し願い事はなんだと聞いたら、まず間違いなく生きたいという言葉が出るだろう。


 だが、オレの[願望成就]は願いを叶えられる側にもデメリットを強制する仕組みであり、その全ての条件が満たさないことには能力は使えない。

 無理に使えば、オレは左腕を失うなどの代償を負うし、叶えられる側にも何かしらの代償を負うことになる。


 寿命が無くなりかけている人間の生きたいという願いは、〔意識をハッキリさせ、きちんとした自我を持たせてくれ〕や〔健康な肉体にしてくれ〕といった願いよりも間違いなく重い。

 そんな願いで代償を払うことになろうものなら、オレは十中八九死ぬことになるだろう。


「……仕方ない、か」


 仕方ないと言ったが、別にオレが自己犠牲の覚悟を決めた訳じゃない。

 普通に嫌だし、そもそも人の願いなんて叶えるのも嫌なのに、どうして自己犠牲決めて死なないといけないのか、って話だ。


 そうではなく、ただ、このまま希望も何もないまま死ぬくらいなら、助かるかもしれないという一縷の望みがあってもいいってだけだ。

 それで結局助けてもらえないという絶望に変わるとしても、万が一全ての条件を満たした場合、〝自身の禁約2〟である【全てのデメリットの条件を満たす者に願われたら必ず叶えないといけない】によって、生きたいという願いは叶うのだから。


 つまり77番に絶望を与える覚悟を決めただけだ。

 うーん、我ながらクズいな。


 さて、それじゃあ始めるとするか。


「77番。願いはなんだ?」

「……っ」


 77番がピクリと反応を示したが、オレはそれに構わず続けることにする。


「オレのエーテルギフトは[願望成就]。願いを叶えられる能力だ」

「……う……あっ」


 77番の閉じていた目がゆっくりと開いた。



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