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ダンジョンデスゲームから帰還した男の絶望  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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四話

 12歳以下のプレイヤーには特殊な装備を配布された。

 魔力と身体能力向上の魔石だ。


 第二ゲームから仲間になったノエルは、魔導学園初等部の生徒であり、子どもながら数多の事件を解決した名誉男爵であり、勇者因子の持ち主であった。


『うん、ノエルは初等部に通ってるんだよ! もう六年生だから立派な大人の女子だよ! 帝都でお母さんとはぐれちゃって……迷子になっちゃった……』


『穴を掘るの? 楽しそう!! 魔法で一気に広げるね!』


『え? だって私の方が強いもん。殺してもいいルールでしょ?』


『裏切ったって? ううん、違うの初めから味方なんかじゃなかったもん。カーディスさん……あのね、これって殺し合いなんだよ。甘いよ』



『カーディスお兄ちゃん……、えへへ、私、間違えちゃった、やっぱりお兄ちゃん側に付けばよかったのに……。でも楽しかったよ、お兄ちゃんと遊べて良かった――』


 俺の腕の中で死んだノエル。殺したのは俺だ。



 デスゲームに女子も子供も関係なかった。俺のチームは女も子供も多かった。


 大抵のチームは高位ランキング冒険者で固めていた。みんな力が全てだと思っていた。


 デスゲームで実感した。子供の思考柔軟性の高さや、女性のたくましさを。

 俺は裏切り者の最強のプレイヤーであるノエルを殺した時、自分の生き汚さを呪った――




 ***



 俺が魔導学園の廊下を歩く。それだけで周りに緊張感が走る。


 俺に喋りかけてくる奴は誰もいない。気にせず目的の場所へと向かう。


「……デスゲームはルールの下で行われる」


 クラスメイト全員が勘違いしているのだろう。


 あれは俺とマルローズ、メルと交わしたゲームだ。他の人間が入り込む余地はない。


 デスゲームと比べて子供の遊びみたいなものだが、あの日以来教室の雰囲気が一変した。


 マルローズは俺を見ると無言で微笑んでくる。メルは慌てて逃げる。


 アイツらはきっと賞金が必ず手に入ると思っている。


 理由があって賞金を欲しがっていたプレイヤーが多かった。

 借金、身内の病気、この二つがダントツで多かった。


「……あいつの家も」


 言葉を切る。ノエルの実家が貧困家庭だと知っていた。ゲームに勝てば莫大な賞金が手に入る。


 確固たる意思がなかった俺と比べても、十分すぎる理由だろう。


 だが、俺はゲーム中盤で必ず生き残るという決意をした。

 それが俺を変えた。



「失礼します」


 俺は目的の場所につき、扉にノックをした。

 入れ、という声に促され、扉を開ける。


 魔導学園理事長である「ノワール・ブルー」が椅子に座っていた。


 若干、40代の若さで騎士ランキングと魔導ランキングともに一位を獲得し、数多の研究で帝都に繁栄をもたらした人物。


 とても40代とは思えない美貌の麗人であった。


「カーディス君、やっと君に会えた」


「……お話とはなんでしょうか?」


 笑顔の裏に隠されているとんでもない魔力と……感情の渦。


「もちろん、ダンジョンデスゲームのことですよ。……思うところはあると思いますが、あなただけでも生き残ってくれてよかったです」


「要件を」


「ええ、カーディス君、私が帝都騎士団出身だと知っていますか? これでも薔薇騎士団団長として名を馳せた魔導剣士でした」


 帝都最強、英雄薔薇騎士団団長ノワール。

 その名は他国まで知れ渡っている。


 他国からは――『悪魔の赤』『血染めのノワール』『魔王』と呼ばれている。


 誰もが認める最強の人間だ。


「ごほん、君の周囲は不安定です。学園というのは異物を排除しようとします。ですので――もしよかったら、帝都の騎士団に入りませんか? ふふ、私の推薦ですので、薔薇騎士団に入れますよ」


 きっと、デスゲームの前の俺だったら泣いて喜んでいただろう。


 騎士団に入る。魔導学園の生徒にとって夢のような話だ。


 騎士団は帝都の花形職業だ。


 圧倒的な権力を持ち、貴族とは違う身分を手に入れられる。


 特権階級であった。


 本来なら、厳しい試験と訓練を積まないと騎士団に入団することができない。だから、学生の身分でおんな話は――



「いえ、断ります」



 おしゃべりだった理事長の言葉が止まった。俺の目をじっと見ていた。


 俺は右手に力を入れながらも、見つめ返す。


 感じたのは――興味と悪意だった。



「そう、ですか。なるほど、残念ですね。というよりも、君の有用性をわかっている稀有な人間だと自分では思っているんですけどね。いやはや、なんで、防げるんですか? 私の魔法を」



 この理事長室に入った時から感じていた違和感。無意識に全て潰していた。



「魔法なんてつかえなくても、あなたはあの「ゲーム」に勝ち残った化物です。私と同じようにね。薔薇騎士団団長にふさわしいですよ」



「お話はそれだけですか?」



「ええ、それだけです。また気が変わったら理事長室まで来て下さい」



 俺は何も言わずに、理事長に背を向ける。額に汗が流れ落ちる。


 俺がこれから相手にしようとしているのは、この理事長のような、圧倒的な化物たちなんだ。



 それでも――、


『カーディス君は魔法が使えなくても大丈夫ですよ。だって、観察力がすごいですもん。――えっ? 甘い物が食べたそう? もう、なんでわかるんですか! ……はい、帝都に戻ったら一緒にパフェを食べましょうね』



 ――俺は誰にも負けない。









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