第七十七話 聖女は魔王の恋人である……多分
しばらく経った後、ようやく二人の口論は収まった。正確には収まらなかったのだが、埒が明かないと判断したあたしとレオンでどうにか収めた。
双方とも、どこからどう見ても納得していない様子だったので、少しでも目を離せば恐らく、また再開するのだろう。後始末に支障が出ないなら、別に続けてもらっていても良いんだけどね。
そんなわけで、一旦は大人しくなった二人に、レオンは改めて言う。
「カミラ。お前には、この勇者一行を拘留しておく部屋の選定、及び内装の調整を頼みたい」
「言うまでもないけど、多少雑でも問題ないわよ」
あたしたちの言葉に、カミラは深く頷いた。
「承りました。すぐに取り掛かります」
一つ礼をして踵を返した彼女の後ろ姿を眺めつつ、レオンからの、もの言いたげな視線は無視しておく。
大方、捕虜は丁重に扱わなければとか、送り返すときに発生する交渉の際に、待遇について尋ねられたとしても対処できるようにとか、そんなことを考えているんだろう。
あたしとしては、生かして帰す時点で十分譲歩していると思うけど。
魔族にとって戦いの勝敗は、生きるか死ぬかしか存在しない。ゆえに、敗者を拘留する必要がない、という説明をしたのはレオンなのだ。
その上で敗者を生かして牢にも入れず──これに関しては牢が存在しないってだけではあるのだけど──、国に帰してやるのだから、文句を言われる筋合いはない。
レオンは何か言いたげだったものの、少しして小さくため息を吐いてデクスターの方を向いた。
あたしに言葉をかけるのは諦めたか、後回しにすることにしたらしい。
「デクスター、お前は用意ができた部屋から順にこいつらを運び込んでくれ。終わったら執務室に来い。作業は先に始めている」
「かしこまりました。しかし、よろしいのですか? 恋を成就させた直後の仕事ほど、捗らないものもそうないと思うのですが」
ちら、とあたしに視線を向けて彼が発した言葉に、不覚にも頬へ熱が灯った。
言われてみればあたしたちは、想いを通じ合わせたばかりの恋人同士なわけで──いや、恋人になろうとはお互い言ってないわね!?
でも、両想いなことに違いはないわけだし、恋人ってことで良いはずだ。多分。
カーティスたちとやり合ったり、それが終わったかと思えばカミラとデクスターがやり合いを始めたりと、大きな出来事が立て続けに起きたせいで、早くも印象が薄れていた。
しかし、両想い。両想いか。
月並みだけど……すごく、良いわね。
稚拙な言葉でしか表現できないけれど、浮かれているのだから大目に見てほしい。
両想いになって早々、山積みのやるべきことを片付けなければならないという不運に見舞われてさえいなければ、もっと良かったのだが。




