第七十五話 聖女は二人と言葉を交わす
確かに、あたしとの会話によって、自身の死以外の解決方法を探ることにしてくれたのだから、あたしがついていくことは許されなくとも、レオンが一人で戦う理由はあの段階で既になくなっていた。
カミラとデクスターの二人の魔力からして、戦闘に参加してくれたとすれば、十分な戦力になったことだろう。相手からの攻撃への対処は、あたしが結界をかけることで実現できるし──うん?
「ねえ、アナタたち程の魔力の持ち主が近くにいるのに、あたしたちが気づかないなんて有り得ないと思うんだけど。それに、あたしがレオンと一緒に戦うからって、アナタたちが出てこないでいる理由にはならないわよね?」
あたしの言葉に、カミラは顔を引き攣らせ、一方でデクスターは笑みを崩すことなく飄々とした態度のままでいた。
「おっしゃる通りです。ただ、貴女の能力が如何ほどかを見てみたくなってしまいまして……何かあればすぐに駆けつけるつもりでしたが、想像以上に呆気なく制圧が終わったものですから、何もできぬまま参上することになってしまいました」
要するに、高みの見物をしていたかった、と。彼らしく、良い度胸をしている。恐らく巻き込まれたであろうカミラには、同情を禁じ得ない。
ま、蓋を開けてみれば、カーティスはあたしがレオンと寄り添っていることにひどく動揺し、実力の半分も出せぬままに勝敗は決したわけだけど。
彼が冷静な状態であれば、戦いはずっと厳しいものになっていただろうから、あたしとしてはあれで良かったと思っている。
デクスターはあたしの全力を見たかったみたいだけど……残念だったわね。
以降、あたしが攻撃のための魔法を全力で使わなければならない機会なんてそうそう起こりえないだろうし、わざわざ披露してやるつもりもないので、彼がその好奇心を満たせるのはいつになることやら。
「理由は分かったわ。魔力の方はどうしたの?」
あたしが知らなかっただけで、魔界には自身の魔力を誤魔化すことができるような魔法でもあるのだろうかと思ったけど、事は単純だった。
「陛下とエレノア様が、わたしたちの魔力を感知されなかったのは、こちらをお借りしていたからです」
その言葉と共に、カミラは鉱石の欠片のようなものを差し出した。あたしの腕輪、及び現在カーティスに嵌められている手錠と同じ色と質感のものだ。
なるほど、魔封じの魔石を敢えて身につけていたのか。用意周到だ。
納得して、うんうんと頷いたあたしと対照的に、レオンは苦々しい表情で口を開く。




