第七十三話 聖女は勇者一行の処遇に悩む
ではカーティスのやつは、かつてレオンを殺すつもりで装着させた魔道具──こちらには危険はないのだけど──が、自分にも付けられたことを悟ってここまで怯えているというのか。
因果応報という言葉がここまで似合う状況もそうそうない。応報と呼ぶには、手心を加えられすぎている気もするが。
なお、当の本人はひとしきり怯えた後に勝手に気絶した。光魔法で調べてみたところ、恐怖と緊張が極限まで高まった結果、意識が落ちただけだと判明したので、放置している。
責任を取ってもらう、という言葉の通り、殺す気はないらしいレオンが少し慌てたので検査しただけであって、あたしはどうでも良かったんだけど。
とはいえ、ずっとここに転がしておくのも邪魔だ。
カーティスに、結界の中に閉じ込めたままの神官と魔導士……あと、レオンが影に放り込んでいた結界師もね。彼らの場所を移さなければ。
「レオン、この三人はどうするの? いずれ送り返すにせよ、一旦身柄は拘束しておくのよね?」
「ああ、適当な部屋を宛がおうと思う。長い間使っていない場所が多いから、内装を整える必要があるが」
部屋? 攻め込んできた相手への待遇にしては、やけに丁寧ね。
浮かんだ疑問を、そのまま口にする。
「牢はないの?」
「ない。魔族にとって戦いの勝敗は、生きるか死ぬかしか存在しない。だから通常、敗者を拘留する必要がないんだ」
なるほど、分かりやすい。相手を閉じ込めるということ自体、ほとんど起こりえないのね。
ということはやはり、部屋の準備ができるまでは、この状態を維持しておく必要があるというわけだ。
せっかく邪魔者を片付けたというのに、まだ二人きりの時間が取れないのは少々、いやかなり不満ではあるけれど。
そんな考えが表情に出ていたのか、レオンは眉を僅かに下げて口を開く。
「手数をかけてすまない」
「気にしないで、アナタが悪いんじゃないもの。それはそうと、どれくらいかかりそう?」
「避難済みの部下へは城へ戻るよう、伝令を送る。だが正直、いつ戻ってくるかは……」
まあ、時間はかかるわよね。でも、レオンと引き離されていた三年間と比べれば、これくらい誤差よ誤差。
そう自分に言い聞かせた、そのとき。
「大変お待たせいたしました」
聞きなれた声が、耳に飛び込んできた。目を見開いて振り返れば、そこにはカミラの姿があった。
広間の奥へ続く廊下のドアが開いているので、どうやらそこから入ってきたらしい。
彼女に声をかけようとしたあたしはしかし、その背後にいるもう一人の存在に気づく。
「ただ今戻りました」
もう一人ことデクスターは、そんな言葉と共に恭しい礼を披露してみせた。




