第六十五話 聖女は魔法を披露する
あたしの言葉に、レオンは目を大きく見開いた。
「まさか、一緒に来るつもりか」
「ええ。あたし、みすみすアナタを死なせに行かせるような人間に見える?」
「そうじゃない、危険だと言っているんだ」
珍しく、焦りを見せて説得にかかる彼に、あたしは唇を尖らせる。
そりゃ、危険に決まっているけれど、あたしだって考えなしにああ言ったわけじゃない。
「それはアナタも同じでしょ? あたしがいれば致命傷だって治癒できるし、相当強力な結界だって張れるわ。そりゃ、攻撃魔法の威力はアナタにかないっこないだろうけど、」
「待ってくれ、今何と言った?」
困惑の表情を浮かべる彼に、あたしも首をかしげた。
「だから、光魔法を使えば致命傷だって治癒できて──」
「その後だ。俺の聞き間違いでなければ、攻撃魔法を使えるような口ぶりだったが」
それなら確かに言ったので、頷いて肯定を示す。
彼の顔に戸惑いの色が増すのを見て初めて、あたしはその理由に思い至った。
「そういえば、言ってなかったわね。アナタがいなくなってから新しく学んだ魔法は、探知魔法だけじゃないのよ。教本が手に入るものは全部かじったわ。いつ、何が必要になるか分かったものじゃなかったから」
そこまで言って、ふと思う。
──これ、全部中途半端なだけだって思われるんじゃないかしら。
それは困る。だけど、言葉だけならどうだって言えるし……待って、そういえば今、腕輪は外れた後よね。
「百聞は一見に如かずよね、見て」
窓を開け放った後、手のひらに魔力を集中させる。
久しぶりだから、鈍ってないか心配だったけど……問題なさそうね。
ある程度の魔力がたまったところで、それを思いっきり前へと放つ。直線状に飛んで行った炎の塊はやがて、離宮を囲う結界にぶつかり、派手な音を立てて爆発した。
結界はどうやら、あたしの炎による衝撃を吸収することには成功したらしい。だけど直撃した部分にはヒビが入っているから、多分もうニ、三発ほど攻撃すれば壊れるだろう。
せっかく張ってもらったものを破壊するのは忍びないけど……まあ、もう使わないだろうし、良いわよね。
「どう? この程度じゃ役不足?」
振り返って、そう問いかければ、呆けたように固まるレオンと目が合った。
彼は何度か瞬きをした後、口元をひくつかせながら言う。
「いや、十分だ。それにしても──よくもまあ、鍛えたものだな」
感心しているんだか呆れているんだか分からないけど、褒め言葉として受け取っておこう。
得意げに笑ってみせれば、彼も柔らかな笑みを返してくれた。




