第五十話 聖女は二度目のお茶会を開く
そんなわけであたしは、二度目のお茶会を開くことにした。前回同様カミラに託した招待状は、彼女とデクスターの予想通り、無事受け取ってもらえたらしい。
せっかくなら、彼好みのお茶とお菓子を用意したいところだけど、残念ながら、レオンの嗜好は分からない。何だったら、彼自身把握していないはずだ。
三年前までの彼は、だけど。
届けられた食事を粛々と食べる、ということしかできなかったのだから、当時のレオンに好き嫌いができるわけもない。
──そういえば、あたしがこっそり神殿から持ち出したお菓子は、美味しそうに食べていた気がする。ただ、持っていったものは日によって違っていたし、共通点も特になかったはずだ。
それに、味覚が変わって甘いものが苦手になった可能性だってある。
前のお茶会では普通に食べていたけど、取り繕っていた可能性だってないわけじゃないし……ダメね、一人で悩んでたって解決しそうにないわ。
自分の力での解決を早々に諦めたあたしは、人を頼ることにした。
「カミラ、お茶会に出すお菓子は何が良いと思う? せっかくだから、魔王の好みに合わせたいのよ」
「エレノア様のお作りになるものを除けば、何でも問題ないかと」
「倍の温度で焼いても、半分の時間で完成するわけじゃないってことはもう理解してるわよ」
あたしの返答にしかし、カミラは首を横に振った。そしてにこり、と笑って言う。
「それ以前の問題ですから」
何よ、それ以前の問題って。孤児院にいたころは、料理もそれなりにしていたのだけど。
……いや、よくよく考えてみれば、魔法で火を付けた後はいつも決まって、他の仕事をするよう呼ばれていた気もする。
あれはもしかしなくても、あたしを厨房から遠ざけようとしていたのではないか。
数年越しに気づいてしまった事実に、あたしは頭を抱えた。
「……分かった。お茶とお菓子の手配は任せるわね」
「承りました」
悔しいが、それで意地になるわけにもいくまい。少なくとも今は、彼女に一任しておくのが賢明だろう。
そのうち、ちゃんと料理を勉強して前言撤回させてみせるんだから!
胸の内で、そう固く決意する。
それはそれとして、当初の目的を忘れたわけではない。
「ところで、本当に何でもいいの? 好みの一つや二つ、あったりしないわけ?」
あたしの問いに、彼女は少し思案するそぶりを見せた後、ゆっくり口を開いた。
「魔界に来たばかりの頃から陛下のことを存じておりますけれど、あの方が好き嫌いを口にされたことは、わたしの記憶では一度もありません」
「……そう」
寂しさと安堵がないまぜになったような思いが、胸の内に広がる。
それをひっそりと飲み込んで、あたしは何でもないように頷いてみせた。




