第四十一話 聖女はお茶会を開く
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「こんなものかしらね」
テーブルには真っ白なクロスを敷いたし、ティーポットからは最適なタイミングで茶葉を抜いた後だ。
お茶が冷めないように、水魔法と炎魔法の力を宿した魔石を組み合わせた工夫も施してある。
その昔に存在したという、大気の中にある水滴の温度を一気に上げる、なんて戦い方をする魔法使いの話を知ってから、こんな応用方法もあるのではないかと思っていたのだ。今のところ戦闘を行う予定はないし、魔法も封じられているので、オリジナルを実践するつもりはないけど。
お茶菓子は、あたしが焼いたクッキー──を出せれば良かったのだが、盛大に焦げたのでカミラに作ってもらったものを用意してある。
倍の温度で焼けば半分の時間で焼きあがる、という理論はどうやら、クッキー種には通じないらしい。
苦い思い出を反芻していれば、コンコンと控えめなノック音が聞こえた。
慌ててそちらへ駆け寄り、扉を開きながら口を開く。
「いらっしゃい! ほら、早く入って」
あたしの言葉に、相変わらず仮面を被っているレオンは、ゆっくりと部屋へ足を踏み入れた。
彼を椅子へ座ったのを見てから、ティーポット同様保温しておいたティーカップにお茶を注ぐ。可愛らしいが、見覚えのない花の絵付けがされたそれは、魔界で──正確に言えば、魔界でお茶を飲む習慣のある者たちにとって──人気の品物らしい。
ちなみにこの花は図鑑で調べたところ、猛毒があるらしい。見かけたら注意しなければ。
葉っぱにも微弱な毒性を含むものの、これを原料にしたお茶もあるらしい。カミラ曰く、痺れが癖になるとのことだ。
とはいえあたしは人間なので、試さないように言われている。ゆえに、この場に用意したお茶は魔界の外のものだ。カミラは何も言わなかったけど、多分レオンがわざわざ調達してくれたんだと思う。
角砂糖を一つ、お茶に溶かしてかき混ぜた後、カップに口を付ける。美味しい。
ソーサーにカップを戻し、クッキーをつまみつつちらりとレオンの方を覗く。カップを傾けているところだった彼は、あたしの視線を察してか、気まずそうに明後日の方向を向く。
どこか見覚えのあるその仕草に、笑みがこぼれそうになるのを何とかこらえる。
そうして少し経った後、彼はおそるおそる、といった風に口火を切った。
「……招待に、感謝する。しかし何のために俺を呼んだのか、教えてくれないか」
そういえば最初の挨拶以外、なんにも喋ってなかったわね。失念してた。
……昔、彼といるときは沈黙なんて気まずくも何ともなかったし、その空気が心地よくすらあったから。
きっと、無意識にあの頃の空気と重ねていたのだろう。今の彼は静寂を妙に捉えていたあたり、あたしと同じ気持ちじゃあないんだろうけど。
そのことに内心肩を落としながら、あたしはにこりと笑って言う。




