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第三話 聖女は国王一家を敵認定する

 ──ヘーゼル様曰く。

 

 なんでもこの国には、聖女が誕生した際、王族に嫁ぐという風習があるらしい。初耳。

 その理由は、その能力上狙われやすい聖女を保護するためだとかなんとか説明されたけど……絶対建前でしょうが。

 

 大方、王家またはそれに準ずる高貴な家系から聖女を輩出するためなんだろう。

 魔力量も魔法の適性も、遺伝することが多いからだ。

 

 そのため、位が高ければ高いほど、豊富な魔力と多種多様な魔法の適性を持つことが多い。

 

 何この永久機関。

 童話の中の、綺麗な聖女様と麗しい王子様の恋物語の裏事情なんか知りたくなかったわあ……と、遠い目をしても仕方がない。

 

 どんなに現実逃避をしたって、あたしが光魔法に目覚めたことは事実なのだ。

 面倒臭い事情だのなんだのが色々付属しているにしても、衣食住に困ることはなく、人を癒すことで食い扶持を稼ぐことが無条件でできる生活は、平民の孤児には過ぎたるもの。

 それに、王族と結婚するにしても、それがあたしを見下してくる嫌なやつだとは限らないではないか。

 

 一生食いっぱぐれない仕事に加え、物語に出てくるような王子様──かもしれない旦那もくっついてくると考えれば、得しかない状況だ。うん。

 

 くっついてきた不運よりも、幸運の方に目を向けるのだ!

 

 

 

 

 

 ──そんなことを考えていた時期が、あたしにもありました。

 

「明後日の方向を向いて、どうしたんだい?エラ。王太子であるこの僕を差し置いて、考え事?」

 

 この、にこにこと麗しい笑みを浮かべながら、イラつく言い回しであたしの気を引こうとしているいけすかない青年が、あたしが引き合わせれた王子サマって……見合い相手がこんなハズレくじだとか、聞いてない!

 

 神殿に拉致された翌日。あたしはうんと綺麗に着飾られて、馬車に乗せられた。

 どこに行くのかと思っていれば、行き先はまさかの王宮。

 

 昨日の今日で!?と困惑するあたしをよそに、気がついたら王太子との見合いの席に着席していた。

 

 そこに現れたのは、キラキラしい金髪と青い瞳を持った美青年だった。

 柔和な笑みを浮かべてこちらに近づいて来る彼はしかし、次の瞬間とんでもない毒を吐いてきた。

 

「君が平民聖女のエレノアか……貧相だけど、顔立ちは悪くないね。はじめまして、王太子のカーティスだ。将来の君の夫になる予定だよ」

 

「……はじめまして、第一王子殿下。エレノアです」

 

 ──悪ガキを相手に磨き上げられた右ストレートを我慢し、お淑やかに挨拶を返したあたしは、賞賛されるべきだと思う。本当に。

 というか、貴方は立太子する前だし、そもそも婚約も何も決まってませんよね!?

 

「息子と仲良くしてやってね、エレノアさん」

 

 にこにこと笑うのは、王妃殿下だ。

 あれ、謝罪なし?息子の失礼を嗜めるとかしないの?

 

「儂からも頼んだぞ」

 

 王様?貴方もですか?

 

 周りの反応を見ても、特にこの状況に異常さを感じている者はいないようだ。

 そのことに一種の恐怖を感じながらも、とりあえずぺこりと頭を下げて了承の意を示しておく。

 

 それから後の会話は、よく覚えていない。

 とにかく、権力者(おっかない三人)を刺激しないよう、慎重に受け答えを重ねていたつもりだ。

 

 ──その結果。

 

「エレノアちゃん、この茶会の日じゃなくても、王宮にはいつでも来てくれて構わないわ。カーティス、その時はお相手してあげるのよ」

 

「はい、母上」

 

「ではまた来週、お待ちしているわね」

 

 週に一度、親睦を深めるという名目で、カーティスと茶会を行うことが決定していた。

 それ以外でも、いつでも王宮に来ても良いとも言われた。

 

 ……は?

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