第二十三話 聖女はメイドを得る
どんなことが起ころうと、朝はいつだってやって来る。それは魔界だって同じことだ。
ベッドのすぐそばに位置する小窓から、朝日が穏やかに差し込んでくる。その光に、あたしはぼんやりと意識を覚醒させた。
「……どこよ、ここ」
知らない天井が目に入ったことに一瞬動揺して、しかし程なくして、昨日起きたことを思い出す。
昨日は確か、カーティスからプロポーズされる直前に、レオンに攫われたのよね……その後襲われるのかと思ったらそういうわけでもなかったし。
その後の記憶がないあたり、疲労と多すぎる情報を捌ききれずに眠ってしまったのだろう。
確か、この部屋に着いて時点で夕方にもなってなかったと思うんだけど、我ながら明らかに寝すぎている。まあ、それは一旦置いておいて。
結局、レオンは何がしたいわけ? どうして仮面なんか被ってたの? 闇魔法を使ってたし、魔王だって自称してたけど、この三年で何があったのよ……
ベッドの上で悶々と考えていれば、ドアの開く音がした。反射的に視線を向ければ、そこには一人の女性がいる。
白と黒を基調にした、長いスカートのメイド服を着込んだ彼女の頭部からは、二本の羊の角が生えていた。確か、魔族の中にそんな特徴を持つ種族がいたはずだ。
何と言うべきか判断しかねて、声をかけられずにいたあたしに向かって、彼女は一礼して口を開く。
「おはようございます、エレノア様。魔王陛下より、あなた様の身の回りのお世話を申し付かっております、カミラと申します」
「……ご丁寧に、どうも」
昨日の情報も整理しきれぬうちに、新しい人物が登場してしまった。
とりあえず、レオンはあたしをないがしろにする気はないらしい。元から、その点については別段疑っていなかったけど。
「疑問に思われていらっしゃる点が、多々あるかと思います。一つずつ、説明させていただきますね。まずは──」
ぐうぅ、きゅるる。
……穴があったら入りたい。というか、今すぐ穴を掘りに行きたい。
曲がりなりにも、かどわかされた翌朝なんだけど。呑気に腹の虫が鳴るとは、つくづくあたしの神経は図太くできているらしい。
昨日は朝から忙しく、ほとんど何も食べないまま儀式に臨んだのだし、攫われて以降は寝ていたのだから、腹が空くのは当然のことではある。当然のことではあるけども。
「朝食の準備はできておりますので、どうぞお召し上がりください」
「……ありがとう」
顔色一つ変えることなく、カミラはそう提案してくれた。
前言を少し訂正しよう。レオンは、あたしによくできたメイドを付けてくれたらしい。




