第一話 少女は聖女に選ばれる
「エラー! 洗濯物、早めに取り込んでおいてねー」
「はーい、シスター」
あたし、エラことエレノアは、孤児だ。
どんな事情で孤児院に来たのかは知らない。物心ついた頃にはここにいた。
孤児たちを売り飛ばしたり、奴隷のように働かせるような孤児院もあるそうだけど、うちは裕福でこそないが真っ当な運営をしていると思う。
成人である十八になったら、否が応でもここを出ていく必要があるけれど、それまでにある程度の教育をしてもらえるし、職も斡旋してもらえるしね。
「エレノア、洗濯物は良いから、着替えておいで。そろそろ中央から神官様がいらっしゃる時間なんだから」
「もうそんな時間!? わかった、ありがとう!」
別のシスターからそう声をかけられたので、急いで自室へと向かう。
今日は、魔力の測定日なのだ。
あたしたちは皆、魔力を持っている。
幼い頃はなかなか安定しないが、だいたい十五になれば落ち着くらしい。
そのため国民は皆、身分を問わず十五になったら神官による魔力の測定を義務付けられているのだ。
当然、魔力量や魔法の質が高いのは貴族たちだ。
けれど庶民でも、何らかの魔法の適性とそれなりの魔力量があれば、魔法を活かせる職──つまり、通常より稼げる仕事に就きやすくなるため、この魔力測定はあたしたちにとって人生を決める儀式と言っても過言じゃあない。
あたしは、割と早い段階から簡単な浄化くらいなら扱えたから、庶民にしては魔力量が多い方だと思う。魔力は多すぎると制御に困るらしいけど、基本的に多いほど安定して使えるらしいから。
適性は水あたり、かな。
料理のときに使うような小さな火魔法や、色々と便利だった浄化魔法ばかり使っていたから、よくわからないけど。
まあ、これからはっきりすることだ。
少し緊張しながらも、あたしは街の子供たちに混ざって列になった。
測定に使われる透明に輝く魔石が、手をかざされるたびに違った光り方をしている。
強い橙色の光が石の中に灯ったときは、火魔法の適性が。色が変わらぬまま、石の内部が陽炎のように揺れて見えたときは、若干弱めの風魔法の適性がある、という風に、測定は手早くかつ順調に進んでいた。
さほど待たされることもなく、あたしの番になった。
──できるだけ役に立ちそうな適性でありますように。
……この願いが、天へと届いてしまったのかもしれない。
あたしが魔石に手をかざした、刹那。
視界が一瞬にして、白一色の世界に変貌した。
ただ真っ白というわけではなく、キラキラと輝いていたから、ひどく強い光があたしを包んでいるのだと気づいた。
目が痛くなるようなこともない、むしろ見ていると落ち着くような、そんな光だった。
少しすると、景色はゆっくりと元に戻って行った。
色が戻ってきた世界であたしが最初に見たものは、あの魔石だった。
──その魔石は今、純白の光で教会を照らしている。
皆、唖然としていた。
もちろんあたしも。
何が起こったのか、把握しきれていないながらも、あたしが何かとんでもない魔法の適性を持っているのであろうということは理解していた。
最初に動いたのは、老齢に見える神官様だった。
彼はまっすぐあたしの瞳を見て、すっと右手を差し出した。
自分よりもずっと上の立場のお方に握手を求められて混乱するあたしに、神官様は告げた。
「お会いできて光栄です、聖女殿。神殿は心より、貴女を歓迎いたします」




