↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

第十八話 聖女は無力さに歯嚙みする

 一睡もできないまま、無情にも今日はやってきた。それは、一時間後の私は、王太子殿下の婚約者になっていることと同義だ。


 今のあたしは、控えの間で、神官たち及び王宮の侍女たちから、ゴテゴテと飾り付けられている真っ最中である。

 服は重いし化粧はしつこいしで、式典が始まる前から疲労が着々と蓄積していくのを感じる。


 まあ、疲労自体は構わないのだ。

 問題は、カーティスからプロポーズされるであろうことと、あたしはそれを受けざるを得ないということなので。


 嫌で嫌で仕方がないとはいえ、どうすることもできなかった結果が、今だ。


 あたしにできることは、何もない。


 ふと、かつて孤児院で読んだ本の内容を思い出した。

 出だしも結論も忘れてしまったけれど、無理やり結ばされた婚約に、泣き暮らすお姫様が登場したことは覚えている。

 当時は泣いてるだけじゃ何も変わらないのに、なんて思ったものだけど、確かにこれは泣きたくもなる。


 そんなことを考えている間に、数時間にも渡った支度は終わったらしい。

 促されるまま、のろのろと足を動かし、会場へと向かう。


 何とはなしに空を見上げれば、憎たらしいくらいに青く晴れ渡っていた。

 他人の目からみたそれは、あたしとカーティスを祝福しているかのように映っているのでは、なんてことに思い至り、密かにため息を吐いた。

 八つ当たりだということは百も承知の上で、空を小さく睨む。

 そのとき、視界に一瞬、ヒビのようなものが映った気がした。

 

 ──あれ?


 王宮の周りには、一流の魔術師による結界が張られている。

 この国で最も強固なそれに、綻びが生じるなんてこと、あり得るわけがない。

 

 単なる勘違いだと判断して、歩みを進める。

 

 しばらく歩いた末に、あたしたち一行は、大きな扉の前に着いた。

 この先はバルコニーになっていて、段取り通りに進んでいれば、事前の儀式を終えて立太子したカーティスが待機している。

 この儀式は、一部の選ばれた人間の立海のもと行われる、閉じられたものだ。

 しかし、あたしが祝福をかける瞬間は、一般公開されることになっている。

 おそらく、その後のプロポーズを想定してのものだ。


 王太子と聖女の婚約なんてビッグイベント、公開しない手はないだろう。

 各方面が潤うのは目に見えている。こちらとしてはいい迷惑という他ないけれど。


 外には既に多くの人が集まっているらしく、分厚い扉越しにもその喧騒が聞こえてくる。

 周りに聞こえないよう、ひっそりとため息を吐いた。前を向いたあたしの視界に、目の前の扉がゆっくりと開いてゆくのが映る。

 隣に配置された神官に促され、あたしはのろのろと足を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。