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元メイド長

「出来るわけないわ。こんな急なこと、わたしに出来るわけがない」

「やってもらわねば困る。きみがメイド長なんだ。メイドたちを采配してもらわねば、パーティーが台無しになる」

「ですから、無理なのです」


 口論は、建物の外にまで響き渡っている。


 執事長とシドニーの声だわ。


 そこに、駆けこんだ。


「えっ、ヤヨイ?その恰好は?」


 執事長だけでなく、その場にいる全員の目が点になっている。


 それはそうよね。こんなドレスを着用しているんですもの。


「シドニーさん、大丈夫です。経験豊富なあなたなら、うまくのりきれます。手伝いますから、とにかくこのピンチを全員で力を合わせて乗り切りましょう」

「ヤヨイ……」

「さあ、みなさん。みなさんは、王宮専属のメイドとして経験を積まれているのです。そのスキルは相当なものです。協力し合えば、これくらいのパーティーはどうってことはありません。とにかく、動きましょう」

「はい」


 そして、わたしたちの奮闘がはじまった。



 嵐は、かならず去るもの。


 今回もそうである。


 メイド全員の力のお蔭で、なんとかのりきれた。まだパーティーは終わってはいないけれど、それほど飲み物を欲しがったり軽食を依頼してきたりということはないでしょう。


「あの、ヤヨイ……」


 シドニーが近づいてきた。彼女を見た途端、すごいことを思いだしてしまった。


「やだっ!忘れていたわ。ごめんなさい。わたし、行かなきゃ」


 驚いている彼女の脇をすり抜け、今度は宮殿内の大広間へと走り出した。


 パーティーのゲストたちは、談笑している。そんな中、大広間の奥にある豪華なテーブル席に、国王陛下がいらっしゃるのが見えた。


 なんてこと。王太子殿下に恥をかかせてしまった。


 恐る恐る近づいてゆくと、まずこちらを向いている国王陛下がお気づきになられた。


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