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悪役(の僕)なら法に触れない限り怠慢は働きません故(黒笑)  作者: 旧プランクトン改めベントス
パンケーキ~層を重ねる度に増える贖罪(食材)~
12/71

11 男児に精神的虐待を加えたとして19歳の男が…

 「おいっ!そこのお前たちっ!」

 「待つのだっ!」

 「そうだっ、待てっ!」


 その時、前方の真正面から3人の犬人の…ショタが現れた。バーガンディ・ネイビー・グレーと服装の色は違ってるけど黒紫色のケモ耳と顔がよく似ているから3つ子ちゃんだろう。


 「か、可愛い…!」


 「可愛くなんかないんだからなっ!」

 「おっ、お姉さんの方が可愛いんだからなっ…って、そうじゃないんだからなっ!」

 「そうなのだっ!そうなのりゃっ…!…そうなのだっ!」


 あああ…可愛い…!婚約破棄とか妹の裏切りとかで荒んだ心が癒されていく。


 「そうなのりゃ、って何です、『りゃ』って?」

 「あ、アルバン!」


 この悪魔め!可愛いショタ…いや、子供相手に!

 多分これは演出じゃなくてガチで噛んじゃったやつだよ。


 「違うのだっ!あれは間違えたのだっ!」


 子供故にミスしても気にしないフリをしたり、演出だとしてキャラを貫いたりして上手く立ち回れない事を良い事に、アルバンが続ける。


 「りゃ、ですってよ、お嬢様。そうなのりゃ、ですってww」

 「ち、違うのだっ!忘れろっ!」


 「アルバン、大人気ないですよ。」

 「しかしながら『大人気ある』お嬢様、彼らは種族からするに年齢ではお嬢様とそう変わらないですよ。」


 「そうだぞっ!俺達9歳だからなっ!」


 1人がえっへんと胸を張る。私はその2倍あるんですが。


 「か、可愛い…!」

 「だからっ!可愛くないんだからなっ!」


 「ふふふっ、お名前何て言うんですか?」


 私が聞くと、3人はそろって胸を張った。


 「ケイだぞっ!」

 「ルベだぞっ!」


 「ロスなの」  「りゃっ!」

 おい、アルバンさん?


 「びぇぇ~っ!」


 あ~あ、泣いちゃった。


 「あ~…あ~…」

 ロス君の頭を撫でながらアルバンをじとりと睨むと、彼は涼しい顔をしていた。


 ダイブするって時点でうすうす感じてたけどアルバンって、殿下の婚約破棄によって今まで徹夜同然で行ってきた執務がおじゃんになったイライラを発散しにダンジョン予約したんじゃ…。


 「アルバン、せめて相手を考えましょう。」


 ストレス発散なら、強い相手…それこそ上層のボスに向かって強力な攻撃をぶちかませば良いでしょうが。アルバンは実力的にそれが出来るし。


 それなのに、よりによってステージぶち壊すわ、子供相手に精神攻撃するわ、とにかく性格悪すぎる。ポッド式だからそこそこ歴史が長いダンジョンとはいえ、指折りの印象最悪な客だろう。


 「ぐすっ、ぐすっ…」

 「よしよし、あれはお兄ちゃんが悪かったね。酷すぎるよね。」



 (数分後)



 頭や背中を撫で続けてロス君が落ち着いたので離れた。


 とりあえずこの子達を倒さないとね、と思ったところでまたもアルバンはやらかしてくれた。


 「お嬢様、ロスがお気に召されたのならば上2人を抹殺するのでロスだけ拉致いたしましょうか?」

 「アルバン?」


 不穏過ぎるわ。


 「ああ、大丈夫です。泣き声がうるさかったらサルグツワ噛ませますんで。大丈夫です、1人いなくなった所でバレやしませんよ。」


 2人の証言で普通にバレるよ?というか、キャスト側も仮想体を使ってるから拉致は無理だよ?


 「ロス…ラスボスを滅した後でゆっくり血祭にあげますね。お嬢様のご指名です。」

 「指名してません!やめてください!」


 ロス君は泣くのをギリ踏みとどまった。うん、偉いよ。さすがダンジョンのキャスト。


 「ろっ、ロスをいじめたらダメだぞっ!」

 「ロス、隠れるのだっ!やいっ、貴様!俺達が相手だっ!」


 ケイ君とルベ君が両手を広げて私達を通せんぼする。


 「はーいはい。」

 アルバンは2人をひょいと軽くまたいで、後ろで泣いていたロス君の襟首をつかみ上げた。


 「やめるのだっ!」

 「ふざけるなっ!」


 「悔しかったら身長を伸ばしては?」

 アルバン、ロス君を振り子みたいに振らないの。


 「アルバン、そろそろ弱い者いじめはやめましょう。」

 「よっ、弱くなんかないんだからなっ!」


 あ。ごめん、キャストだった事を一瞬忘れてた。


 「そうだっ、ロスが取られたんだったらこっちだって考えがあるんだからなっ!」


 2人がたったった、と私に突っ込んできた。慌てて両脇で止める。


 「どうだっ!」

 「ロスを返せば考えてやっても良いぞっ!」


 2人がアルバンに対してドヤ顔をしている。


 「え、何が?」

 アルバンはぽかんとしている。

 分かる、だってケイ君とルベ君は私の両脇に抱えられてるだけだもの。でもね!でもっ!…その反応はダメだよ、アルバン。


 「人質に取ってやったんだぞっ!」

 「え、それで?」

 「怖いだろうっ?どうなっても良いのかっ?」


 2人は全く気付いていない様子だ。あっ…でも分かる。


 鼻の奥が熱くなってきて、上唇に何かがどろどろしている。


 「お、お嬢様?!」

 扇に血が付く。鼻血…。


 「お嬢様ぁっ!」

 「ははっ、これが俺達の力だっ!」

 「どうだ、参ったか!」


 アルバンはロス君を俵持ちにして、懐からハンカチを出した。持ち物もスキャンしてるんですね。


 「ど、どうしたのだっ?」

 「お嬢様、失礼します。」


 アルバンが真顔になって私に近づき、鼻を押さえてくれた。


 「アルバン、1人で出来ますよ。」

 「ケルベロス幼体の事よりこっちが先です。」

 「ありがとうございます…」


 やっぱりこの3人、ケルベロスの幼体だったか。

 幼体は人間の形をとるのに慣れていない状態だから、ロス君のように噛んでしまったりケイ君とルベ君のように力が弱かったりする。つまる所この子達は中ボスか小ボス扱いなんだろう。


 「アルバン、さすがにロス君は降ろしてあげてください。」

 「このまま捕まったフリしてフロアボスの所まで行かないのですか?」

 「なるほど!」

 それは良いかも。


 ラスボスと一緒に倒すっていうのは(倫理的に)アウトだけど、フロアボスと一緒に倒すのならダンジョン攻略にはよくある戦略だから問題ない。


 「ねえ、ケイ君。」

 「何だっ?」


 「3人は…ここの小ボス?中ボス?」

 「中ボスなんだぞっ!」


 なるほど…じゃあ、ここはB級ダンジョンだから人型から戻って本来の力を100%発揮できる姿で戦うのだろう。幼体とは言っても、正体はケルベロス。慣れない人型を取ろうとするから弱いのであって、本体なら強さは中ボスとして十分なはずだ。


 「えっと…ケルベロスの姿にはならないのですか?」

 「うーんと、俺達の仕事は、フロアボスのフォンテ様の所まで強い者を案内する事だからなっ!」

 「フォンテ様のご指示が無ければ元の姿には戻れないんだぞっ!」


 「なるほど、フロアボスの方の従属という事ですか。」


 私の言葉にアルバンがうなずいた。


 「…第1層から強いですね。さすがB級ダンジョン。」


 「お姉さん、フォンテ様はものすごく強いんだぞっ!」

 「逃げるなら今の内だぞっ!」


 「s、そう…n、な、n、の!d…だっ!」

 ロス君が慎重に発音をしている。可愛い。


 「お嬢様、あまり興奮なさいますと鼻血が…」

 「そうですね。」


 「くっ、フォンテは…お嬢様のHPをこうやって削る気なんですね?卑怯です!」

 幼体を人型で出すあたり、それも戦略の一つに違いない。


 「でもお嬢様をエスコートすると宣言してしまった手前、業務不履行を訴えられると減給処分となるので、そろそろ参りましょうか。」

 「一言多いですよ。」


 「旦那様とロードの減給の仕方って情状酌量がないですからね。」

 知らないです。というか…。


 「以前に減給された事あるんですか?!」

 「ありますよ。7割ごっそりと。」

 かなり持っていかれましたね。


 「意外ですね、アルバンがやらかすだなんて。」

 外面だけは良いのに。


 「私がライター家に勤め始めた頃、通せんぼというちゃっちい嫌がらせを先輩から受けて『業務に差し支えるのでやめてほしい』と言った所『俺、傭兵出身だから逆らったら殺すぞ』と脅されて身の危険を感じたのでとっさに両腕を折った事をやり過ぎだと叱られました。」

 「…。」


 普通の人だったらそうでもないんだろうけど、アルバンぐらい強いと正当防衛って認められないよね。


 「私はそれ以来、コンプライアンス精神をモットーに生きております。」

 「こんぷらいあんす、って何だ?」

 「ルールをきっちり守るって事ですよ。」


 ルベ君に説明すると、彼はアルバンに「嘘つき!」と言った。


 「はて?私がいつ、嘘を?」


 「ダンジョンを破壊し過ぎたらいけないんだぞっ!ルール違反なんだぞっ!」

 「こんぷらいあんすじゃないんだぞっ!」

 「い~けないんだっ、いけないんだっ!」


 うーんと、それは…。


 「いいえ、違反はしていません。」

 あ~…言い切っちゃう?


 「ルールだぞっ!」


 「ルールには禁止事項として『不必要な破壊行為』が挙げられていますが、どこまでが不必要なのか明らかに定義されていないため、私のした事については許容の範囲内です。」


 3人が首をかしげる。

 「どういう事なんだ?」


 「えっとね…どこまでが破壊し過ぎなのかっていうのがルールに入っていないから、あの風刃は落とし穴を発見するのと敵を倒すために必要でしたって言いきっちゃう事が出来る。だからルール違反じゃないって事かな。」


 「そんなのズルなんだぞっ!」


 そうだね、グレーゾーンのズルだよ。だから「法令遵守」の「遵守」という部分を満たしているかどうかは微妙な所だね。


 「ズルかどうかはフロアボスであるフォンテに聞きます。だから早く連れて行ってください。」

 「むぅ…」


 「ケイがサボってたってフォンテにチクりますよ?」

 「連れてくんだぞっ!」


 子供を脅さないの。

特定の男児に対し執拗に声をかけて精神的苦痛を与えたとして、19歳・会社員の男が現行犯逮捕されました。


その男児と一緒にいた児童によると、男は他の児童への殺害予告とその児童への誘拐をほのめかすような発言もしていた上、ダンジョンの内装の一部を故意に必要以上破壊した容疑がかけられており厳しく事情聴取が行われています。


男は取り調べに対し「コンプライアンス精神がモットーだ、ルールに違反していない」と主張しており、容疑を否認しています。

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