↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役(の僕)なら法に触れない限り怠慢は働きません故(黒笑)  作者: 旧プランクトン改めベントス
パンケーキ~層を重ねる度に増える贖罪(食材)~
13/71

12 被害者の名誉を棄損したとして19歳の男が…

 それから(私を捕まえておくのを放棄した)ケイ君を先頭に、ルベ君とロス君が私とアルバンを(建前では)連行する事になった。


 道中、ロス君に連行されている(※本音:誘拐モードに入っている)アルバンのせいで、途中で出てきたエキストラ(いわばモブ)の方々は姿を現す事も出来なかった。出る前に光の柱になっちゃうんだよなぁ…。


 彼らの頭の中にはもうフロアボスに泣きつく事しかなかったんだろうと分かったのは、第1層の出口が見えた時だった。向こうにうっすらとお屋敷が見えるので、きっとフロアボスを倒したらお屋敷の門が開く仕様なんだろう。


 その時、屋敷の方から狼の群れが走って来て、私達の5メートルほど手前で三角形の隊列を組んで止まった。


 先頭のひと際大きい狼が後ろ足で立ち上がった。

 年を取って力を付けたとかいうタイプだったら第1層に出すには惜しいし、大きさがこれでは足りないはずだ。だからと言って普通の狼にしては大きい…きっと先天的な知能を持った狼の姿を取る種族だ。


 「人狼…ですか。」


 「左様!当ダンジョン第1層フロアボスの【人狼】頭・フォンテだ。アルバンは2度目だが、お初にお目にかかるぞ、アリス殿。」

 「は、初めまして。」


 フロアボスは私達の名前を把握しているのか。

 というかアルバン…懐柔したとか言ってたから女の人だけかなと思ってたら男も…?力でねじ伏せたとか暴れていない事を祈る。


 「フォンテ様ぁっ!」

 「フォンテ様っ、こいつがズルばっかりしてたんだぞっ!」

 「俺に意地悪言ったんだぞっ!」


 ケイ君がフォンテさんに駆け寄る。ルベ君も私の手をぱっと離して続く。


 2人は黒毛の狼の両隣で腰に手を当てた。なるほど、これが虎の威を借りた狐、いや正確には人狼の威を借りた妖犬というやつか…でもショタだから可愛い。


 従属契約(テイム効果)があるとは言え彼らがこんなに懐いているフォンテさんはきっと「ア」から始まる誰かとは違って人徳があるのだろう。

 実際に、「人狼頭」と言ってたしプライドが高い種族である人狼を従えているのだからよっぽど徳を積んでいるに違いない。


 「俺もっ、俺もっ!」

 ちなみにロス君は、「ア」から始まる某人物に小脇に抱えられてじたばたしている。


 「放すのだっ!」


 「フォンテ、ロスを持ち帰りたいのですが、テイクアウトのサービスはありますか?」

 ないでしょ。


 「何を言っているのだ、アルバン。」

 激しく同意。


 というか、堂々とフロアボスに聞くとは完全にナメている。すでにダンジョンの一部を破壊した事について微妙な判定なのに。


 「はー…まったく。アルバンよ、ロスを拉致してどうするつもりだ。ケイ・ルベ・ロスが揃わないと本来の力を発揮できんのだが。」


 「ラストステージまでは可愛がって、ラスボスを殺った後で倒します。」


 「ちょっと、アルバン!」

 あっ…人狼の皆さんが殺気立った。


 「フォンテ様っ、怖いのだっ!」


 ロス君が暴れるが、アルバンは涼しい顔だ。

 「もう…アルバン、怖がらせないでください。」


 「アルバンよ…第1層だからと言って手を抜かずこれまで幾度となく手練れの冒険者たちを退けてきた俺達が全員本気でかかってもお前に敵わん事は分かりきっている。」

 言っちゃって良いの?


 「だが…譲れんものは確かにある!兄弟たちよ!仲間は至高の宝なり!」

 「1人は皆のために!皆は1人のために!」


 フォンテさんの掛け声に合わせて、人狼の皆さんとケイ君とルベ君が言う。


 「私、暑苦しいのは苦手なんですよね。」

 「アルバン、そういう事言っちゃいけません。フォンテさん達の集団行動とか軍隊も驚く程息ぴったりで綺麗だったじゃないですか。」


 「体育会系のノリとか1番きら~い。」

 「うっ…」


 「脳筋の集まりじゃんww」

 「ぐっ…」


 「アルバン!」

 フォンテさん達が精神的なダメージを食らっている。


 「すみません、本当にすみません…」

 「いや…良いんだ、アリス殿。べ、別にアルバンに限らず他の冒険者たちからもアンケートによく書かれる事だし、まっまさか気にしてなどいない。俺達は俺達のやり方を貫く…うん、貫くつもりだ。」


 うわっ、かなり傷ついてるやつだ。


 「お嬢様、ロスを返しても良いですか?」


 「う~…」

 ロス君、武闘派の従属としては絶対にしちゃいけない顔だよ、それ。


 涙目で見上げるとか、地獄の番犬とも名高いケルベロスにあるまじき行動じゃないかな。さすがのフォンテさんも口の端をヒクつかせてる。


 「早く返してあげてください!」


 とは言え可哀想なので、アルバンに放してあげるよう言うと、彼はロス君をフォンテさんに向かって軽く放り投げた。

 フォンテさんはさすが人狼と言った所か、軽く抱き取った。


 「ロス、お前は中ボスとしての威厳を保て。」

 ほ~ら、怒られた。


 「と、言いたい所だが。アルバン相手だったら仕方ない。他の冒険者相手には決してひるむな。」

 「はいっ!」


 ええ~っ?!ここまで言われるなんて…アルバン、予約入れた時に何したんですか。


 「さて、待たせたな。」


 フォンテさんがロス君を降ろして私達に向き直った。すると、後ろにいた人狼達も2本足で立ち上がった。


 人狼は狼と人の姿を使い分ける。


 対人戦…ことに人間または亜人の冒険者を相手にする商売なら人の姿を取った方が喜ばれやすい。つまり、皆さんは戦闘準備に入ったという事だ。


 「兄弟たちよ!我らの戦いに!」

 「勝機あらん事を!」


 さっき、アルバンに対して絶対負けるみたいなメタ発言をしておきながらの覇気ある言葉なので、これは演出だろう。ケルベロスは新入りみたいだけど、人狼部隊は手練れのキャストといったところだろう。


 フォンテさんが右手を握ってその拳を左手に打ち付けたのを合図に、狼たちが人の姿を取った。そこまでは予想出来てたんだけど…。


 「えっ…」


 ウソ…上半身裸に加えて、ズボンも…腰パンっていうの?ぎりぎり攻めてるじゃん。


 見れない…。


 「…お嬢様、いかがなさいました?」

 「どうした、アリス殿?」


 それまで覇気を出してたのに、急に素に戻ったフォンテさんがこっちに来る。やだやだ、怖い!


 「こっ、来ないでください!ズボン上げてください!」


 「…は?」

 フォンテさんが立ち止まる。


 「…。」

 「…。」


 しばらくの沈黙の後、アルバンの高笑いが聴こえた。

 「ショタの次は露出狂とかやめてくださいよ!ww」


 「はあっ?!俺のどこが露出狂なのだ?!アリス殿!俺達は然るべき場所を隠している!」


 「下見の時はこいつフルアーマーだったんですよ、お嬢様!やだ~…お嬢様のような若い女性がいらっしゃると聞いた瞬間に脱ぐとかあり得ませんよ!」


 「えっ、嘘…」

 フォンテさんって誠実そうに見えるのに…やっぱり殿下と言い、フォンテさんと言い、男の人って何か怖い。


 「いや、以前お前と会った時もこの格好だっただろうが!仕事着を変態コスみたいに言うな!アリス殿、違うからな!俺はどの冒険者に対してもこの格好だぞ。アルバン、訂正しろ!」


 アルバンはお腹を抱えて笑っている。アルバン…嘘だったんですね。

 フォンテさんは良い人で良かった…。


 「ごめんなさい、フォンテさん。」


 「う、うむ…アリス殿が謝る事はない。それに、アリス殿が衣装のせいで戦いづらいというのであれば、出来る限り平等にしよう。おい、お前達!」

 「はいっ!」


 「ベルトをへそまで上げるのだ!」

 「はいっ!」


 あっ…何か気を遣ってもらって悪いな。


 「アリス殿…すまないが、上着は…仮想体で作っていなくてな、このままで良いだろうか?」

 「あっ、はい!すみません、何から何まで気を遣っていただいて…」


 「いや、良いんだ。こちらこそ配慮が行き届かずすまないな。」


 フォンテさん、やっぱり優しい人だ。


 「アルバンが言った通り、フォンテさんが優しい方で助かりました。本当にありがとうございます。」


 「いや、平等な戦いにするのは当然の事だ…が、アルバンが俺を優しいと?どこで判断したんだ、アルバン?」


 「いっや~、挨拶代わりに肩脱臼させても怒鳴る事しかしないなんて聖人君子に違いない!」


 「何やってるんですか!フォンテさん、ごめんなさい!」

 そりゃあフォンテさんも怒鳴りますよ。


 「ふぅ…俺は気が短い方なんだが、お前には冷静に言わなければよりいっそうイライラするからな。」


 「そうですね、アルバンには説教が一切通じない上に怒鳴ったら無視しますから。」

 「…アリス殿も大変だな。」


 「…前は他の人に対してはここまでするような人じゃなかったんです。でも、ちょっと…先日色々とありましてやさぐれているんです。本当に迷惑かけてごめんなさい。」


 人狼の皆さんに頭を下げると、ポンと肩に手を置かれた。フォンテさんだった。


 「…俺はこのダンジョンが出来た頃からここを守ってるんだが、アルバンほど煽り倒してくる奴が来たのは初めてだ。」

 デスヨネ…。


 「でも、アリス殿ほど礼儀正しい人間が潜ってきたのも初めてだし、予約時にフロアボス全員に挨拶周りをして連れのために念入りに下見をしていたのもアルバンだけだ。だからな、アリス殿には恐縮しないでほしいし、俺達ダンジョンの職員はキャストも受付も裏方も…全員、精一杯のもてなしをしたいと思っているから安心してほしい。」


 「ほ、本当ですか!」


 「ああ!それにケルベロスはこれが初陣だから戦いではビシバシ鍛えてやってくれ。」

 「えっ…」


 アルバン、とんでもないトラウマをロス君に植え付けてないですか?


 「おっ、お手柔らかじゃなくしてほしいのだっ!」

 「本気でいくのだっ!」


 「悪者めっ!ぼっこぼこにしてやるのだっ!」

 あっ良かった、ロス君はモチベーションにつながってる。


 「私が本気になったら人狼部隊含め瞬殺ですよ?」

 真顔で言わないの。また泣かせちゃうでしょ。


 「アルバン、それはこいつらのためにならんからやめろ。うまい具合に頼む。」

 「はー…3人合体した状態で私達に向けて攻撃して良いですよ。」


 「良いのかっ?」

 「死んじゃうんだぞっ!」


 「俺達の力を見ておくの」  「りゃww」


 「うっ…」

 ロス君、頑張れ!


 「よし、じゃあ決まりだな。ケイ、ルベ、ロス、俺達のために2人の体力を削るイメージでド派手にかませ。」

 「頑張るのだっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。