閑話休題 廃墟にて
そこは見渡す限りの瓦礫の山だった。
瓦礫に混じる色がまばらなセメント状の塊が、塊に押し潰された壊れた扉を思い出させる木片が、こびりついた茶色く変色した布が、そこにかつて建物でもあり、人が住んでいたのではないかと辛うじて思いを馳せる、跡を残している。
ファティマは魔女がいると聞いていた、街だった跡地の様子を、一度目を大きく見開き辺りを見渡すと、静かに膝を地面に着き目を閉じる。
いかばかり、そのようにしていたか。
ファティマの上から氷の塊が降り注いだ。だが、ファティマの体を薄い大きなシャボン玉状の膜が覆い、ファティマの体を守る。
「ずいぶん人間にしては…鼻が利くんだな」
「リゼにちょっかいを出して、泣かせた魔女に一発食らわせないと気が済まないくらい、私は怒っているんです。
依頼を受けた仕事に対して横槍入れてきたのも気に入らない。
だから、落とし前つけさせたくて、来ました」
少し軽妙な返しをするが、ファティマの目は射るようにイズミを捉える。
小高くなっている瓦礫の山で、イズミは両手を広げた。
イズミの体の前に、扇状に10本を越えるくらいの氷の剣が現れたのだった。




