お仕立て セレモニードレス その6
白衣を着た金髪のメガネお兄さんに連れられて病室に向かうと、部屋ではお母さんと赤ちゃんが休んでいた。
赤ちゃんは何やら腕に付けられてる。ついたものの先には、天井から吊り下げられたガラスだろうか?そのガラスから伸びた管が赤ちゃんの腕に付いていた。
白衣のお兄さんがお母さんが起きないように、顔を私たちに近づけて小さい声で話す。
「あかちゃんはまだ予断ならない状態です。脱水症な上に、感染も起きている。あとは生命力に掛けなくてはいけない状態です」
あの小さいけど、元気に泣いていた赤ちゃんが死んでしまうかもしれないと言うこと?思わず、私はお兄さんを見た。
お兄さんと視線が合うと、にっこりと微笑まれた。
「僕は医者です。最善を尽くしますから。赤ちゃん、信じてあげてください。」
肩の辺りに力が入ってしまっていたのが、思わずすとんと落ちた。…ちょっと不思議な人だ。
若いのに、声のトーンが落ち着いてるからかもしれない、思わず安心して任せたくなってしまう。
「お母さんの方はどうしたの?あんなに気が張った様子だったけど」
サラがお母さんを見やって尋ねる。
「お母さんは、お疲れだったので安定剤を出して少しやすんでもらってます。
お母さんは、きちんと体を休めないと母乳の分泌が悪くなるんです。赤ちゃんが峠を越したとき、お母さんの母乳が必要となるので、今は説得して休んでもらいました。その間僕が代わりに赤ちゃんにミルクあげてますよ。」
お兄さんはゆっくり赤ちゃんに近づくと、優しく小さな頭を撫でた。赤ちゃんが少し口を開け、あくびをするような仕草をする。
私の腕をサラが小突く。
「さっき刺繍してもらったバスタオル、赤ちゃんに掛けて。赤ちゃん元気にならないと、皆夢見悪いわ」
サラ口悪いけど、赤ちゃんに元気になってほしいのは私も一緒の気持ち。
お兄さんに私もゆっくり近づき、手にしたバスタオルをぎこちなく掛けようとしていたら
「夜になって冷えてきたから、足元を重ねて暖めてあげた方がいいかも」
耳元で声がしてどぎまぎした。お兄さんが手を伸ばし、一緒にバスタオルを掛けてくれる。
「あ、ありがとうございます…」
お礼を言うと、お兄さんはにっこり笑いかける。
「名乗り遅れましたね、僕は医者のマリウスです。
お二人は僕が見ますので、ご安心ください」




