お仕立て セレモニードレス その5
まだ吐き気が残っている私をサラは無理やり引き連れて、商家に向かった。
食料の他に出来合いのタオル二枚と刺繍糸を購入し、針を借りると、サラは私に、ハンカチのこの柄刺繍しといてね!と念押しして、行ってしまった。
商家にポツンと残される私一人…
大きい商家みたいで、縫い物するのにどうぞ、とお部屋を貸してくれたものの
「お客様、吐き気を抑える効果のあります、ペパーミントとジンジャーをブレンドしたハーブティをご用意致しました」
お、おちつかないんですけどぉぉぉ!
メイドさん付きで刺繍とか、やりにくい!
「アリガトウゴザイマス…」
ひいぃ、ティーセットも高そうなお品!なんですか、白磁に絵が描かれていますよ!
手が震える…
「刺繍の道具はこちらにご用意しておきます。
それからアフタヌーンティーのご用意も致しました。
下段にハムサンドと卵のサンドイッチ、中段にスコーンになります。アプリコット、ベリー、野いちごのジャムをご用意してあります。
上段にはヌガー、マカロン、ケーキをご用意致しました」
ガラガラガラとカートで三段トレーがやって参りましたが…えーっと、私は刺繍せねばならないのでは…?
閑話休題
なんとか邪念を追い払い、大判のタオルの四角に刺繍しました。
ちゃんと二枚用意したよ。
あと私には狭いお針子部屋くらいが落ち着きます…
刺繍を終えたらちょうどサラが戻ってきた。
アフタヌーンティーのマカロンを立ったまま口に放り込み、私の飲みかけのハーブティをごくごく飲み干すと、
「じゃ、リゼタオル持って病院いくよ。
場所のご提供感謝するわ。ゼーマンのおじさまにもよろしく伝えてくれる?」
「かしこまりました」
お部屋にいらした3人のメイドさんが扉の脇にずらっと並ぶ。
「「いってらっしゃいませ」」
「お邪魔したわね」
スタスタ行ってしまうサラ。私は慌ててそのあとを追いかけた。
「リゼ、村に帰る前に赤ちゃんの様子見にいくよ。
マリウスって先生の所にいるんだけど、まあ、ちょっとボケッとしてるけど腕は確かだから。」
「うん。帰る前に様子見られると良いなって思ってたよ。
馬車にいるとき起きてこなかったもんね…こないだは、もう少し元気そうに手足バタバタさせてたのに、ぐったりしてるみたいだったし…」
商家の屋敷を出ると、もう夕方だった。空はまだ明るいけど、夕日で赤くなっている。
思ったよりも肩の辺りが冷える。
あ、そういえばサラのハンカチ肩に巻いたままだったっけ。
「病院、歩いてすぐだから。ちょっと道入り組んでるから、付いてきてよ」
サラに声をかけられ、細い路地を行く。いくつか曲がり、やがて一軒の家についた。隣にある建物には屋根に十字架がある。中からは小さい子の声がする。
「教会の孤児院の隣の病院なのよ。だから小さい赤ちゃんも見慣れているし、教会にも顔が利くから、お母さんの泊まるところありそうで紹介したの。」
サラは扉に掛けられたベルをならすと
「はーい」
がちゃっと扉が空く。
出てきたのはメガネをかけた金髪に近いボサボサ頭の男性。ん?同じくらいの歳かな?
「すみません、ドレクスラー家の者です。日中に患者をお願いしてまして、会えますか?」
「ああ、ドレクスラー家に仕える男性が連れてきた患者さんだね。
今二人部屋の病室に、赤ちゃんとお母さん2人とも休んでもらっています。
どうぞ入って」




