剣の家と柱時計
市庁舎の対岸に建つ尖り屋根に細長い塔のような建物、通称剣の家と呼ばれた家がミュルナーの公邸だった。隣接する敷地内にも建物があり、それもミュルナーの家だ。
アルノルトとラッペルスヴィル夫妻はミュルナーの公邸を訪れた。この時間は公邸のドアは開いていて、幾人かの人が広間に多めに置いてある長椅子で待っていた。受付テーブルで名前を書いて、順番に奥の応接間へ案内されるようになっていた。
「これは意外に時間がかかりそうだな」
アルノルトは受付の台帳に名前を書きながら言った。
「そうだね。まあ座って待とう」
ルーディックはそう言って近くの長椅子をエリーザベトへ勧めるが、エリーザベトは広間のあちこちを見ながら歩いていた。柱の多い広間や、背の高い柱時計、それぞれに見覚えがある。
「この柱時計! この家は小さい頃、父と良く来た覚えがありますわ。その頃はどういう家なのかは全く判らないままでしたけれども。懐かしいわ」
三人で並んで長椅子に座り、アルノルトは言った。
「ミュルナーさんは、先代、いや先々代を相棒だったと懐かしそうに言ってました。帝国執政官と守護権者だと、きっといい協力関係だったんでしょうね」
「私ももっと早くこの家を訪れるべきでした。ここに再び来れたのも、アルノルトさんのお陰ですね。本当にありがとう。ルーディック、あなたからもお礼を言って」
「いいんですお礼なんて。ミュルナーさんに頼まれたんですから。リンデンホーフの丘で偶然会って、訴える事を教えてくれたのがミュルナーさんなんです。しかも謝礼はいらないと言うんです。これで少しはお礼が出来ました」
「そうでしたの。これも巡り合わせね」
「リンデンホーフの丘では不思議な偶然が良く起こります。今日も偶然会えたし」
「まあ。とても良い場所ですのね。幸運の面でも」
「空き時間は通ってたくらい、お気に入りの場所です」
そうしていると、奥の扉から青年が出て来た。
「こんにちは!」
アルノルトが立ち上がって挨拶をすると、青年は言った。
「ああ、あなたは前に来た子」
「はい。アルノルトです。ミュルナーさんはお忙しいですか? 紹介したい人がいるんです」
「そちら様は?」
「ラッペルスヴィル家のご夫妻です」
その名を聞いて、部屋で待っていた人が皆、ギョッとして振り向いた。
「お待たせしてしまい、失礼しました。父さん。特別重要なお客様」
青年が奥へ帰ってそう言えば、奥の部屋からミュルナーが出て来た。
「おお、アルノルトか。示談で済んで良かったな。おや。あなたは!」
「ミュルナーさん。今日はお客を連れて来たよ。ラッペルスヴィルの……」
「判っている。よく連れて来てくれた。お二人ともよく来てくれなさった。こちらのお部屋へ」
待っている客を頭越しに、二人は奥の扉から中庭を通り抜け、邸宅の方の応接間へ案内された。アルノルトは遠慮して元の広間にいたが、しばらくしてルーディックに呼ばれ、アルノルトも入室を許された。
「あのエリーゼお嬢さんがこんなに大きくなって。立派になったものだ」
「ミュルナーさんもあの頃はまだ白髪も無く、お若かったですね。お懐かしいです」
ミュルナーとエリーザベトは既に昔談義に花が咲いていた。
「儂は相も変わらずここでこの仕事をしておる。毎日トラブルを持ち込まれる相談所みたいなものだ。まあコンスタンツ司教のかかりつけになって様変わりした部分もあるが」
「コンスタンツ司教様ですか! コンスタンツ司教様は父が亡くなって以来、私共の相談相手でもあるのです」
「そうだったか。どおりでよくお話に出て来るわけだ。それで時々様子は聞いていたよ。私に直接話があると助けに動けたのだがのう。お一人だけ残されて、ここまでお辛かった事でしょう。このような婿殿を迎え、よくここまで纏め上げられた事ですな」
言われたエリーザベトは少し涙が滲んで来た。
「ええ。一人では弱音ばかりで、途方に暮れていました。でもウーリやシュウィーツ、そしてホーンベルク家の皆様にお世話になって、こうしてルーディックを迎える事が出来ました」
「良い顔ぶれがいるようですな」
「ええ。支えるべき私が支えられて、ようやくここまで来れたのです」
そう言ってエリーザベトはハンカチで目頭を押さえた。
「そうでしたか。それは大変でしたなあ。婿殿のルーディック卿も、これからはよく支えて下さるでしょうしのう」
ルーディックは胸を張って答えた。
「はい! 勿論支えますとも。今はまだ力不足ですが……」
「良いお返事じゃ。将来期待して良さそうですな」
「ええ。私も期待は膨らむばかりですの」
エリーザベトはお天気雨の如くに晴れやかに微笑んだ。
「ウーリと言えばこのアルノルトもそうじゃが?」
「ええ。アルノルトさんにもこのように、色々お世話になって。お父上のシュッペルさんにも大変お世話になったんですよ」
「おお、そうか。お父上も好人物であったな」
エリーザベトに涙ぐんだ目を向けられ、アルノルトは動悸が高まる思いだった。
「そんな。僕こそお世話になって……」
ルーディックは言った。
「アルノルトは身を以て騎士道を教えてくれる。良い友達です」
「騎士道? 僕は騎士ですら無いよ?」
困ったような顔をするアルノルトに、ルーディックは続けた。
「今日も脅して来た宮廷騎士を相手にして一歩も譲らなかった。それは騎士だとしてもなかなかそうは出来ない。立派な戦いだったよ」
「そうですね。立派でした。感動的ですらありましたわ」
エリーザベトも頷いて言う。
「いえ、負けられないと思っただけです。この一週間、色々な状況と戦い通しだったから。あれ? 僕は戦ってたんだね」
アルノルトがそう言うと、ミュルナーが頷いた。
「そうとも。王家と戦うなんてすごい子だと思ったものだ。それなりの危険も話しておくべきだったよ。最後は儂とリューティケルで説き伏せて示談に持って行ったが、王女の証言がなければ危ない所だった」
「色々本当にありがとう御座いました。ミュルナーさんのお陰です。マンネッセさんもですね」
「儂等は代理に過ぎんよ。君の真実に手を添えただけだ。そして君は諦める事無く進み、勝利を勝ち取った。それにアルノルトは費用を稼ぐために、ホテルで働いていただろう。その年でなかなか出来ん事だ」
「そうでしたの?」
アルノルトは畏まったように言った。
「弁償費用で無一文になって、帰れなくなっただけです」
エリーザベトは労うように言った。
「アルノルトさんも大変でしたのね。私達を頼って下さったらよかったのに」
「次からはそうさせて貰うかもしれません」
「僕も頼ってくれよ」
ルーディックがそう言うと、アルノルトは態度が一転して大きくなった。
「まあ、そのうちな」
ミュルナーは大きく笑った。
「天下のラッペルスヴィルにこんな口を聞けるのは、この子くらいじゃないか?」
「仲がよろしくて、むしろ好ましい事ですわ」
「アルノルトはもう親友ですから」
エリーザベトとルーディックも笑っていた。
窓からは小さな中庭が見えた。そこには遊んでいて騒いでいる子供の声がする。
「ルードルフ。静かに!」
「ル、ルードルフ……」
アルノルトはあまり聞きたくない名前が出て来たので面食らった。
「ああ、我が子の名前だ」
すると、入り口からさっきの青年と、男の子が入って来た。
「父さん、呼んだかい?」
「お父さん呼んだの僕だよね?」
二人が交互にそう言うと、ミュルナーは頭を抱えつつ言った。
「ああ、ついでに紹介しておこう。我が子のルードルフと、小さい方もルードルフ、二世だ」
「こんにちは。私の父や弟と同じ名前ね。エリーザベト・フォン・ラッペルスヴィルです」
エリーザベトは立ち上がって丁寧に礼を取った。
大きな兄、続いて弟が、
「ルードルフです」
「ルードルフです」
と言いつつ礼をした。
大きい方はエリーザベトより少し上だろうか。小さい方はルードルフ王子と同じ背格好だった。だが仕草はかなり子供らしい。
「ルーディックです。ルードルフさんとルードルフ?」
ルーディックとアルノルトは苦笑いをするよりない。
「どっちを見てもルードルフがいっぱい……。どうして皆同じ名前に……」
アルノルトの疑問にミュルナーが首を振った。
「いや、流行の名だ。まあ名付け親が違ってそうなった。気にするな。年も近いだろう。仲良くしてやって欲しい。あ、後にいるのがアーデルハイドだ」
そこには二人の兄弟の背中を押している女の子がいた。
「ちょっとそこどいて。アーデルハイドです。ようこそお客様。特製のお茶をどうぞ」
二人を割って現れたアーデルハイドはアルノルトより少し大きいくらいの利発そうな女の子だった。飲み物を持って一人一人のテーブルに置いて行く。
「ありがとう」
喉が渇いていたアルノルトは礼を言って、それをすぐに飲んでしまった。
この時代定番と言えるセイジの他に、何かのハーブと蜂蜜が入っていて、とても美味しい。
「おいしい」
「良かった。ごゆっくり。じゃまじゃま」
アーデルハイドはそう言って、兄弟二人を押し出しつつ、部屋を出て行った。
「子供らにはああして実地で勉強させている。ルードルフには——小さい方のな、いろんな方面の教師を呼んで来て学ばせておるところだ。ところでルーディック殿の勉強の方法はどうしておる?」
「私は城の隣にある修道院で勉強しています」
「それでは自然哲学ばかりで実務面の勉強は出来ないだろうな。こちらでは語学や学芸はもちろん、参事会の議員や大商人からも講師を呼んで教育しておる。司法関係は儂がこの事務所での実地込みでやっている。もし良ければルーディック殿もここで一緒に学ばれてみてはどうかな?」
「私もですか?」
「講師を呼ぶ金は一緒だ。どうせなら多い方がいいと思って知り合いにも声を掛けている。学友が必要だし、共に学べば将来よく協力し合えそうだ」
ルーディックはエリーザベートの顔色を伺った。エリーザベトはその目を覗き込むように言った。
「あなたの望むままに決めなさい。あなたが当主なのですから」
ルーディックは頷いた。
「是非、勉強させて欲しいと思うのですが、希望条件があります」
「何だ?」
「一緒に学びたい人が二人います。アルノルトも一緒に勉強させてあげて欲しいのです」
アルノルトは目を丸くした。
「えっ! 僕?」
「もちろん君が望むならだ。君もここで学びたいんじゃないかと思ってね?」
「ホテルにいた昨日までならそうだったけど、ウーリは通うには遠いよ?」
「泊まり込みでもウチは構わんぞ。一人二人なら屋根裏で環境は良くないが泊まれる部屋もある。一緒に学ぶかアルノルト?」
ミュルナーのその言葉に、アルノルトの心は揺れた。しかし、ウーリでの仕事を一存で抜ける事は出来なかった。
「僕は……羊の世話の仕事があるんです。でも、今回の事で勉強が必要だと思ったから、父に相談してみます。少し答えは待って欲しいです」
「いいだろう。決まったらいつでも言ってくれ。で、もう一人は?」
「ルードルフ……と、また同じ名なのですが。ラウフェンブルク家のルードルフです」
「ほう、ラウフェンブルク公の遺児か。それは望外の人物だ。それも許可しよう」
「これも本人が望めばですので、帰って聞いておきます。今、私の城に逗留しているのです」
「そうだったか。では、ルーディック卿は決まりでいいのかな?」
「はい。でも、時期は二人と合わせた方が授業がしやすいかと思いますので、一応の返答が揃うのを待ちます」
「まだ初級編の教育だから、多少遅れて参加しても追い付けるだろう。では、決まり次第、連絡をくれ。アルノルトもな」
アルノルトは大きく頷いた。
「はい。前向きに検討します」
ルーディックがアルノルトに言った。
「連絡は僕にくれ。皆揃ってからミュルナーさんに連絡をするという事で」
「これは立派に調整役をするじゃないか」
ミュルナーは驚いた目をして笑っていた。
ミュルナーの家を出たアルノルト達は、元のレストランに戻ったが、そこには既に誰もおらず、既に席も埋まっていた。三人は合流を諦めてエーテンバッハ教会へと向かうことにした。
教会の執務室で夕食をごちそうになりつつ、アルノルトはルーディックから牛の裁判の話を聞いた。
「あの犯人、判決は国外追放に決まったよ」
「それは意外に重かったね。牛じゃあ殺しても罪にならないからね。でないとこうして肉を食べられない」
「放っておくと無罪放免になるところだったよ。捕縛時に暴れて姫を危険に遭わせたんだ。だから僕が殺人未遂罪を強く言ってそうなったのさ」
「習わしも法律と同じ扱いだよ? 自治を損なわない程度にしておいてくれよ」
「まああくまで参考意見さ。でもブルグントの情勢を話したらすぐ判ってくれたよ」
「イサベラお嬢さんの身元を明かしたのか?」
「ああ。裁判だしな。情報は全て出し尽くすべきだ」
「なんてこった……これでウーリには気軽にお忍びでは来れないかもな」
「審理の時にいた人以外には秘密にして貰っている。まだ大丈夫だろう」
「父さんはもう知っていたのか……」
「そうだ。殆どブルクハルトさんが国外追放を決めたんだ。僕のダメ押しで焼き印の刑も加えてね。それでも手緩いと言われてたが」
「誰に?」
「代理執政官が傍聴していたんだ。ゲスレル卿は両目を潰せばいいと言っていた。宮廷貴族は過酷過ぎるよ」
「それは非道いな」
「他人事じゃないぞ。下手をすればアルノルトは反逆罪でそう言う刑罰になる可能性があったんだ」
そう聞いてアルノルトは冷や汗が出て来た。
「どおりで父さんの顔色が変わったわけだ……」
「王家の周辺は本当に危険な奴らだよ。あの宮廷騎士の冤罪を覆すことが出来て本当によかった」
「王女の証言と、ミュルナーさんのお陰だな。フー、危なかったー」
アルノルトは今更ながらに胸を撫で下ろした。
「あと、そうだ。国境の立て札を動かした理由については、明確な国境が判らなかったからだと少し話を濁したので、口裏を合わせておいてくれ」
「ああ、そうか。いい逃げ口上だな」
「それで全員お咎め無しだ。褒めてくれていい所だよ?」
「ルーディックのお陰なのかな? まあ兄さんは三日の追放をされた後だったけどね」
エリーザベトが驚いて言った。
「まあ! 本当に追放になっていましたの?」
「ええ。父の独断ですけどね。そのついでに僕にお金を届けてくれて、ラッペルスヴィル城にも手紙を届けられたんです」
ルーディックは頷いて言った。
「それで合点がいったよ。じゃあ、裁判へ招聘する手紙はエルハルトさんの方だったのか。サインがよく読めなかったんだ」
「ああ。ルーディックの手紙が僕宛てだったのは、そう言う事か」
「思えば筆跡も違ってたし。後でアルノルトも来てくれて、手紙を残してくれてたね」
「ああ。こっちの裁判とミュルナーさんの事を書いた」
「ウーリの裁判後だったから、とても興味を持ったんだ。このタイミングでミュルナーさんに勉強に誘って貰えたのは、もう渡りに船だったよ。ありがとうアルノルト」
「いや。僕も自分の裁判だ。気持ち的には君以上だからね」
「じゃあ、もう決まりじゃないか?」
「いや、今日の父を見たろう。石頭だし、田舎だから他の干渉を拒むような所がある。無駄な出費は一切しない主義だしね」
「僕から一筆書こうか。少しは効果があるだろう?」
「それは助かるが、効力が強すぎる。なるだけ父の事情も汲んであげたい。最終手段に取っておくよ。資金が問題なら、もうここにタンマリあるしね」
そう言ってアルノルトは腰の革袋を叩いた。
エリーザベトが感心して言った。
「父想いのいい息子さんだこと」
「そんなこと無いです。ここまで迷惑掛け通しでしたから。今日もわざわざ来てくれたし」
「そうですね。裁判が片付いた後もかなり忙しかったはずです。エンゼルベルクの修道院長と揉め事があったようですから」
「そうでしたか? それは何の事で?」
それにはルーディックが答えた。
「エンゼルベルクとも峠の国境で揉めてるようだった」
「ああ、ズレンネン峠かな。あそこはウチから見えるくらい近いからね。僕もよく放牧に行くよ。峠も時々越えるし」
「じゃあ、古くから峠を国境にして来たという、エンゼルベルクの主張にも無理があるのか」
「まああそこだけかなり高いから国境の目印にはしやすいだろうさ。でもこちらの慣習では違う。向こうの勝手で思い込んでいたらそれが国境ってのもね。まあ国境なんて全部思い込みで出来てるようなものだけど」
「全部?」
「土地は本来誰のものでも無い。皆の踏み歩むものだ。名前が書いてあるわけじゃないし、国境はここだって誰かが思い込んでいるだけだ。思い込みが変わればそれだけで変わるだろう? 事実、僕らは国境を動かした」
「確かにそうとも言える。まあ、もう牛もいないし、国境は戻して来たけど」
「戻してくれたの?」
「それをハルトマンにも言えば完了だ。明日は帰りにキーブルク城にも寄ろう。すぐ途中なんだ」
「あの旧家キーブルク? もうとっくに断絶したんじゃなかったっけ?」
「復興したのさ。キーブルク家の血を引くハルトマンは新キーブルク伯の後継ぎになったのさ。それで城は返還されていてね。ヴィンテルトゥールも本来はキーブルク領なんだけど、領地は殆どハプスブルク家に取られたままなんだ」
急に領主然とした大きな話になって、アルノルトは顔を引きつらせた。
「へ、へえ。あの子がねー」
「ゼンメルの事を知ったら残念がるだろうな」
「そうだね。最強だって惚れ込んでたものね」
「極刑の追放にしておいて良かったよ。ハルトマンもそうだけど、戦争寸前のブルグント公の怒りも避けられたし」
アルノルトは苦笑いをして言った。
「そういう方向の考えもあるのか。犯人には気の毒だけど、そっち方面では正解だったかもね」
食事を終えると、エリーザベトは言った。
「とても興味深いお話でしたわ。土地の習わしが法律に等しいだなんて、行ってみなければ判らないものです。二人はとても打ち解けて、率直な考え方が聞けて良かったですわ」
「それはこちらも良かったです」
「アルノルトさんはこの後どちらへお泊まりになるの? 良ろしければ宿泊するお部屋をご用意しますわよ?」
「このすぐ近くに、兄と泊まる場所があるんです」
「では、明日は朝この教会の前に集まって下さいね」
「はい。それはとても都合が良かったです。呼べばすぐ現れるくらい近くですので」
「そうですの?」
「いい夕食をありがとう。では、また明日。ごちそうさま」
アルノルトはそう言って部屋を辞した。そして教会を出て、その目の前の広場に停めた馬車に潜り込んだ。そして、ワインも入っていたので、そのままぐっすり眠ってしまった。
夜遅くなってエルハルトもそこへ戻って来て、一瞬目を開けたが、すぐにまた眠った。
エルハルトはホテルから貰って来た古い毛布をアルノルトに掛けてやり、その日はかなり暖かく眠る事が出来た。




