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旧作2-1  作者: 智枝 理子
Ⅱ.過去と未知の薬
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03 王国暦五九九年 ヴィエルジュ二日

 フラーダリーの出勤時間に合わせて、アレクと三人で家を出た。

 早く養成所に着いたのは良いけれど。

 午前は何もない。午後に課題を提出するだけのホームルームがあるだけだ。

 アレクは用事があると言って行ってしまった。


 部屋で時間を潰しても仕方ないから、休み中に借りていた本を返しに図書館に行く。

 カウンターに借りていた本を出したところで、見知った顔を見つける。

 カミーユとロニーだ。

 二人がテーブルで向かい合って何かやってる。

 近づいて、カミーユが何か書き込んでいる用紙を見る。

 何かの、問題?

「エル」

「エル。久しぶりだね。元気にしていた?」

 ロニーは苦手だ。

 カミーユの後ろに回る。

「どうしたんだ?」

 変わった問題。

 どこから解くんだ。

 カミーユの隣に座って、問題とペンを取る。

 いくつかの物質について、それぞれの特徴がまとめられた表がある。

 これらを好きな組み合わせで使って、薬を作るらしい。

 それぞれ相性がある。

 組み合わせると効果が無くなるものだとか、成分が増強するものだとか。

 パズルみたいだな。

 予備知識が必要な問題でもある。


 目の前でロニーが立ち上がる。

 それを見送った後、用紙を破ってメモを書く。


 ロニーと何やってるんだ?


「錬金術の勉強だよ」


 俺にも教えて。


「教えられるほど知らないよ」


 これ、どうやって解く?


「わからないのか?」


 さっぱりわからない。


 カミーユが唸る。

「俺のやり方、どっか間違ってるらしいんだ。気づいたら言ってくれ」

 前にやったことあるのかな。

 カミーユが問題を解く工程を眺める。

 あぁ、そこをとっかかりにしていくのか。

 で。それは実験用具の名前か。

 …あれ?


 カミーユが解き終わるのを待って、気づいた箇所にチェックを入れる。

 

 これ、水に溶けるのか?

 

「え?」

 

 常温で固形の物質だ。

 

「そうだ。これ、加工しないと」

 

 これとこれは触媒なしに一緒に混ぜると危険。

 ちゃんと、扱う素材表に書いてあるだろ。

 触媒に使える物質ってどれ?

 

「これだ。じゃあ、ここで混ぜて、」

 

 この器具を使うんじゃないのか。

 

「あぁ、そうだよ。良く分かったな」

 

 後、こっちも少量で激しく反応する物質だから気を付けないと。

 

 カミーユが、問題を解き直す。

 あぁ、やっぱり。

 で、そうなるのか。

 …計算も間違ってない。解けそうだ。

「エル、コーヒー飲む?」

 頷いて、ロニーからコーヒーを受け取る。

 カミーユはロニーがコーヒーを置いたのにも気づかづに、問題を解いている。

 簡単にはいかないな。

 甘い物が食べたい。

 そうだ。フラーダリーからもらったサブレ。

 ポケットに入れておいたサブレの包みを出して、テーブルに置く。

 一枚を、ロニーに差し出す。

「くれるのかい」

 頷く。

「ありがとう。エルは本当に甘い物が好きだね」

 そう言って、ロニーがサブレを食べる。

「手作り?」

 頷く。

 フラーダリーの手作り。ミエルのサブレ。

 カミーユにも渡そうと思ったけれど、作業を中断する気はなさそうだから、後にしよう。

 解答用紙は、途中で大きく取り消し線をつけられて、途中から解き直されている。

 すごい。

 これが、結論。

 なんて綺麗な回答なんだ。

 答えが解るとすっきりする。

「できた」

「うん。良くできたね」

 ようやく、カミーユが顔を上げる。

「じゃあ、今日はここまで。また今度の休みに続きをやろう。課題は、その本を読んでくること」

 ロニーがテーブルの上を片づける。

 カミーユが、すっかり綺麗に片付いたテーブルを眺めながら口を開く。

「なぁ、ヴェロニク」

「ロニーでいいよ」

「お前の問題の矛盾、わかったよ」

「うん?」

「隠れる場所もない平地なら、見晴らしが良いはずだろ?敵の兵士が自軍の倍だって気づいた時点で、引き返すか作戦を練り直す。死ににいくような戦い方なんてしない」

 何の話しだ?

「きっと、それも正解なんだろうね」

 正解?

「じゃあ、もう一つの回答をあげようか。私は言われた通り、真っ向勝負を挑む」

「はぁ?」

 待って。

「私はその状況で自分が勝利できると確信する。だって、自分が主君と仰いだ方の采配だ。負けるなんて有り得ない。それがもし、私だけで勝てない状況だと言うのなら、味方は必ず助けに来る。負け戦をするような方を主君に仰ぐつもりなんてないからさ」

 どんどん会話が進む。

 何の話か分からない。

 あぁ、声が出れば…。

 くそっ。

 ロニーが居なくなるのを待って、カミーユの口にサブレを突っ込む。

「んん?」

 少しはこっちの方を向け。

 カミーユを黙らせて、目の前の紙に文字を書く。


 何の問題?


「えーと。千人の兵士が居て、目の前には二千の敵がいる。隠れる場所もない平地での、お互いの真っ向勝負。主君からは、死ぬ気でこの戦線を守れと言われてる。自軍の兵士をどう使うか?って問題」

 なんだそれ?

 兵法か何かか?

 …でも、回答がたくさんあるみたいだったな。

 しかも、この問題は、自軍の負け戦だって確定してた。

 人数が倍だと、勝てないのか?

 同じ力がある兵隊?

 一対二だと、勝てない。

 ってことは、どうにか一対一に持ち込めば良い?

 より有利な戦況…。

 それ、どっかで見たことあるな。

 確か…。

 用紙に回答を書く。


 自軍を三つに分ける。


 それから、二千の軍を大きな丸で、千人の軍を表すのに小さな丸を十個書く。

 端の軍を前進、中央の軍は後退。

 次のターンで、大きな丸い軍は前進。

 徐々に、大きな丸い軍を囲むように、小さな軍を移動させる。

 囲めば終わり。


「え?」


 これで、相手にする人数は減る。勝てるかもしれない。


「良く思いついたな」


 同じ戦法が載ってる本を読んだことがある。

 数学の本だったと思う。


 しかも、教科書だった気がするけど。正確に覚えてないから、それを書くのはやめた。

 っていうか。

 俺が書いてる用紙って、カミーユの課題の解答用紙か。

 カミーユを見て、また文字を書く。


 錬金術、面白かった。

 また教えて。


「ロニーに聞けば良いだろ」


 あいつは苦手だ。


「アレクシス様は?」


 アレクは忙しい。

 授業に関係ない事なんて聞けない。


 だから、カミーユに教えて欲しい。

「はいはい。言うこと聞けば良いんだろ」

 カミーユも、俺の言うことがわかるらしい。

 アレクやフラーダリーみたいに。



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