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不老不死たちの過去  作者: San


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14/15

不老不死たちの過去 14

映画が始まった。


最初に見えたのは、人だった。


ものすごい数の人が歩いていた。


道が広かった。


端が見えないほど広い。


道路というより、地面そのものが人のために作られているようだった。


遠くまで続いている。


建物はほとんど見えない。


ただ、道だけがあった。


人々は歩いている。


前へ。


ひたすら前へ。


誰も急いでいるようには見えない。


けれど、誰も止まらない。


右へ行く人もいない。


左へ行く人もいない。


道の上には、見えない線が何本も引かれているようだった。


人々はその線に沿って歩いていた。


まっすぐ。


前から来る人たちは、反対方向へまっすぐ歩いてくる。


大勢の人がこちらへ向かい、


大勢の人が向こうへ進んでいく。


それでも、ぶつからない。


人の流れはきれいに分かれていた。


現在の彼女は、映画館の椅子に座って、その光景を見ていた。


ずいぶん昔の記憶だった。


何千年も前。


もっと古いかもしれない。


当時の街も、人々の服も、今とは何もかも違っている。


けれど、人が歩くということだけは変わっていなかった。


画面の中で、昔の彼女が歩いている。


同じ顔。


同じ身体。


ただ、髪は今より長く、服も古い。


そして、その歩き方が少し変だった。


まっすぐではない。


彼女だけが、斜めに歩いていた。


人の流れに対して、少しずつ横へずれていく。


右斜め前へ。


また右斜め前へ。


一歩ごとに、ほんの少しだけ。


それでも、歩く速度は周りと変わらない。


人々はまっすぐ進んでいる。


彼女だけが斜めに進んでいる。


当然、何人かと肩が近づく。


けれど、彼女はぶつからない。


前から来る人を避ける。


横から近づいてくる人を避ける。


斜めに歩きながら、自然に人の間を抜けていく。


まるで、最初からそういう道を歩いているかのようだった。


現在の彼女は、少し身を乗り出した。


「……何してるんだろう」


昔の自分は答えない。


ただ歩いている。


右斜め前へ。


ずっと。


しばらくすると、彼女の姿が人の群れの中に埋もれた。


だが、斜めに進んでいるので、少しずつ人の流れから離れていく。


十人。


百人。


もっと多くの人を横切る。


道は広い。


どれだけ進んでも端が見えない。


それでも人々は、全員同じ方向へ向かっている。


まっすぐ。


まっすぐ。


まっすぐ。


その中を、昔の彼女だけが斜めに進む。


途中で、前から歩いてきた男と目が合った。


男は一瞬だけ彼女を見る。


けれど、何も言わない。


そのまままっすぐ通り過ぎていく。


次に、子供がいた。


子供も親と一緒にまっすぐ歩いている。


彼女は少しだけ横へ避けた。


子供の横を通り過ぎる。


また歩く。


斜めに。


しばらくすると、道の景色が少し変わった。


遠くに建物が見え始めた。


大きな建物だった。


何のための建物なのかは分からない。


道の両側にも、小さな建物が増えていく。


人の数はさらに多くなった。


それでも、歩く方向は変わらない。


前へ行く人。


反対から来る人。


それだけ。


横へ行く人はいない。


立ち止まる人も、ほとんどいない。


昔の彼女だけが、斜めに進み続けていた。


途中で、彼女は一度だけ立ち止まった。


道の真ん中だった。


周りの人々は、彼女を避けるようにして歩いていく。


誰も文句を言わない。


誰も不思議そうにしない。


彼女は空を見上げた。


何かを探しているようにも見えた。


けれど、すぐに歩き出す。


今度は少しだけ左へ。


そしてまた前へ。


斜めの線を描くように進んでいく。


映画を見ている彼女は、その歩き方を見ながら考えた。


昔の自分は、どこへ行こうとしていたのだろう。


目的地があるのなら、なぜまっすぐ行かなかったのか。


近道をしたかったのか。


誰かを探していたのか。


あるいは、ただそう歩きたかっただけなのか。


記憶の中には、その答えが残っていなかった。


映画はさらに進んだ。


夕方になっていた。


長い道に、夕日が差している。


人の流れはまだ続いている。


前へ行く人。


反対へ行く人。


その中で、昔の彼女もまだ歩いている。


斜めに。


朝からずっと。


日が沈んでも、歩いている。


夜になった。


道には明かりが灯った。


人々は相変わらず歩いている。


彼女も歩いている。


斜めに。


やがて、遠くに小さな横道が見えた。


彼女はそこへ向かっているようだった。


だが、横道の前まで来ても、すぐには入らなかった。


少し立ち止まる。


後ろを見る。


そこには、長い道が続いている。


無数の人が歩いている。


誰も彼女を気にしていない。


彼女はしばらくそこに立っていた。


それから、横道へ入った。


映画はそこで終わった。


暗いスクリーンを見ながら、彼女はしばらく動かなかった。


結局、なぜ斜めに歩いていたのか。


何を目指していたのか。


横道の先に何があったのか。


何も思い出せない。


ただ、最後に横道へ入る前、昔の自分が一度だけ振り返ったことだけは覚えていた。


それが何を意味していたのかも、分からない。


映画館を出る。


外では、人々が歩いていた。


駅へ向かう人。


家へ帰る人。


店へ入る人。


みんな、それぞれの方向へ歩いている。


彼女は少しだけ立ち止まった。


そして、ほんの少しだけ斜めに歩いてみた。


数歩だけ。


すぐに元の方向へ戻った。


何千年も前の自分が、どうしてあんな歩き方をしていたのか。


今の彼女には分からなかった。


けれど、その歩き方だけは、妙に覚えていた。

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