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梅雨のせい

朝のこと


起きたら直ぐにコーヒーを飲みたいわ。

作り置きとか既製品で無くて、淹れたてのものを。

でも、それをするには一人暮らしでは無理ね。

「ねえ、今夜、泊っていい?」

あまりの空気に口をついて出た台詞。


すこし前に四季がしてくれたのと同じだ。


さっきの台詞を反芻する。「ねえ、四季____そんなに良かった?」

わたし、どうしてしまったの。

彼女と一緒に居ると調子が狂ってしまう。


熱のこもった1Kの居室、「ちょっと暑いね。」


「きっと、梅雨のせい。」


きっと、ね。


---------------------------------------


pipipi……pipipi……


パチッと目が覚める。目覚ましの音。

私のものではないアラーム、普段と違う布団、隣で寝息を立てるその体温。


寝転がったまま時計に目をやる。針が示すは5:30。

四季は早起きだなあ……


感心こそすれ、肝心の本人が起きてこない。これでは仕方ない。

壁に向かって寝息を立てる彼女。背後に正座して思案すること30秒。


背中をつついてみる。「うーん」とか「ふにゃー」とか、寝ぼけた返事。

かわいい。


しばらくの間、寝顔やら何やら堪能して、はたと思いつく。

彼女は寝ているわけで。


背中をかがめて彼女の顔に近づいてゆく。

少しの汗が混じったシャンプーの匂い。唯一無二の、それは彼女の……

ぞくぞくして、どうにかなりそう。


寝ぐせのついた髪の毛を静かに撫でていると寝息が静かになってきた、更に近づく。

口を耳元に寄せて一瞬ためらう。でもこのまま引き下がるのも惜しくて寝顔を眺めていた。

熱いものを覚える。


ひとこと囁いた。「……だよ、四季。」


ぴくり、かすかに動いた表情。


なんだ、起きてたの____


「おはよ。四季。」

「おはよ……」

やけに顔の赤い彼女がちらちらとこちらを窺ってくる。「……ね、何か言った?」


「ううん、何も。」とぼけてみせる。あまりにたまらない反応、追撃。

「四季、顔赤いよ。」へんな夢でも見ちゃったの?

「……」だまりこくる彼女。


えっちなのとか。


「へ!?」ただでさえ赤い顔が耳元まで染まりあがるのが分かった。


え?まじで?


図星?

いや、そこまでは私も考えていなかった。

からかっただけ……


布団の上、向かい合うふたり。黙ったまま。


彼女の手がこちらに伸びる。

私の膝の上で重なる手。


「うん、」見たの____


スヌーズが切れたアラームが鳴りだすまで、動けなかった。

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