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23/26

旅に出よう。水面の揺らぎのようでいて。

昨晩話し合い今日の旅程を決定した。

ひとまず四国入りを目指そう。そういうことになる。


朝食バイキングをつまみながらルートの確認。

23号線に復帰後、25号線に分岐したのち名阪国道経由で奈良入り。そのまま第二阪奈より阪神高速にて大阪市街を突っ切り明石より明石海峡大橋にて徳島入り。


基本方針は下道だけど、都市部は高速で時間短縮。


コーヒーを流し込んで、いざ出発。


朝の苛烈な交通量がもたらす渋滞にドはまりしながらも、車列がゆったりと余裕が出てきた辺りで25号線へ。ここからはひたすら西進することになる。


交通量がめっきり減少し快走路となったバイパスを突き進む。秋風を受けながら、彼女の鼻歌も調子がよろしい。


流石は名阪国道に繋がるバイパス道路、大型車の通行が多いこともあり舗装はめちゃめちゃで、時折ガタガタ激しく揺れながらの旅路。

舗装状況はともかくとして、他の交通にあまり気を遣わずに走ることのできる道路を無心で進んでいると、どうしても余計なことが頭をよぎるもので。


自分の未来、彼女の未来、私たちの未来。未来になったとき「私たち」は「私たち」で居られるのだろうか。中身が空白になって、右クリックでdeleteされやしないだろうか。

そのトリガーを引いてしまうことがあるとすれば、それはきっと私であるように思う。

引かない努力、尽力、ここに居たいという想いがいくらあったとて、彼女のトリガーを引いてしまう可能性を否定できない。よもや彼女が私のそれを引いてしまう可能性は無かろうが、互いにその引き金を握り合っているのは事実なのだ。


人間関係をそこまで深刻にとらえるのは考えすぎとも思いつつ、2年以上も恋人関係として続いてしまうとそれが失われることへの恐怖は日増しに強まり、漠然とした将来への不安として顔をのぞかせるもので。それに、何が引き金となるのか未だに不明瞭で、永遠に終わらない黒ひげ危機一髪をやっているような気分。ロシアンルーレットの方が6発で終わりだからむしろ楽だったろう。


感情のジェットコースター。

昨晩はあんなに幸せだったのに、思考の殻の中で泣きだしている。


酷い話。


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3日目、13:00


休憩をはさみつつ名阪国道を駆け抜ける。


オメガカーブを滑り降り奈良市街へ。

奈良といいつつも天理と呼ぶ方が正しいのかもしれない。天理インターと書いてあるし。

これは渋谷のことを東京と呼ぶな、という類の話なのだろうか。

広域の地名としては東京も間違いではないが、渋谷に居る状態を「東京に居る」と示すのはおかしい、みたいな。間違ってはいないけど、違和感?


さてさて、高速自体はこのさきも続くがここでICを降りる。

乗り継ぎ先の高速へは下道で行く必要があるのと、お目当ての昼食があるのだ。


ICを降りてすぐ。軽トラックの突き刺さった謎のラーメン屋に車を止めた。


「ここであってる?」

「いえす!!!前から来たかったんだ~!!!」


食事に関しては彼女任せ。そういうわけで彼女がかねてより食べたかった(らしい)、天理スタミナラーメンが昼食である。


ネット記事で写真は見ていたけれど、その時点で美味いことが画面越しに伝わってくるその丼は、シャキシャキとした炒め野菜とピリ辛スープの調和が最高のハーモニー。

疑いようも無くスタミナが付くラーメンである。


昨日の岐阜タンメンといい今日の天理スタミナラーメンといい、西に行くにつれておいしい変化球ラーメンが充実してくるのは何故だ。もっと西に行けばとんでもないのが食えるのではないか???


普段はスープを残すけれど、今日は飲み切ってしまった。


「うまい、うますぎる……」

「十万石まんじゅう?」


流石のツッコミ、伊達に埼玉県民やってないね。


「言うほど埼玉県民て十万石まんじゅう食わないってマジ?」

「じゃああなた東京都民だけど、どじょう鍋食べるの?」


立ち位置そこなんだ。どぜう鍋てあんた……

「食べたことないが、食べたくはあるな?」


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3日目、13:30


再び出発。


奈良と言えば神社仏閣やら歴史的建造物の宝庫というイメージ。

家を建てるために土地を掘り返すのがある種のガチャなんて言ったり言わなかったりして。


とはいえバイパスを走っている分にはとりたてて変わり映えしない地方都市の風景だから不思議。

地図を眺めれば分かることだけど、奈良は生駒山地に阻まれ孤立して見える一方、大阪中心地から数十キロほどの距離にある。東京で言えば新宿と立川の距離感。こうなってくると明らかにベッドタウンとしての側面が強いのだろう、むしろ立派な大都市である必要性が無く、己の役割に徹している雰囲気がすがすがしいまである。


さてさて、問題の生駒山地を貫きにかかるは第二阪奈。ここから一気に西へ距離を稼ぎ、明石海峡大橋まで一直線。


……驚いた。


さっきまで山間部の高速道路を走っていたつもりが、トンネル一本抜ければ大都市。

生駒山地が無ければ奈良は完全に大阪市街に飲み込まれていただろうというのが想像つく。


そのうちに、周囲を取り囲むビル群が伸びてゆく。

ここが大阪。人生初の大阪を高速から拝むことになるとは。


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3日目、15:00


大阪市街へランプを下り、下道へ。

彼女が言うには船場センタービルの地下にプリンがおいしい喫茶があるらしく。


適当なパーキングに車を放り込み、目的のビルへ。


ビルとはいうものの、高架下に作られた建物は、銀座のアレを思い出す。えっと、なんだったかな。


「銀座インズ。」

「あ、そうそう。それ。良く分かったね。」

「雰囲気似てるって言うか、構造が同じだよね。高架下のビルでフロア分けてあって。」

「どこも同じこと考えるもんなんだねえ。」

「なんとなく服屋さんが多い気がする。」

「もともと繊維問屋街だったんだってさ。だから服屋が多いんだよ。」


「意外と物知り?」

「いや、看板に書いてあった。」


そこは黙って自慢してくれてもいいのに……


目的の店は地下フロアに。


マップを見なくても一目で目的の店だとわかる。

店頭のショーケースにはたくさんのプリン。ここに違いない。


黄金の素敵な甘みを頂きながらコーヒーを啜る。

ああ、この調和……たまらん。


「こういうの食べるの、なんだか嬉しいわあ。」

「ふふん、そうね。クラシカルなプリン好きかも。」


「旅にきて、こうやってゆっくりプリン食べて。あなたとお喋りして。」

「まだまだこれが続くなんて夢のよう……」


やっぱり、こういうことはふとした瞬間に実感するもので。


甘みと、時折訪れる苦味。そのいずれも大事な要素なのだと。

たまには冷や水を掛けながら、掛けられながら。そのたび高まる体温に揺れていたい。


それはそうと、夜までには四国入りを果たしたい。

帰宅ラッシュの渋滞にはまる前に橋のたもとには到達しておきたく。


船場センタービル、平日の夕方は人通りもまばら。地上へ至る階段は薄暗く、人影ふたつ。


揺れる。


近寄る。


一瞬くっついて。


離れて。


「ふふ、今日1回目。」


また揺れて。


すこしだけ長い接触。


「これで2回目。」

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