わたしたち
「四季~昼何食べる~???」
寝起きの頭を掻きながら冷蔵庫を開く。作り置きのとんかつがあるけれど昼に食べるにはハードすぎるか。
「うにゃ~なんでもい~にゃ~」
「それが一番こまるのだけど……」
同じく寝起きの彼女が布団から出もせずに投げやりなご意見をくれる。ありがたく頂戴させていただいて。棚に蕎麦が置いてあったな。これでいいや。
大きな鍋に湯を沸かし、乾燥400gのそばを放り込む。相変わらず凄まじい彼女の食事量につられて私のそれも増加。麺類は100g/1人では足りない身体になってしまった。食費はかさむばかり。
隣のコンロにはフライパン。残り物の野菜で炒め物をする。
「あのマンションじゃこうはいかなかったな。」
2口コンロのありがたみをしみじみ感じながら火を通しているとタイマーが鳴ってゆであがり。
「ちょっと~四季~手伝って~」
布団の方からもぞもぞと音がして、寝ぐせが爆発した彼女が顔を見せる。
ダイニングテーブルに向き合って「いただきます。」
「平日の真昼間から幸せなもんだねえ。」
「モラトリアムの特権だよね。」
「あと2年でおしまいか……」
「悲しい事言わんで。」
「就活どうすっかなあ。」
「そろそろインターンの時期?」
「夏のインターンとかそろそろ申込開始じゃない?」
「早い人だともうそろ内定だってね。」
「やば、3年の春だぞ。」
昼から顔をしかめたくなる会話、この時期の大学生なら皆そうか。モラトリアムの終わりを象徴する就活の二文字。終わってほしくはないと思うのに、自ら進んで終わりをつかみ取らなければいけない矛盾と戦っている。
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私達の出会いから2年が経つ。無事に3年に進級したことでキャンパスが移動になり、あのマンションは引き払った。
そして今、私たちは新しい住まいでふたり暮らしをしている。
家賃を折半したお陰で少し広いマンションに住むことができた。
1Kの狭いキッチンも、備え付けの小さな冷蔵庫も、狭いローテーブルも、おさらば。
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大学3年にもなれば、講義の数は一気に減少。その代わり大物の専門科目が多数を占めるようになる。
「今日は講義無いの?」
「4,5限が実習だったっけ。もみじは?」
「わたし今日全休。」
「いいな~~~」
「夕飯作って待ってるから。」
「ん、ありがと。わたしもみじのごはん大好き。」
「ほほー、それはそれは。」
4,5限あるんでしょ、そろそろ支度したら?
彼女は自室があるにも拘わらずリビングで着替えることがままある。
食器を下げる前に眠気が襲ってきて、頬杖をつきうつらうつらしながらぼんやり眺めていた。
ま、信頼されてるってことなのかね。
洗い物を終え、食後のコーヒーで喉を潤していると彼女が出かける時間。
玄関から物音がして、準備が整ったことを知らせる。
「いってきまーす。」の声がする前に玄関へ。
「じゃ、行ってらっしゃい。」
「うん、行ってきます。」
「あ、四季。顔、髪の毛ついてる。」
とってあげるよ。
彼女の方に寄って行って頬の毛を優しく除ける。
その刹那、唇が触れた。短い接触。一瞬のぬくもり。
「じゃ、行ってくるね。」
ニコニコ顔の彼女が手を振り去っていく。
わたし、まだまだ幸せ。
ポケットが震える、四季から。
「ごちそーさま♡」
かわいい奴め。夕飯は四季の好きなものにしてあげよう。




