Splash
いつだったか、5月のことだ。海を見に行ったことがある。
四季とふたりで海岸に座ってアイスを食べた。
それも今となっては懐かしい記憶。特急列車は海を目指す。
私と四季は海に来ていた、今度こそ海水浴のために。
人気少なく静まり返った5月の海岸と打って変わって、人の海。
水着姿なら四季の部屋で既に見ているし、それはもうじっくり堪能させてもらったのだけれど、夏の日差しの下で陶器のように美しい肌は日光を照り返してレフ板のごとき眩しさ。
なんだろうな、これを衆目に晒したくないな。
「夏だ、海だ!」
今さらそんなこと言わんやろ……と突っ込みたくなる使い古しの台詞を、誰にでもなく空中へ放り出し波打ち際へ進んでいく彼女。足跡を追う。
日光に熱せられた砂は目玉焼きでも焼けそうな熱さを足裏に伝え、なるたけ触れないようつま先で跳ねながら進む。
波打ち際にたどりつき、目を閉じる。海水で冷やされた砂の気持ち良さよ……
「ひゃっ!!!」
肌に冷たい感覚。目を開けると悪ガキの表情で第2波のモーションに入る彼女。犯人はお前か!
「ちょっと~お姉さん~???」
やられる前にやり返す。今度は私のターン、海水をすくい上げ投げつける。
しばらくやり合って思う。こんなことを4月の私は思いもしなかったし、ましてや恋人ができるとも思っていなかった。友達すら怪しかったというのに。彼女の水しぶきが肌を濡らすたび頬が緩んでしまう。
ああ、こういうことか。
なんだか実感してきた。目の前に彼女がいる。これはまぎれもない幸せ。
「ねー、四季。」
?
「ありがとね。」
突然の言葉に困惑するのは当然か。
伝えてはみたけど、湿っぽくなるのは夏の海にそぐわない。
特大の水しぶきをくれてやる。




