Hidden
ぱらりカレンダーをめくり9月中旬に記された「後期開始!」の赤文字。果てしない休暇の歓びをかみしめた夏休み2週間目の午後。相も変わらず四季の部屋にて。
炒飯をたいらげ満足満足とお腹をさすっていると、
「ねえ、海行こうよ。」
そういえば、5月頃にそんな話をしたような。
恋人との会話、厳密に言えば恋人になる前とはいえ忘れていたのは我ながら酷いな。訴訟を起こされて負ける未来が見えるのであらかじめ慰謝料の支度をば。
でなくて問題は海に行くことそのものではなく、水着。
四季との豊かな食生活のおかげで、あのときは「痩せる」だののたまった記憶もあるが真逆の結果を見せつける体重計に苦しめられる日常を送らせていただいております本当にありがとうございます。
「水着恥ずかしいな……」
「そんなことないよ!もみじちゃんかわいいよう。」
かわいいことと恥じらいに関係性は無いと思うのだけど……
それはそれとしてありがとう。
かわいいか、そうか。わたし、かわいい。
「海行く前にさ、水着、見たいな。」
「買いに行くってこと?」いつの間にか海行きが決定したことには目をつぶる。
「ううん、それもいいけれど……」
目を逸らしたりこちらをちらっと窺ってみたり、もにょもにょと挙動不審。
「もみじの水着姿、ここで見たい……ってこと」
わたしも着るから……
わたしも着るとかそういう問題か?
いや、四季の水着を堪能できるのはとても嬉しいですね感謝感謝でも私の水着姿見て幻滅しないかな。大丈夫かな。
だけどかわいい彼女のお願いだもの。
「いーよ。見せ合いっこしよ。」
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一度部屋に水着を取りに戻って、改めて出直す道中。
あれ?部屋で着替えるの?ふたりで???
どうしよう。平静を保てる自信が無い。
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「戻ったよ。」
合鍵で勝手に上がりこむ。夏休み最初に作りに行ったこの鍵は、もう既に相当使い込んだ。
「ん、おかえり。」
その声の主は、一糸まとわぬ姿で背を向けている。
ほんとうの彼女は、うまれたままの姿の彼女は、あまりにも……
魅惑的というには単純すぎてこみあげてくるものがある。
歩を進める。
「水着なんかいらないじゃん。」
「はい?」
「このままですごくきれいだよ。かわいい。」
我慢ならず後ろから抱きしめてしまう。背を向けて隠された彼女の残り半分を目に焼き付ける。
「ばか。」
「んふ、好き。」首筋へ静かにくちづけを残す。
「さーて、私も着替えますかねえ!」
「どういう感情の動き?」
このまま行ったら戻れなくなりそうだから、とか伝えてみたらどんな反応するだろう。
でもそれはもうちょっとお預けしたい気分で。
やっぱり物足りないよ。物足りないよね。




