ハッピーエンドになりました?
橋の下での告白、あの一件から私たちの日常は変わっただろうか。変わっていないやもしれぬ。何しろ夏休みに切り替わるタイミングでのそれだったので、比較ができないのだ。
私達は毎日互いの家で過ごし、食事を摂り、買い物に出かけた。
恋人にならずとも夏休みになればそうしていただろうし、あるいはそうしていなかったかもしれない。
今になっては何も分からないことではあるが、いずれにせよ今が幸せであることに変わりはない。
ただし、幸せであれ不幸であれ一定の刺激を受け続けていれば次第に体が慣れ、避けようのないマンネリ化の渦に巻き込まれ労災認定されることことは自明。今日もご安全に。
さて、彼女にちょっかいをかけるなどしていると肩を寄せてきて、「にゃー」とかわいらしい鳴き声を聞かせてくれる。猫になったんだよな?とかいう曲あったけど、猫になったのって僕だっけ、君だっけ。どっち?
「何の話?」
私のくだらない妄想は神経の電気信号となり発話という形で彼女専用のラジオ番組を開局していた。
「猫になったのって僕と君のどっちだっけ、って話なんだけど。」
「だから何の話よ……」
受験生向けゲン担ぎコンテンツとして提供できそうな程度にはすべらない会話を一方的に堪能したところで昼飯に誘う。近くの牛丼屋が今日から限定メニューを出すのでそれをたべたいにゃー。
「食べに行くにゃ。」
素敵な回答を受領し、レッツゴーお外。
あつい、あーーづーーーいーーー
某バンドの猛暑ソングが脳内にオンエアされるのを感じながら歩を進める。
「39度だって。」
「うげえ、ほんならインフルで学校休みやん。」
道路に設置された気温計が否応なしに異常な暑さを突きつけてくる。受け入れがたい現実に意味不明なコメントを残すことで気温を下げる巧妙なテクニックを披露したが効果なし。しかたなし。
しかし体温を超える気温にもなると発汗を通り越して全身の水分が蒸発していくような錯覚を覚える。クーラントの補充をすべく自販機も前で立ち止まる。牛丼屋までたどり着けば水にありつけるが、そこまで持ちそうにない。
品定めする私の隣にくっつく熱源、「熱いね。」「暑い?……夏のせいね。」「四季のせい。」
視線を右隣に移し彼女の顔に近づいた。1秒間の接触。わずか1秒、されど1秒。
「っん~~っ!?」
まさかこんなところで、そんな感情が溢れた呻き声。
もっともっと、そんな想いを感じつつ、そっと離れる。
物足りないね。私もだけど。続きは家でね。
「熱いね。」
「誰のせいよ。」
我ながら真夏の昼間に何をやっているんだか。夏の熱気に浮かされて、私らの気温は40度を超えた。
自販機の冷却ファンが急に唸る。「さっさと買えよ。」
はい……




