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ひとり(A面)

夏がきた。

毎年のようにインフレする夏の威力に食傷気味。

文句を言っても仕方ないから楽しもうとするけれど、ここまでくると無理がある。


太陽光だけで目玉焼きを焼いてやろうか。(秋ヶ瀬もみじ)

……毎年テレビでやってるよね、それ。(柳瀬四季)

暗い天井を眺めている。


間接的に伝わること、直接伝えること、同じ様で全く違うこと。


伝わりさえすればよいのか、

人間関係にとって大切なのは、伝えようという意志ではないのか。


昨日朝あの一件があってから、より一層考え込んでしまう。


自分の内側について、彼女のこと、彼女にとっての私のこと、私にとっての彼女のこと。


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考え事をしているうちに寝てしまったらしい。

アラームをかけ忘れたせいで彼女との待ち合わせ時刻まで10分。盛大に寝坊した。


仕方ない先に行ってもらおう。そう思いスマホを取り上げると一通のメッセージ。


「おはよ、熱出ちゃった。ごめん今日休む。」


大丈夫?何か買っていこうか?

うん、大丈夫。買い置きあるから……。病気うつしちゃったらごめんね。


それだけやり取りして、時計を眺める。

今から支度して大学に行けばギリギリだけれど講義に間に合うか。


大急ぎで身支度を済ませ、コーヒーを一杯流し込んだらいざ大学へ。


いつもの通学路。梅雨明けの空気は蒸し暑く、照り付ける日差しに頭を焼かれながら歩く。

蒸すとか焼くとか、目玉焼きの作り方かて。


ひとりで進んでゆく。彼女のいない大学ははじめてだ。いままでずうっと一緒に過ごしてきた、入学してからずっと。

夏に入って遂にひとりになってしまった。

明日明後日くらいには彼女も回復して復帰できるだろうか。でも、しばらくはひとりだな。


いつもの席、隣に誰も居ない。


期末が近い教室は年度初めに比べ空席が目立つ。

単位取得の事だけ考えれば出席日数は足りているからサボる学生も出るころだ。


彼女が居なければ、私もサボっていたかもしれない。

彼女が居なければ、毎回の小テストも怪しかったに違いない。


彼女が居なければ、居なければ。


今の私は、講義をそれなりに受け、必要なときはメモを取り、小テストに備えて支度をしている。

高校まで右肩下がりの成績とモチベーションが、すこしずつ上向いていた。


彼女が居なければ。


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昼休み。ひとりの学食。

彼女といることが常だから、"ひとり"がイレギュラーなのだと思い至る。


大盛カレーを頼んだ。学食のおばさんの驚いた表情がおかしかった。


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午後、専門講義。

みっちり手を動かし頭も使い、程よくオーバーヒートしたところで講義終了。家路につく。


そうだ、今日ひとことも喋ってないや。


彼女が居るときはいつも何かしら喋っていた。くだらない話、道端のゴミひとつでさえ話のタネ。


____ああ、わたし四季が居なかったらこんな生活なんだ。


スマホが揺れる。四季からのメッセージ。


かわいらしいお願いだ。かなえてみせましょう。

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