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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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賑やかすぎる空間

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

自宅に帰り、俺はまず何よりも先に、池袋で消滅させられてしまったグリムを復活させるためのスキルを発動した。


自身の最大MPの半分を、一気に削り取られる特異な感覚が脳を揺らし、視界が少しだけクラッと熱くなる。


だがそれと引き換えに、足元に広がった漆黒の影の底から、無事に元の姿を取り戻したグリムが静かに召喚された。


「……主よ、本当にすまない。私の力不足のせいで、預かった拠点を守りきれなかった」


深く頭を下げるグリムに対し、俺は首を振って優しく言葉を返した。


「グリムの責任じゃないよ。俺のために時間を稼ごうとしてくれたお前の判断と、配下を想う考えは心から尊重する。ただ単に、今回は相手との相性が悪すぎただけさ。……俺のために戦ってくれて、本当にありがとうね」


やはりアンデッド系統と、あのクレアの聖属性の力は根本から噛み合わず、とてつもない出力の光によって一瞬で消し去られてしまったようだ。


なら、なぜ同じように闇属性の悪魔系統から派生したはずの俺は、あの聖なるオーラを受けても大丈夫だったんだ?と疑問に思ったが、俺の体内にはルミナスドラゴンの光の因子が宿っている上に、現在の種族名には『神』の文字がついている。


その格の高さのおかげだろう、という結論にひとまず落ち着いた。


このままグリムを一度池袋のダンジョン拠点へと送り届けた後、俺は「今日はもう、自宅でゆっくり休みたい」と心から願っていた。


幸いなことに、今日は紗奈から「夜ご飯を作りに新宿の家に行くね」という嬉しい連絡を事前に貰っていたのだ。


精神的に非常に疲れた1日だったからこそ、俺は紗奈の手料理を心から楽しみにしていたし、ノア子たちも彼女の来訪を大層喜んでいた。


やがて、ノア子たちがすっかりお気に入りとなった可愛らしいエプロンを身につけてソワソワと待っていると、玄関が開き、食材を抱えた紗奈が到着した。


「みんな、お待たせ! 今日の夜ご飯は、みんなが大好きなハンバーグだよ!」


「「「わーい!」」」


少女たちは、ハンバーグというニンゲンの食べ物をすでによく知っている。


以前、熊谷フーズさんとのCM撮影の際に、用意されていたレトルトハンバーグを実際に食べて以来、その美味さに全員ですっかり虜になっていたからだ。


女性陣の合計5人がキッチンに仲良く並んで調理を開始したのを見届け、俺は思い出したようにシャドウインベントリの闇から、クレアに貰ったばかりのあの純白のハンカチを取り出し、念のために自室の机の上へと置いておいた。


リビングへ戻るがてらキッチンを覗き込むと、細かく刻んだ玉ねぎとひき肉を熱心に手で混ぜ合わせている少女たちと、玉ねぎの成分が目に染みたのか、涙をボロボロと流して顔を真っ赤にしている紗奈の姿があった。


「もうっ、ノアちゃんたちズルいよ! なんで玉ねぎをあんなに刻んでるのに、1ミリも涙が出ないの?」


「……紗奈、私たちがそんな野菜の攻撃ごときで、いちいちダメージを負っていたら、やっていられないわよ」


あまりにも尤もすぎる正論である。


ちなみに神となった俺も、当然ながら玉ねぎの成分は一切効かない。


その後、肉の種を綺麗な丸型に成形し、フライパンでじっくりと焼いていく工程に移る。


ジューシーな肉の焼ける最高に香ばしい匂いがリビングまで漂ってきており、俺はゴウキと2人で、ゆっくりとソファーに腰掛けて焼き上がりを待っていた。


やがて、大きなお皿に大量に盛られた特大ハンバーグの山と、これまた山のように盛られた色鮮やかなサラダの皿を、少女たちが嬉しそうにテーブルへと運んできた。


もちろん、炊きたてのお米と温かい味噌汁も人数分用意されている。今日の味噌汁の具材は、俺の大好きななめこだ。


すべての準備が完璧に整ったので、全員がそれぞれの椅子へと着席する。


「あ、みんなにちょっと、大切な報告があってね……」


いただきますの号令をかける前に、紗奈が少し照れくさそうに指先を弄りながら話し出した。


「あのね、店長さんとも前向きにちゃんとお話しして……今月のシフトを最後に、バイトを正式に辞めることになりました! だから……その、これからはマネージャーとして、ここでよろしくお願いします!」


「「「うわぁっ!」」」


その嬉しい決定を聞いた瞬間、ノア子たち少女たちが勢いよく椅子から立ち上がり、歓声を上げて紗奈の身体へと一斉に抱きついた。俺もどさくさに紛れてその輪に参加しちゃおうかな、なんて頭の片隅で思ったけれど、俺は立派な大人なので理性を働かせて我慢した。


「本当によかった……。じゃあ、今の家からの引っ越しの準備とか、当日の荷物の運搬も、俺のシャドウインベントリを使えば一瞬で全部終わるから、いつでも遠慮なく言ってね」


「うん、ありがとう。……サク、これから私のこと、ずうっと大切にしてね?」


少し上気した顔で、はにかみながら真っ直ぐにそう告げてくる紗奈の破壊力に、俺は正直、心臓を完全に撃ち抜かれてその場に硬直した。


「おいおい大将、何をもたついてんだ。男なら男らしく、なんか気の利いたことでもバシッと言ってやれよ」


「そうよ、サク。普段は外で『神様だから』とか言って偉そうに澄ましているくせに、紗奈の一言だけで固まるなんて、本当にダサいのよ」


「「「そうです! そうです!」」」


この喧しい配下たちめ……。


「わ、分かっているよ!! ……紗奈。俺の持てる力のすべてを使って、精いっぱい、一生大切にさせてもらいます。……こ、これで文句ないだろ!?」


外野からのガヤガヤとした騒がしい野次を入れられつつも、俺はなんとか赤面しながら、男として言いたい本心を真っ直ぐに伝えることができた。


今月のシフトまでということは、彼女のアルバイトは来週いっぱいまでということだ。


もうすぐこの家で一緒に暮らせるんだ、と胸のワクワクを抑えきれないまま、いつもの食事の掛け声を始める。


「じゃあ、みんないい? せーの!」


「「「いただきま――」」」


ガチャ……。


「あら。なんだか、とっても良い匂いがするわ」


ドンッ、と空間全体を物理的に押し潰すような凄まじい質量を持った魔力の圧を放ちながら、リビングのドアが何の前触れもなく唐突に開け放たれた。


「な、……なんでお前が、ここにいるんだよ!?」


俺は驚愕のあまり椅子を蹴立てて立ち上がった。


ノア子たち少女たちは即座に臨戦態勢をとり、紗奈の身体を後ろに隠すようにして強固に囲んで守り、ゴウキが鋭い眼光を放ちながら俺の前に一歩踏み出す。


その騒然とするリビングの視線の先に佇んでいたのは、なぜか純白の翼を広げた大天使――池袋で別れたばかりのはずの、クレアの姿だった。


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