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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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師匠への報告

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

大天使クレアが光の残滓と共に姿を消した後、俺はすぐにゴウキとノア子に向けて念話を飛ばし、周囲の冒険者の救助状況や、スタンピードが起きかけていた各層の動向を確認した。


『おう、大将! 俺の方は周辺のネズミどもを綺麗に片付けたし、特に問題はねえな!』


『私は32層まで降りて確認を終わらせたわ。怪しい気配はもう何も残っていないから、問題なしよ』


「2人とも、本当にありがとう。状況が確認できて安心したよ。2人はそのまま新宿の家に戻って、ゆっくり休んでいてほしい。俺は今からすぐに師匠のところへ向かって、今回の件を報告してくるから」


2人にそう告げて念話を切ると、俺は即座にデバイスを取り出して師匠に連絡を入れた。


「もしもし、師匠。池袋の件、無事に終わりました」


『おお……! 本当に助かった。……それで、今回の相手は一体どんな厄災だったんだ?』


「色々と複雑な事情がありまして……。とりあえず、今からそちらの部屋へ直接向かいます」


それだけを伝えて通話を切ると、俺は『影移動』を使い、一瞬にして探索者協会の本部、その最上階にある会長室へと直接到着した。


「お待たせしました、師匠」


「……待ってははおらん。それより、池袋ダンジョン内のスタンピードの状況はどうなっている?」


「問題ありません。ゴウキとノア子たちが迅速に動いて問題をすべて解消してくれました。現地の安全の確認も完全に取れています」


俺の言葉を聞き、師匠は即座にデスクの電話を取り上げて豊島支所の担当部署へと連絡を繋ぎ、ダンジョン周辺に発令していた緊急封鎖の全面解除をテキパキと指示した。


「よし、これでひと段落だな。……あとは、総理へも早急に事態収拾の報告を入れねばならんか」


師匠がそう呟いたタイミングで、会長室のドアが静かに開き、秘書である春原さんが書類を手に室内へと入ってきた。


「春原、ちょうど良いところに。今、坊主が池袋ダンジョンの異変をすべて解決して戻ってきた。総理の秘書官へ連絡を回し、作戦成功の旨を伝えておいてくれ」


「かしこまりました。……サクさん、今回も迅速なご対応、本当にありがとうございます」


「いえいえ、気にしないでください。俺はただ、自分のやるべき仕事をしたまでですから」


「……その次元の仕事を、平然とやってのけられる存在は、世界中であなたたち『フロントライン』だけなのですよ。世間の人々が、あなたを神様のように崇拝する気持ちも、私には非常によく理解できます。……では、失礼いたします」


そう言って、春原さんは丁寧にお辞儀をして部屋を出て行った。


「……崇拝、ねぇ。ハハハ! まぁ、実際に『神様』という名のつく種族になっちまったんだから、当然と言えば当然か?」


「勘弁してくださいよ、師匠。からかうのはやめてください。……それよりも、さっき電話で話した厄災の件ですが……」


俺はソファに深く腰掛け、先ほど池袋の33層で大天使クレアと直接対話して得た情報のすべてを、師匠に向けて事細かに話し始めた。


世界の裏側に現れた、他の強大な厄災の存在と、それぞれの役割。


世界を滅ぼすのではなく、魔素の飽和を防ぐためにダンジョンを意図的に間引いているという事実。


そして、大天使クレアや、アメリカにいる『終わりの王』アストラ・エンドロードの目的について。


特にクレアは、自分の愛するイングランドの地を守りたいという明確な発言をしていた。


だが、英国政府はこれまでに、自国にそんな厄災が存在しているなどという事実は一切公表していない。


これは、政府とクレアが裏で繋がって関係を秘密裏に隠蔽しているか、あるいはクレア自身が政府の意図とは無関係に、元ニンゲンとしての情だけで勝手にイングランドを防衛しているかの2択だ。


クレアのあの面倒くさがりで、少し俗っぽい性格からして、おそらくは後者の可能性が極めて高いだろうと俺は推察していた。


「クレアの口から、イングランドを守りたいという発言が確かにありましたが、現在の英国政府からは公式に何か情報は出ていないんですよね?」


「あぁ、今のところ国際探索者会議の場でも、英国政府からそんな存在が国内に滞在しているなどという報告は一切上がってはいないな」


「それなら、クレアの件は俺が将来的にイギリスへ直接向かって、状況を確認するまでは他国には完全に秘密にしておいてください」


「わかった、お前がそう言うなら秘匿しよう。……だがな、坊主。お前という絶対的な存在が日本にいることで、我が国の国際的な立場は劇的に跳ね上がっているが、それと同時に海外諸国からの敵対視や脅威の視線も凄まじいことになっている。我が国だけが国際社会の槍玉にあげられるのも癪だからな。本音を言えば、英国も同じように槍玉にあがって、こちら側の味方になってほしいところだ」


「それで言えば、アメリカにいるアストラも同じですよ。あいつは世界の秩序とシステム的な均衡を守るという立場をとっていますが、現在の本拠地はアメリカです。米国政府が、圧倒的な力を持つアストラと何らかの裏協定を結んで、関係を深めている可能性も決して捨てきれません」


「……なるほどな。もしその仮説が正しいとするならば、我が国、英国、米国の3か国が、世界のパワーバランスにおいて圧倒的な優位に立っているということになるな。……その裏は取れそうか?」


「クレアに関しては、サインの手形もありますしすぐにでも接触できます。アストラに関しては……向こうがどう出るか分かりませんが、交渉の席で決裂すれば、最悪の場合は正面からぶつかる可能性だって、ゼロではありません」


「無理に危険を冒せとは言わん。だが、可能であれば、そのアメリカの個体とも対話の機会を持って接触を図ってくれると助かる」


「わかりました。……では、また何かわかり次第報告しますね」


そう言って俺は立ち上がると、そのまま自身の足元の影へと潜り込み、『影移動』で新宿の自宅へと戻っていった。

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