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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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原宿の天使たち

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

「……気をつけてください。といっても、今のままでは無理があるでしょうから、早めに購入して着替えてくださいね。それでは、お気をつけて!」


本日何度目か数えるのも馬鹿馬鹿しくなるような、丁寧かつ警戒心の滲んだ職務質問。


俺は去りゆくお巡りさんの背中を見送りながら、深いため息を吐いた。


原因は、俺の隣でケロッとした顔をしている配下のゴウキだ。

上半身は完全に裸。そこに稲妻が走るような禍々しくも神々しい紋様が、まるで刺青のように全身を駆け巡っている。


鍛え上げられたその肉体は、見るニンゲンからすれば「大柄で屈強な、あまりにも個性的すぎる変態」が街を闊歩しているようにしか見えないのだ。


そりゃあ、街の平和を守るお巡りさんだって放っておくはずがない。


「……悪いな、大将」


「いや、とりあえずこれは仕方がないよ。まずは服だ。服を買うぞ」


俺たちはまず、池袋の街でゴウキとグリム、そして俺の服を購入することにした。


俺とグリムは幸いなことに細身で、割となんでも揃えることができた。


だが、問題はゴウキだ。


長身な上に、あの丸太のような腕と分厚い胸板、筋骨隆々という言葉では足りないほどの巨躯。


既製品の店を何軒も回り、ようやく辿り着いた大きなサイズ専門の店で、ゴウキはある1枚の服に目を留めた。


白地に黒々とした筆文字で大きく『一番』と書かれた、なんとも主張の激しいTシャツだ。


「大将、これがいい。俺の心意気にぴったりだ」


ゴウキはそれをいたく気に入り、色違いのものを何枚も買い込んでいた。


各々が気に入った服を手に取り、その場で着替える。


俺もグリムも、ようやくニンゲン社会に馴染むような、それでいてどこか品のある装いへと変わったが、それでもウォークインクローゼットをパンパンに埋めるには程遠い。


配下にはいつもお洒落でいてほしいものだが、それはまた別の機会にじっくりと選ぶことにしよう。


ノア子たちにも池袋で買うか尋ねたのだが、彼女たちは「原宿で服を買いたい」と言っていたので、池袋での買い物はここで終了となった。


ここでグリムとゴウキは、一足先に新居へ帰ると言い出した。


送り届けようとしたのだが、「空を飛んで帰るから問題ない」との返事。


ゴウキが飛べるという事実には未だに驚かされるが、彼ら2人に留守番を任せ、俺と少女たちは綾香を迎えに支所へと戻った。





「「「うわぁ……っ!」」」


タクシーの窓から流れる景色を見て、少女たちが同時に感嘆の声を上げた。


俺たちは綾香が手配してくれた、ゆったりとしたバンタイプのタクシーに乗り込み、豊島区から明治通りをまっすぐ南下して原宿へと向かっていた。


支払いの際、デバイスをかざすだけで『ディーペイッ』という軽快な電子音と共に決済が完了する。


なんて便利でスマートな世の中になんだと、元ニンゲンの俺でさえ改めて感心してしまう。


タクシーを降り、原宿の街並みに一歩踏み出した瞬間、そこには池袋とはまた違う熱量と極彩色の世界が広がっていた。


「……すみません。私、こういう芸能関係の者なのですが、少しお話を……っ」


「あ、すみません。うちは個人事務所なので、間に合っています」


竹下通りを歩き始めて数分で、早くもスカウトらしきニンゲンに声をかけられた。


俺たちの姿を見て、最近ニュースやCMで話題の『時の人』……いや、時のモンスターであることに気づく者も多い。


俺たちは一応、所属は『サナサクちゃんねる』という認識なので、嘘はついていないはずだ。


中には「お兄さん、モデルに興味ありませんか?」と俺自身に声をかけてくる者もいて、悪い気はしない。


だけど、今日の主役は俺ではない。


少女たち4名は、目に入る可愛らしい店舗の数々に興味を引かれ、次々と中に入っていく。


その場で食べたいものを食べ、欲しい小物を買っていくが、店員や他のお客さんに気づかれるたびにサインを求められるので、俺はその都度、丁寧に対応を重ねた。


少女たちは、クレープを片手に持ち、満足そうな笑みを浮かべて竹下通りを闊歩している。


その先頭では、綾香が「すみません、立ち止まらないでください。通行の妨げになります」と、まるで本職の護衛のようにアナウンスを繰り返していた。


本来の業務ではないはずの苦労を押し付けてしまい、申し訳なさが募る。


全員で魔力を1%ほど解放すれば、一瞬で道は開くだろう。


だけど、それはニンゲンたちに恐怖を植え付けることになる。


俺たちが望むのは共存であり、威圧ではない。


結果として、俺たちは「すみません」を繰り返しながら、人混みを縫うように進むしかなかった。


やがて、少女たちはある商業ビルの前で足を止めた。


「サク、あそこ……。あの中に入ってみたいわ」


ノア子がそう望むのであれば、断る理由などない。


そのビルの中には様々なジャンルのアパレルショップが入っており、俺たちはエスカレーターを乗り継ぎながら、ゆっくりと建物内を見て回った。


「……ノアさんたちは、こういう系統が似合うんじゃないかな?」


綾香がふと足を止め、ある店舗を指差した。


『Marionette Garden』。


そこは、繊細なレースやフリル、重厚な色使いが特徴的な、ロリィタ系とゴシックロリィタ系の服が並ぶショップだった。


確かに、ノア子たちが今纏っている装備は、修道服とドレスが融合したような厳かな印象を持つ。


方向性としては、非常に近いものがあるのかもしれない。


店舗に入ると、店員さんが流石のプロ意識で対応してくれた。


俺たちの正体に過剰に反応することなく、あくまで1人のお客として真摯に接してくれる姿に感心しつつ、俺は「あれがいい」「これが可愛い」と瞳を輝かせて選んでいる少女たちを後ろから見守った。


「よろしければ、ご試着されますか?」


店員さんの提案に、俺は「せっかくだから、着てみたら?」と声をかけた。


少女たちは顔を見合わせ、試着室へと向かった。


俺と綾香が店内で待っていると、試着室の奥のほうがなにやらざわざわと騒がしくなった。


すると、店舗の裏側から1人の女性が、緊張した面持ちでこちらへ近づいてきた。


「……お買い物中に、突然失礼いたします。こちらのブランドの代表を務めております、桐原と申します」


差し出された名刺を受け取る。


代表自らがわざわざ出向いてくるとは。


「サクさんとお見受けいたしました。……実は、今ご試着されているノアさんたちの姿を拝見し、どうしてもお声をかけさせていただきたくて。……不躾ながら、彼女たちを我がブランドの広告モデルとして起用させていただけないでしょうか?」


話を聞けば、試着室で着替えた彼女たちの姿が、ブランドのコンセプトを体現するあまりにも完璧な存在だったということらしい。


俺としては異論はないが、ノア子たちがなんと言うか……。


そう考えていると、試着室のカーテンが静かに開いた。


「……サク、どう? 変じゃないかしら」


「サク様、見てください。どうでしょうか……?」


そこから現れた少女たちは、まさに「天使」そのものだった。


ノア子は黒と深紅を基調とした重厚な服装だった。


その透き通るような白い肌と、ドレスの対比が、見る者の目を奪う。


三少女たちも、それぞれの個性に合わせた繊細なレースのドレスに身を包んでいた。


ヴァンパイアという、闇を司る種族のはずなのだけど、そんなことは微塵も感じさせない。


そこにいるのは、ただただ美しい、至高の芸術品のような少女たちだった。


「……可愛い……っ!」


隣にいた綾香が、感極まったように声を漏らし、スマホのカメラを構えていた。


その気持ちは痛いほどよく分かる。


この姿を記録に残さないのは、世界の損失と言っても過言ではないだろう。


「……やりましょう。桐原さん、是非やらせてください。俺が責任を持って保証します」


俺は桐原さんに向き直り、力強く答えた。そして、少女たちに問いかける。


「ノア子、みんな。ここの服は気に入ったかな?」


「ええ、凄く素敵だわ」


「とっても素敵です、サク様」


彼女たちの満足そうな表情を見て、俺は確信した。


「ここのブランドの代表である桐原さんが、君たちをモデルにしたいんだって。……モデルというのはね、ここの服を君たちが着て、たくさんのニンゲンに見てもらう仕事のことだよ。そうすれば、それを見たニンゲンたちが『自分もあんな風になりたい』と思って、この服を買いに来てくれるんだ」


「……ふーん、そう。私たちの姿を見て、ニンゲンが喜ぶのね」


ノア子は少しだけ考え込むような仕草を見せた後、静かに頷いた。


「……わかったわ。やるわ」


「あ、あ、ありがとうございます……っ! 最高のビジュアルをお約束いたします!」


桐原さんは、感激のあまり何度も頭を下げていた。


とりあえず、後日改めて詳細を詰めるということで連絡先を交換し、俺たちは大量のショップバッグを手に店を後にした。


少女たちの私服も買えたし、図らずも新しい仕事まで舞い込んだ。


これ以上ないほど充実した原宿散策になった。


「満足した?」


綾香が優しく少女たちに問いかける。


「ええ。……原宿、また来たいわ」


ノア子が、ほんの少しだけ口角を上げて微笑んだ。


「……なら、私がまた連れてきてあげる。仕事終わりでも、休日でも、いつでも言ってね」


「そんなこと言って……綾香、仕事が大変になっちゃうだろ」


俺は苦笑いしながらも、満足そうに笑い合う彼女たちの姿を見て、感謝の気持ちでいっぱいになった。


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よろしくお願いいたします。

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